やっと一週間が終わったんやな……
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視点:神の視点
「ふう……さっぱりした」
風呂からあがってきた小瀬川白望はふとそんな事を呟く。とは言っても、宮永照は小瀬川白望の胸を見ながら本日何度目かも分からない自分の胸の無さに対する劣等感に煽られている最中のため宮永照には届いていなかったわけだが。
そしてそんな上の空状態の宮永照は小瀬川白望がもう身体を拭き終わっている事に気づかず、小瀬川白望がバスタオルに身を包んで脱衣所を後にしようとした時にようやく宮永照は我に返って濡れた身体を拭き始め、慌てながらも小瀬川白望の後をついていった。
「そういえば……白望、服とかちゃんと持ってきてるの?」
そして宮永照は小瀬川白望にそう言った事を聞くと、小瀬川白望は「うん……まあ何泊かできるほどの服は持ってきてるよ」と言って、バスタオルを手で押さえながら小瀬川白望が持ってきたリュックの中からパジャマと下着を取り出す。宮永照は小瀬川白望の下着がいきなり視線の中に入ってきたため、驚きながら顔を手で隠そうとする。もちろん両手でやってしまうと自分のバスタオルが落ちてしまうため片手のみでだ。何故視線に入れないようにするかといえば、まともに見てしまえば自分の欲望が抑えれる自信が無かったからである。ただでさえさきほどあれだけ小瀬川白望の身体を見てきて頭の中は悶々としているのに、そこに小瀬川白望の下着という妄想が捗りそうなアイテムを出されてしまえば、宮永照の理性が吹き飛んでしまう可能性が高かったのだ。先ほども感情の昂りとはいえ小瀬川白望に酷いことをしてしまった宮永照が、ここで欲望に負けるわけにはいかなかった。
しかし、小瀬川白望は後ろで宮永照が理性で何かと闘っていることなど露知らず、小瀬川白望はバスタオルを取って裸になり、着替えを始めようとする。それに対して宮永照は理性が壊れかけるのを防ごうとしたのか思わず「き、着替えてくるね!」と言ってそこから立ち去ってしまった。小瀬川白望は去っていく宮永照を見て、あんなに慌ててどうしたのだろうかという疑問を持ちながらも、小瀬川白望は下着を穿いたのであった。
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「うう、やっぱり寒い……」
そうして着替え終えた宮永照と小瀬川白望は、数時間前に宮永照が小瀬川白望の事を押し倒して強引に接吻したあのベッドに横たわっていた。流石に夜の冬の寒さは馬鹿にはならないらしく、宮永照はそう言って身体を縮こまらせる。すると、小瀬川白望は宮永照にそっと近寄って抱き締めてこう言う。
「……こうすれば寒くない、でしょ?照」
抱きしめられた宮永照は驚きと恥ずかしさのあまり眼前に小瀬川白望の顔があったのだが、それが直視できないほどドキドキしていた。宮永照の顔は茹でタコのように赤くなっており、さっきまで感じていた寒さは文字通り吹っ飛んでしまっていた。
「うん……ありがとう///」
宮永照がそう言うと小瀬川白望は疲れ果てていたのか、すぐに眠りについた。一方の宮永照はというと、ある種の興奮で寝れもしないし、この状況をもっと味わっていたいという細やかな欲望のため寝ようとはしなかった。
(あ……白望の胸)
そして宮永照は先ほどまであれほど意識していた小瀬川白望の胸が目の前にあるという事実に気づく。すると宮永照は心の中でバレなければ……と言って、その先端を少し触った。宮永照が先端を触るごとに、その度に小瀬川白望は少しほど身体が跳ねる。その光景が面白かったのか、小瀬川白望の事をもっと見たい、知りたいという欲望が理由なのかは定かではないが、宮永照の行為はどんどんエスカレートしていく。
(ちょっとくらいなら……どうせ私には無縁のものだし)
宮永照が自虐的なことを心の中で呟くと、小瀬川白望の胸を鷲掴みした。もちろん、小瀬川白望を起こさない程度に加減して、だ。宮永照が小瀬川白望の胸を掴んでまず思ったのは、不思議な感触であるということであった。柔らかいのにも関わらず弾力がある。いわばマシュマロのに近いような感触であった。絶壁である宮永照の身体では絶対感じることのできない感触である。
「んん……」
(……っ!?)
そうして小瀬川白望の胸で楽しんでいると、小瀬川白望が声を漏らした。一瞬起きたのかと思った宮永照は咄嗟に手を止めて小瀬川白望の胸から離す。どうやら起きたわけでは無かったようだが、それを機に宮永照はだんだんと冷静になり、終いには自分の行為の愚かさを悔やみながら、さっさと寝ることとした。
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「じゃあ、お別れだね。照」
「うん……そうだね」
そしてその翌日、小瀬川白望は玄関で宮永照とそんな事を話していた。色々あった1日ではあったが、小瀬川白望も宮永照も、互いに満足できた1日であったことに変わりはないであろう。
「……ねえ、白望」
そうして、小瀬川白望がそろそろ宮永照の家から離れようとしたと同時、宮永照が小瀬川白望の事を呼び止めた。
「……何?」
「あ、あのさ……」
「キ……」
「き?」
「キ……ス、しよう」
「え……?」
小瀬川白望は驚きながらも、顔を赤らめる。いきなり言われたと思ったら、宮永照からキスの提案である。そりゃあ驚くし、顔を赤くするのも無理はない。宮永照にとっても一世一代の願いであったのだが、小瀬川白望にとっても重大なものであった。
「……い、いい……かも?」
そうして小瀬川白望が曖昧な返事をすると、宮永照は少しほど笑って「冗談だよ……白望」と言う。しかし、宮永照は「その代わり、頰っぺた出して」と小瀬川白望に向かって言う。小瀬川白望は宮永照の指示に従うと、宮永照はその頬にそっと口を付けた。いきなりの事で驚きながら口付けをされた箇所を手で触っている小瀬川白望の事を外へ送り出すと、小瀬川白望に向かってこう言った。
「……バイバイ。またね」
「え、ああ……うん」
そうして小瀬川白望は宮永照の家から出たわけなのだが、小瀬川白望が現状を整理するまでに数分間ドアの前で立ち尽くしていたのは言うまでもない。
(ああ……緊張した……)
そして当人の宮永照は、ベッドに倒れかかるようにして先ほどの事を振り返る。そして宮永照は口に残る微かな感触を思い出しながら、ただただぼんやりと天井を眺めていた。
(長かった)東京編もこれで最終回。
次回からは長野編ですかね。その次はようやく高校編。