宮守の神域   作:銀一色

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長野編です。
ああ……明日で今週が終わる……


第253話 長野編 ⑫ タッチ

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視点:神の視点

 

(……一体何があったんだろう。身に覚えがないんだけど、実際気絶してたみたいだし……)

 

(それに、気を失っている間に夢でも見たのか分からないけど智葉が出てきたなあ……なんだったんだろ。アレ……)

 

 小瀬川白望は未だに気絶する前の記憶を思い出そうとするが、まさかここにいるとは思いもしない辻垣内智葉に顎を殴られて気絶させられたなど思いつくはずもなく、終わりの見つからない迷宮を迷っていた。そして結局自分は疲れていたのであろうという仮説を適当に立てて、強引にこの問題を解決する事にした。

 

「あ、あの……!」

 

 そうして小瀬川白望が一息つこうとした直後、福路美穂子が小瀬川白望の事を呼ぶ。小瀬川白望は「んー?」と言ってベッドに再び倒れかかった。

 

「もしそちらが宜しければ……今晩ここに泊まってもいいでしょうか?」

 

「え……」

 

 小瀬川白望がそう反応するのを聞いて、最初は福路美穂子は迷惑になってしまうと思ってしまったが、小瀬川白望は福路美穂子が予想した答えとは真逆の答えを言ってくれた。

 

「私はそのつもりだったけど……もしかして当初はそんな気じゃなかった?」

 

「え?い、いや……そ、そうだったんですね!ありがとうございます!」

 

 福路美穂子はまさか小瀬川白望が最初から自分を泊めるつもりであったということを知って内心驚きながらも、ホテルで打ち解ける前は初対面で右も左もわからない状態であった私をその時から泊めるなんてそんな無用心なことをよくできるものだとある意味で感心する。

 

(……もしかして、他の人にもそういう事を?)

 

 そして福路美穂子のその感心は、一種の嫉妬へと変わっていく。あの辻垣内智葉といい、他の人といい、そういう事を平気でやってのけてそうな感じが小瀬川白望がすると福路美穂子は察知した。まあそれは事実であり、否定しようのないものなのであったが。

 そういった心の中にギスギスとしたものを抱えた福路美穂子であったが、小瀬川白望は欠伸をしながら福路美穂子にこういった。

 

「ふう……そろそろお風呂に入ろうか」

 

「お……お風呂って、この部屋にあるお風呂ですか?」

 

 福路美穂子がそう言うと、小瀬川白望は「ああ……そういえばそっちもあったね」と思い出したかのように答える。小瀬川白望がこういった辻垣内智葉の用意してくれたホテルでは、必ずと言っていいほど温泉、もしくは大浴場があり、小瀬川白望は常にそこに入っていたため、部屋に設置されている風呂は利用した事がないのであった。そういった事情を知らない福路美穂子は小瀬川白望の発言に首をかしげるが、小瀬川白望は「じゃあ、そっちに入ろうか」と言って福路美穂子の腕を掴んだ。

 

「え、え?」

 

 福路美穂子は動揺しながら小瀬川白望の事を見ると、小瀬川白望はそれを見て「なに……どうかしたの」と質問する。

 

「い、一緒に入るんですか?」

 

「いや……別々だとどっちかが待つ時間が必要になってくるし……ダルいから二人で入った方が楽かなって」

 

 そう言われた福路美穂子は、自分が一人で空回りしている事に気づき、顔を真っ赤にして「そ、そうですか……」と言う。小瀬川白望はそれを聞くと、服を脱ぎ始めた。

 

(……大きい)

 

 福路美穂子も先ほどから覚悟は決めていたが、やはり刺激が大きすぎるのは事実である。小瀬川白望のたわわに実った果実のような胸が、今福路美穂子の眼の前で開帳されていく。福路美穂子は、もはや自分が服を脱ぐという事を忘れてただただ体を露出させていく小瀬川白望の事を見ていた。

 そうして流石に小瀬川白望も、福路美穂子の視線に気づいたのか少し顔を赤くし、両手で胸を隠すようにして福路美穂子に向かってこう言った。

 

「あんまりジロジロ見られると……恥ずかしい」

 

 その瞬間、福路美穂子の心の中で何か大切なものにピシッとヒビが入ったような気がしたが、それは気のせいであると信じよう。しかしその小瀬川白望の発言で若干我を取り戻したのも事実であり、福路美穂子はようやく服を脱ぎ始める事にした。

 

「じゃあ、入ろうか」

 

 そして全裸となった小瀬川白望は同じく全裸の福路美穂子にそういって浴室へと入る。二人は取り敢えず頭と身体を交互に洗うと、流石に温泉や大浴場ほどの広さではないものの、それでも一般的なサイズよりかなり広めの浴槽に浸かる。

 

「ふう……」

 

 小瀬川白望はそう言いながら天井をボーッと見ていると、福路美穂子は小瀬川白望に向かってボソッとこんな事を言い放った。

 

「大きいですよね……白望さんの」

 

 それを聞いた小瀬川白望は驚いて噎せてしまう。特に何が大きいと指定はしていなかったが、小瀬川白望にとっては一発でそれが何を指しているか分かるものであった。

 小瀬川白望は驚きながらも、福路美穂子に反論(?)するような形でこう言う。

 

「福路さんだって、大きい方じゃん……」

 

「そ、そうですか……?ありがとうございます……あ、あと……触ってみてもいいでしょうか?」

 

 そう福路美穂子が言うと、小瀬川白望は目を丸くして福路美穂子に向かって「……胸を?」と聞き返すと、福路美穂子は「はい……」と恥じらい深いような表情でそう言った。小瀬川白望は少しの間考えたが、「まあいいよ……ダルくない程度で」と言うと、胸の辺りに置いてあった手をどけて、福路美穂子が触れるような体制をとった。

 福路美穂子は深呼吸をすると、「じゃ、じゃあ……行きますよ」と言って謎の警戒しながらおそるおそる小瀬川白望の胸を突いた。小瀬川白望は何かを押し殺そうとしていた様子ではあったが、ここでは割愛させていただく。

 

(柔らかい……私のじゃこんなに柔らかくはないわ……)

 

 そうして触り心地を確認しながら、小瀬川白望が声を押し殺すこと十数分、ようやく福路美穂子は満足したようで「ありがとうございました」と言うと、小瀬川白望は「うん……もう、こういうのはいいかな」と言って浴槽に浸かっているのに、そこから更にぐったりとしていた。

 

(……もしかして変態なのかなあ。思ったよりダルい人だ……)




次回も長野編。
心を無にして書いてます(悟り)

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