もう7月……私が投稿し始めて9ヶ月くらいになるんでしょうか。早いものですねえ……
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視点:神の視点
東二局 親:宮永照 ドラ{西}
小瀬川白望 29000
宮永照 26800
弘世菫 24500
戒能良子 19700
(出でよ、
戒能良子は何かを呟いて、集中力を高める。イタコであると思われている彼女が霊ではなく神様を降ろしていることには若干の違和感を覚えるが、そもそも戒能良子はイタコではなく、彼女の親戚が鹿児島にいる滝見春であると考えれば、神様を降ろしてくるのもなんらおかしい事ではないのだが。
そんな戒能良子は神の光、もしくは神の火と呼ばれているウリエルを召喚する。閃光に瞬いて出現したそのウリエルは、戒能良子が掴んだ手牌に淡く光を放たせた。
(実にレッドですね……)
戒能良子:手牌
{一一二五七七九九⑥9中中中}
ウリエルの二つ名の通りその名に相応しい配牌を掴んでくる。大量の萬子と暗刻の{中}と、かなりいい配牌ではあるが、戒能良子はまだまだ活かしきれていないと感じていた。本来ならウリエルは大天使の一人であり、相当位の高い天使である。その力を借りたのにも関わらずまだこの配牌であるという事はまだ完全に力を制御できていないということの表れだろう。
(……戒能さん、何か使ったね)
そしてそんな戒能良子を見て、小瀬川白望は直ぐに何かを仕掛けてきたと察知してすぐさま行動を開始する。今何かを起こした戒能良子と、『連続和了』を継続させている宮永照の両方を潰すには、今自分の目の前に座っている弘世菫……彼女に協力してもらう事を優先して、小瀬川白望は弘世菫に鳴ける牌を置く。
小瀬川白望
打{5}
「ポン」
弘世菫:手牌
{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏} {5横55}
打{③}
これで一副露目。まだまだ一副露ではあるが、この序盤から鳴くことができたのは弘世菫にとっても、小瀬川白望にとっても都合が良かった。弘世菫は早く手を進める事が出来るし、小瀬川白望は弘世菫がもう後戻りできなくなり、突っ走るしかなくなったという点で都合が良かった。
(……まさか私に回さない気?)
しかしそれを見ていて面白くないのが宮永照である。現に今も弘世菫の鳴きによってツモ番を飛ばされてしまったし、いくらスピードが速いとしてもツモれなければ話にならないのは同じだ。しかも小瀬川白望が鳴かせているとあって、ただ単純に鳴かせて差し込もうとしているとは思えずにいた。もしかしたら、三回連続で鳴かせて宮永照に一度もツモ番を譲る事なく、一回もチャンスを与えことなくこの局を終わらせると考えているのかもしれないし、弘世菫を和了らせるのではなく、小瀬川白望が和了ってくるのかもしれない。そういった可能性が考えることができる以上、警戒は怠れなかった。
(うーん……ウリエルのデビュー戦はここまで、ですか……)
戒能良子は山から牌を一つツモって、それが{中}である事を確認した彼女は{中}を河へと置くと、そういった事を心の中で呟いた。あの鳴きはどう考えても小瀬川白望が意図して鳴かせたものである。小瀬川白望の狙いは自分と宮永照を和了らせない事であるので、少なくとも先手を取られた以上間に合わないであろう。後手になればなるほど不利になっていくのは大半がそうなのであるが、小瀬川白望を相手にしての後手は、つまり死を意味する事である。
そうして小瀬川白望のツモ番となると、小瀬川白望はニヤッと笑ってツモ牌を手牌に取り込むと、牌を四枚ほど前へ倒した。
「カン……」
小瀬川白望:手牌
{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏} {裏西西裏}
新ドラ表示牌
{7}
(なっ……!?)
(ドラ、フォー……!)
小瀬川白望の暗槓宣言に対して、宮永照と戒能良子は驚愕する。ドラ4。その言葉が為す意味の大きさは果てしないものである。満貫確定となった小瀬川白望に対して一層宮永照と戒能良子は驚きと警戒心を抱くのだが、小瀬川白望の対面に座る弘世菫だけは反応が違っていた。
(……ドラ、3……)
弘世菫:手牌
{一四五六八⑥⑦888} {5横55}
そう、小瀬川白望の暗槓によって弘世菫の{8}にドラが乗ったのだ。これでせいぜい断么九のみと思われていた凡手が、いっきに断么九ドラ3に成長したのである。そうして宮永照が完全に弘世菫の事など忘れているようで、小瀬川白望のドラ4を見ながらツモ番を終える。そうして弘世菫は次のツモで聴牌する事になる。
弘世菫:手牌
{一四五六八⑥⑦888} {5横55}
ツモ{赤⑤}
(……悪いな、照。流石にお前に暴れられると此方も困るんだ)
そう言って弘世菫は今度こそターゲットを射抜くべく弓を構える。直前の赤ドラで断么九ドラ4の満貫手となった矢で、宮永照の事を狙っていた。
そんな事など気づいているわけもない宮永照は、再び自身のツモ番となっても未だに小瀬川白望の事を警戒していた。実はこの時小瀬川白望は聴牌などしておらず、ドラ4は単なる脅しに過ぎなかった。もっとも、宮永照と戒能良子からしてみれば過去に敗れた時の記憶が蘇るトラウマのような脅しであったが。
宮永照
打{八}
そうして宮永照が河へ置いたと同時に、弘世菫は矢を放った。矢は一直線に宮永照の胸板へと向かっていき、あっさりと貫いていった。今まで弘世菫は、宮永照から直撃は何回かとった事があったのだが、今回のように完璧な形で撃ち抜く事ができたのは初めてであった。
「ロン……満貫だ」
弘世菫:和了形
{四五六八赤⑤⑥⑦888} {5横55}
(……ッ!?)
(ワオ……あのドラ4も囮でしたか)
宮永照と戒能良子は、弘世菫の抱える槓ドラを見てやっと小瀬川白望がやっていた事を理解した。あの時のドラ4を見せたのも、注意を引きつけると同時に弘世菫に槓ドラを与えるという二つの意味があったのだ。
(さあ……そろそろ本気で行こうか)
誘導と槓ドラ乗せも、どちらも上手くいった小瀬川白望はそろそろギアを上げようとする。今までの時点でも既にいっぱいいっぱいであった三人であったが、ここからが小瀬川白望の真骨頂、虐殺の始まりであった。
次回に続きます。