乙女が書きたかったんだよォ!!!
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「ざわ…ざわ…」
予選を通過し、全国大会への出場を決めた私は学校で表彰式が行われた。
やはり全国大会というネームバリューは大きく、すぐに学校での注目の的となった。
朝学校に行けば、私の周りに人だかりができ、まともにダラける事もできなかった。
校長が長ったらしい前口上を言い、何事も無く賞状とトロフィーを渡される。
宇夫方さんはこの時、表彰式には参加していなかった。どうやら失神してしまったらしい。何が起こったと言うのであろうか。
それは置いといて、全国大会までは少し時間がある。
なので休日を利用して智葉のところへ行く事にした。
主に全国大会に出る強者を知るためだ。
もしかしたら、智葉並に強い人もいるかもしれない。
そうなれば、全国大会がもっと楽しみになる。
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東京
そんなわけで東京にやってきた私。新幹線から降りて、東京駅から出ると、所謂ベンツなる車の側に智葉が立っていた。
こちらが手を振ると、智葉もぎこちなく手を振り返す。
「おはよう。智葉。」
「お、おはよう…」
挨拶を交わすと、黒服が出てきて、車のドアを開ける。随分と豪勢な出迎えだ。
私と智葉が乗ったのを黒服が確認して、ベンツを走らせる。
30分位で智葉の家?らしきところに着いた。
家、というよりは屋敷と呼んだ方がいいだろう。車から降りると、黒服達が門の前に並んで、頭を深く下げ、「おはようございます。お嬢。」と智葉に向かって言う。
そんな光景を目の当たりにした私は惘然としていたが、智葉が進むのを確認したので、それについて行く事にした。
そして、智葉の部屋らしい場所にお邪魔する。確実に私の部屋の二倍はある。
部屋の中には座布団と机があり、智葉が座布団の上に座る。
智葉が「て、適当に座っていいぞ」と言うが、座布団と机がそれはまあ高価なものだ。私は恐る恐る座布団に座った。
「じゃ、じゃあ…全国大会に出場する選手の情報だっけか?」と智葉が書類を取り出す。
そこには全国大会に出る選手の名前、顔写真、牌譜など隅々まで記入されていた。
「一体どこからそんな情報が…」
「ひゃい!?」
智葉が一瞬変な声を上げたが、すぐに冷静を取り戻し、
「…まあ、私のグループの情報網は伊達じゃないからな。」
何だろうグループって。絶対なんか怪しいやつにしか聞こえないが、それは一旦考えないようにしたが、耐えられなくなり、
「…智葉って何者なの?」
と、つい質問してしまった。が、
「…お前は知らない方が身の為だ。それより、それを見に来たんじゃないのか?」
「…そうだね。」
何かはぐらかされた気がするが、まあいいだろう。
(んー?)
智葉が用意した書類を見ている内に、見た事のある顔があった。
宮永照
愛宕洋榎
清水谷 竜華
この三人はこの前の連休であった人達だ。宮永照は何となく予想していたが、まさかあの洋榎まで麻雀が打てる人だったとは。
「ほう、その三人を見るとは流石お前だ。」
「…というと?」
「まあ、その三人は私と同じ位。若しくはそれ以上の奴らだ。去年にも出場している。」
「へえ…」
そうだったのか。まさかそんなに強い人達と会っていたなんて。
これはますます楽しみになってきた。
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視点:辻垣内 智葉
…今のところはまだ大丈夫だ。まだ正気を保てている。
書類を見つめる小瀬川をちらりと見る。やはり綺麗だ。そしてかっこいい。
(…まさか自分の為に用意した書類のおかげで合法的にデートが出来るとは…!!)
寝る間も惜しんで作成した私と、それに手伝った黒服に感謝する。
「そういえばさあ」
(…!?!?)
「な、何だ?」
危ない。急に話しかけられたから、変な声をまた出すところだった。落ち着け私。
だが、次の小瀬川の発言で冷静な私は完全に砕け散った。
「私は、智葉の事名前で呼んでるけど、智葉は私の事名前で呼ばないの?」
「え…!?それは、その…」
名前呼び。だと?メールをするだけで精神を削ぎ落とした私が、名前呼び?
いくら何でもハードルが高すぎる。失神してしまうぞ。
(だが、これはアイツの、小瀬川白望の頼みだぞ?辻垣内智葉。行け…!行くんだ辻垣内智葉ァ!!)
「じゃ、じゃあ…何て呼べばいい?」
(違あああああう!そうじゃない!辻垣内智葉ァ!名前で呼ぶんだよォ!何妥協してんだよオイ!)
と自分で自分を責めたが、アイツは
「じゃあ皆も読んでるからシロって呼んで。」
と、提案してくれた。
思考回路がショート寸前の私の脳内で厳粛な会議が開かれそうになるのを抑え、
「…じゃあ、そうしようか。シ、シロ。」
そう言うと彼女は、いや、シロは。
「いざ言われてみると恥ずかしいね…」
と顔を真っ赤にする。
それにつられて私も顔が真っ赤になる。
その後黒服が部屋に入ると、顔を赤く染めた2人の乙女を見て、
(お嬢の成長にこの黒服…感激です…!)
と思ったそうな。
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咲-Saki-で、バトル(物理)小説物を書きたくなってきた今日この頃。
まあ、その話は小学生編が終わるまでは書きませんがね。
そもそも書くと決まったわけでもないですし。