宮守の神域   作:銀一色

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東京編です。
まだ火曜日なんですか……


第231話 東京編 ㉞ 信用、信頼

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視点:神の視点

東三局 親:亦野誠子 ドラ{発}

 

小瀬川白望 40600

宮永照   29900

亦野誠子  19500

 

 

(……なんなんだ一体……ここまで私がこっ酷くやられた事なんて今までであったか……!?)

 

 亦野誠子は自分の目の前にいる小瀬川白望と、横にいる宮永照を交互に見ながら苦言を呈する。もはや彼女らには恐ろしさ、驚きを通り越して理不尽な怒りを覚えていた。この東三局、親番ではあるものの実際問題チャンスかと言われれば微妙なところである。当然ながら小瀬川白望と宮永照から直撃を取る事なんてできるわけも無いし、亦野誠子自身それは自分でもよく分かっていた。

 そうなればツモ和了しかないのだが、それすらも厳しい状況である。親番で1人沈みのこの状況では退こうとする事もできないし、強引に前に進もうとしても倍のスピードで彼女らはついてくる。さも当然かのように。どうしようも無い状況ではあったが、亦野誠子は深呼吸をして落ち着くと、山から配牌を取っていく。正直なところ、具体的な戦略などは全く思いついていない。しかし、小瀬川白望と宮永照という確実にトップクラス以上であるバケモノ2名は亦野誠子を律儀に待ってくてるほど優しくは無い。亦野誠子はやらねばならぬのであった。迷っていたら確実にやられる。とにかく感覚に身を任せて突っ走るしか無い。そう思った亦野誠子である。

 

(……ふふふ。問題は、その自分の感覚をどこまで信じられるか、ということ……!さあ、釣り人さん……どこまで自分を信用できる……?)

 

 確かに理を完全に棄て去り、感覚に身を任せて打つ打ち筋は小瀬川白望が相手となるといえど手強い部類に入る。しかし、それはあくまでも完全に自分を信用できて、意味の無い合理性を持ち込まない打ち筋であったらの場合であり、それこそそんな打ち方をできるものなど赤木しげる、もしくは小瀬川白望本人でしかできない打ち方であり、そんな彼女だからこそ前述した打ち方がそこらの天才にさえできるものでは無いというのは重々承知している。

 ちょっとの疑いすらも許される事の無い完全に自分の不合理な感覚。それを信じる事ができなければ、亦野誠子はあっという間に小瀬川白望に喰われてしまうであろう。

 

 

(……突っ走る!)

 

 亦野誠子の配牌はかなり良いとも言えぬし、逆に悪いとも言えない。せいぜい役牌の{中}ともう一つ対子があり、他には搭子が二つといった典型的四向聴であり、言ってしまえば平凡少し上の手牌であった。しかし、亦野誠子はそんな手牌でも果敢に攻めていく。

 

「ポン!」

 

亦野誠子:手牌

{一②④⑦14699東西} {横中中中}

 

 

 開始早々に亦野誠子は{中}を鳴き、初っ端から仕掛けて行く。小瀬川白望はそれを見て宮永照の動向を探りつつ手を回していく。小瀬川白望も中々良い配牌ではあったのだが、打てる牌がどれも宮永照が鳴ける牌という不幸に見舞われるが、きっちり宮永照にはチャンスを与えずに回し打つ。

 

(……三副露は無理だ。ここで仕掛けないと……!)

 

 亦野誠子はそう言って手を急激的に進める。無理に対子を意識して鳴きを待つのではなく、素直に聴牌へと進んでいく。そんな彼女を見て小瀬川白望は少し感心したものの、(……まだ迷いがあるね。仕方の無い事だけど……)と厳しめの評価をする。実際、亦野誠子も肝心なところまで行けずに、聴牌はできるが和了ることはできない……という歯痒い内容が続く。しかし一方の宮永照も親を流された事でさすがに流れが失墜したか、後半になってくると宮永照も無理だと判断したのか、オリへと回る。無論オリられた事で自由となった小瀬川白望も和了りに向かう事は流石に不可能なため、そのまま局が流れる事になった。

 

 

「テンパイ」

 

「……ノーテン」

 

「同じく」

 

 結果は亦野誠子の1人テンパイで流局となり、亦野誠子の親の続行が決定する。亦野誠子は山を崩すと、心の中でこう意気込んだ。

 

(流局したけど……構わない……!テンパイ流局なら全然オーケー。連荘……!)

 

 亦野誠子は100点棒を置き、東三局一本場へと臨む。小瀬川白望と宮永照という天才、いや……一名は天才より上の枠組みである。そんな2人に亦野誠子は立ち向かっていった。

 

 




次回も東京編。
字数が少ないですねえ……

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