宮守の神域   作:銀一色

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東京編です。
明後日が月曜日なんて私は認めない


第228話 東京編 ㉛ 能力なしでも

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視点:神の視点

 

東一局一本場 親:小瀬川白望 ドラ{⑥}

 

小瀬川白望 42000

宮永照   24000

亦野誠子  24000

 

 

 

(……久々、だね。この感覚は……)

 

 小瀬川白望は『照魔鏡』を発動する宮永照を見ながら、そう呟く。宮永照は小瀬川白望にこの『照魔鏡』を使うのはまだ二回目ではあるが、それでも小瀬川白望にとっては随分と懐かしいものであった。初めて使われて自分の事を見られた感想が率直に気味が悪いと言っていたのも今となっては懐かしい話である。

 無論、こうして見られる感覚は慣れるものではなく、今も小瀬川白望は体に違和感を感じながら、後ろにある鏡をチラリと見る。一体自分は宮永照にはどう見えているのか。それが気になってはいたが、とりあえず小瀬川白望は積み棒を重ねると、「一本場……」と呟く。その瞬間、宮永照も見終えたのか小瀬川白望と亦野誠子の後ろにあった鏡が雲散霧消した。

 

(さあ……来な。照……ダルくさせないようにしてあげるからさ……)

 

 

 

 

(……な、なんだったんださっきのは……?鏡みたいな物が私と、白髪の子の後ろに……?)

 

 一方で亦野誠子は思わず後ろを振り返りながら先ほどの謎の体験に驚いている。まあ、突然自分の後ろに鏡が出現すれば驚くのも無理はないであろう。そして亦野誠子は自身の背後に鏡が突然出現しても、全く驚くそぶりすら見せない小瀬川白望に対して若干の恐怖を感じた。何故そんな普通でいられるのか。さっきの暴打といい、今の無表情といい、こいつは果たして人間なのか。そんな疑問が頭の中で浮かび上がってしまうほど、亦野誠子にとって小瀬川白望という雀士はショッキングなものであった。

 

(……なる程、三副露すれば五巡以内に和了れる能力……さっきの二副露はそれを狙ってたのかな……?)

 

 そして対する宮永照は、『照魔鏡』によって覗いた亦野誠子の能力を確認する。宮永照は確かにこの能力は地味ながらにして強力で、尚且つ能力を露骨に狙いにさえ行かず、幾度か自重して能力を使えばバレにくく、確実に和了ることのできるボロの出にくい能力であると評価した。

 しかし、『照魔鏡』によって全貌が明らかとなった今ではその利点も消え、残ったのは対策がしやすい能力ということだけである。それに、他の人間ならまだしも、小瀬川白望ならいずれかは亦野誠子の能力に気付くであろう。言ってしまえば、亦野誠子の運が悪かったとしか言えないのだが、それは仕方ないだけでは済まされない話である。

 

(能力が見破られたからといって、勝てないわけじゃない……現に白望さんは今まであの闇を除けば能力無しで戦ってきてるし、私も『加算麻雀』はあるけど、それを発動させるまでは私も能力は無いし……)

 

 そう、能力が見破られたからというのは言い訳にすらなっていない戯言でしかない。能力がなくとも強い雀士はそこら中にいる。それを極限まで強くしたのが小瀬川白望であり、しかも小瀬川白望は能力を逆手に使ってきたりそれの裏をかいてきたりするので、彼女からしてみれば能力がある方が良くないと思っているのかもしれない。

 

 

(……白望さんのあの闇は未だに見えるけど……何だろう、それよりも恐ろしいものを覗いている気分……)

 

 そして今度は小瀬川白望の方を向いて宮永照は心の中で呟く。2年前に見たあの輝く閃光のような闇は健在であったが、それ以上に恐ろしい何かを見たような感覚を覚えたのであった。それは『照魔鏡』ですら全貌が掴めず、霧のような何かが雲がかっていた。それを何と言い表せばいいのか宮永照自身ですら分からないが、2年前とは明らかに小瀬川白望は進化しているということが分かった。2年前の時点で既に小瀬川白望は他人とは一線を越していた雀士であったが、ここまでくると異次元とか、別のステージとか、手の届かぬ所とか、もはやそんな話ではなくなっているように思える。届く、届かぬの話ではない。それ以前……無理であると吟味する事すら必要のない、いわば絶対の存在。宮永照から見た小瀬川白望は、まさにそれであった。

 無論、それが一概に正しいとは言えない。事実小瀬川白望の上に存在する者はいるし、何より小瀬川白望はその人物を目標としているのだ。しかし、宮永照から見た小瀬川白望は、雲や宇宙のような存在を超越し、神様などのような存在であったのだ。

 

(……片や2年でさらなる進化……片や2年のブランク……正直厳しいなんてものじゃないけど、私はやるよ……白望さん)

 

 

 そんな宮永照の意気込みと共に始まった東一局一本場。宮永照の手牌はとても調子が良く、この局は宮永照がものにする。そんな気配が立ち込めていたが、それをただでは見過ごさないのが小瀬川白望である。自分の手牌では追いつかないと悟った小瀬川白望は、無理に宮永照を追いかけることはせず、亦野誠子のサポートへと回った。亦野誠子が鳴ける牌を二連続で鳴かせ、一巡置いて再び小瀬川白望が切った牌によって亦野誠子は鳴く。これで三副露となり、形勢は一気に逆転する。

 

(……まさかとは思ってたけど、まさかもう釣りの人の能力に気づいてるなんて……)

 

 宮永照は当然のように小瀬川白望が亦野誠子の能力を利用しようとしている事実に驚きを隠せずにいた。実際小瀬川白望も半ば予測だけでの行動で、これは宮永照の手を潰す以外にも亦野誠子の能力を確かめるという二つの意味を持つ行動であったが、小瀬川白望の予測は当たっていたため、見抜いていたのとなんら変わりはなかった。そして宮永照があと一歩で聴牌となったところで亦野誠子は手牌を倒して宣言した。

 

「ツモ、タンヤオドラ1!」

 

 

亦野誠子:和了形

{④⑤⑥⑦} {②横②②} {8横88} {3横33}

ツモ{④}

 

 

 亦野誠子自身も小瀬川白望に和了らされたという事はもしかしたら程度で感づいていたが、確信には至らなかった。それはそうだまさか自分の能力が披露する前に見抜かれていたなど思うわけがない。

 

 しかし、そんな常人が無理だと思ったもの、それを可能とするのが小瀬川白望である。そこを亦野誠子は見誤っていた。

 




次回も東京編。
因みにまだ照は連続和了は習得していない設定になってます。

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