宮守の神域   作:銀一色

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長野編です。
ようやく今週が終わった……
キャプテンのキャラが迷走している感が……


第254話 長野編 ⑬ 救い

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視点:神の視点

 

(はあ……疲れた。身体がすごくダルい……)

 

 小瀬川白望と福路美穂子は入浴を終えると、二人は着替える事とした。もちろん福路美穂子は着替えを持ってきていないため、小瀬川白望が持ってきた余った服を着る事となった。サイズは福路美穂子にとっては少し大きいもので、ほんの少しぶかぶかであったのにも関わらず福路美穂子は少し嬉しそうな表情をしていた。そんな福路美穂子を見ながら、小瀬川白望はベッドに倒れるようにして横たわった。

 そしてその福路美穂子はというと、自分が着ている小瀬川白望の服を見ながら、堪能しているような事をしていた。何故福路美穂子がこれほどまでに興奮しているのかというと、小瀬川白望から貸してもらった服が意外と可愛い系のものであったからである。無論、無地に比べればなのであるのだが、福路美穂子の考えていた小瀬川白望のパジャマはその無地系のものだと思っていたので、チェック柄の服を渡された時は良い意味で期待を裏切られたわけであったのだ。

 

(ふふふ。白望さんの服、意外に可愛いのね)

 

 心の中で小瀬川白望の新たなギャップを発見して、気分が良くなる福路美穂子ではあるが、そんな福路美穂子を小瀬川白望は見ていたのか、それとも本当に疲れただけなのかは分からないが「……もう寝るね」と言ってプイと福路美穂子に背を向けてそこから動かなくなった。福路美穂子は少しほど悲しそうな表情をするが、すぐに何かを思いついたようで、微笑しながら小瀬川白望が入ってる布団に身体を入れ、後ろから小瀬川白望の事を抱きしめた。これには小瀬川白望も少しほどびっくりしたのか、身体が一瞬跳ねる。小瀬川白望は後ろを振り向こうとするが、福路美穂子が抱きしめているために振り向こうとしても振り向けずにいた。そうして小瀬川白望は福路美穂子に向かって「……何」と聞くが、福路美穂子は「すみません……一人は寂しいので」という半ば……というか大半が嘘を言うと、小瀬川白望は渋々納得して再び寝ようとする。

 

(……もう寝たかしらね)

 

 そうして十数分経ってから、福路美穂子は小瀬川白望が眠りについたかどうかを確認しようと少し体制を変えて小瀬川白望の顔を伺うが、小瀬川白望はスヤスヤと寝息を立てて眠っていた。それを確認した福路美穂子は、小瀬川白望の背中に自分の顔を押し付ける。

 

(……上埜さんも、白望さんも……大好き。私があそこまで優しく接して貰えたことなんて、本当にいつ振りかしら……)

 

 小瀬川白望に対して行った奇行も、異様な心の昂りもすべては結局のところ、福路美穂子は寂しかった。その一言に尽きる話であった。幼少期の頃からオッドアイという事だけで謎の隔たりが同い年の人間とできていた事は、聡明な福路美穂子にとって理解する事は実に楽しかった。もちろん、全員が全員嫌悪感を抱いて隔たりを作っているわけではないのは分かっている。気を遣っている人も少なくはなかったのかもしれない。だがしかし、それ故の妙な優しさ……気を遣って特別視される事が福路美穂子にとっては、何よりも悲しかったのである。ただ普通に接したい。そう思っているだけなのに、自分がオッドアイだからというそれだけの理由で、特別視されるというのが辛くて辛くて仕方なかったのであろう。

 無論、福路美穂子の感性が正しいとは一概には言えない。同情してもらう事がその人にとって活力を与えてもらう事と同義である人間もいれば、福路美穂子のように悲しいと思う人間もいる。要するに人それぞれの感じ方があり、福路美穂子は普通に接してもらいたかったと思っていた。それだけである。

 

 

 そういった理由で、長い間自分のオッドアイは欠点であると思っていた福路美穂子であったが、それを上埜……今は竹井久と、小瀬川白望が希望を与えたのであった。彼女らの言葉には、昔言われてきた同情などという感情は一切なく、ただ思った事を率直に言ってくれた。その上で綺麗だと称賛してくれた。それだけで福路美穂子にとっては救いであり、福路美穂子にとっての真の理解者を見つけた瞬間であった。

 そんな二人に対して、福路美穂子は偏った愛情を注いでいることになるのだが、その愛情は本物であるという事実は覆らない。福路美穂子はもう一度二人に対して感謝の意を込めて、そっと小瀬川白望のうなじにキスをした。

 

「ありがとう……白望さん」

 

 そうして、福路美穂子はゆっくりと眠りにつく。そうして福路美穂子が完全に寝た後に小瀬川白望は、ゆっくり目を開けて「ふう……」と息を吐く。福路美穂子は先ほど小瀬川白望が寝ていたと思っていたのだが、実は小瀬川白望は起きていたのだ。ただ目を閉じていただけで、寝てなどいなかったのだ。そうして福路美穂子の心の声を聞いた小瀬川白望は、後ろで抱きつく彼女の事を思いながら、今度こそ眠りについた。

 

(……大変だったね。福路さん。救いになったのなら、それだけで私は嬉しいよ……)

 

 




次回も長野編。
そろそろ高校編に突入ですね〜

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