シロは優勝できるのか!?
シロのブラックホールの正体や如何に!?
そして頑張れ乙女辻垣内智葉!
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塞と胡桃との麻雀から一夜明け、赤木さんと昨日起きた事について考察していた。
もちろん、題材はあの「ブラックホール」みたいなものである。
無意識に出たものなので、どうやって出したのかも分からない。
そんな有耶無耶な「ブラックホール」だが、赤木さんには心当たりがあった。
【…そいつと同じかどうかは知らねえが、同じようなモノを出していた奴ならいるな。】
「…誰」
【多分、俺が生きた中で一番俺を追い詰め、一番強い奴だ…】
【名は鷲巣巌。昭和の怪物と言われた男…】
【俺は特別な条件下で奴と打った。半荘6回にしか満たない勝負だったが、奴と打った記憶は鮮明に覚えている。】
「特別な条件?」
【ああ、奴が賭けたのは大金。それに対し俺が賭けたのは自らの血液…文字通り命を賭した博奕だ。…結局、奴も血を賭けたんだがな。】
「金を賭けてたのに?」
【ちょいとルールが特殊でな、それについては今は関係ないから省略するが…まあ、要は鷲巣の金が底をついたから、血液を賭けたんだ。】
【…それで、沢山奴の血を抜いて、何度も地獄の淵へ追い詰めた。いや、一回地獄にいったか。】
【事が起きたのは確か南一局4本場。親は俺で、奴の抜いた血液は1100cc。老体の奴には致死量でもおかしくない…そんな奴の死の間際に、奴が光を放ったんだ。それまで奴は5連続俺に振り込み、絶不調の鷲巣が…だ。】
【その結果奴は七対子を配牌で聴牌。奴はダブリー一発七対子ドラ4の倍満を和了り、俺の親を蹴った。】
【言うまでもなく…その時の流れは俺…!確実に俺が優勢だった…!
本来なら…俺が奴から和了り奴を葬れたはずだ…
が、それを超越したのが奴の光だ。あれは、オカルトだとか、そんな程度のモノじゃない。正しく…神を超えた力…】
【…多分、お前のは奴の光と相反するようで、実は同じ…そんなモノだと思う…】
「…」
私に、そんな力が。
確かにあの時はとてつもない力を感じた。しかし、今こう言われると実感が湧かない。
「じゃあどうすればいい?」
同じようなモノを見た赤木さんなら知っているはず…そう思って言ったが、流石に赤木さんにも分からなかった。しかし
【鷲巣のホワイトホールも、奴がコントロールして発動させた訳じゃない…あまり躍起になっても仕方ないって事さ…】
「そればっかりに頼らないようにしろって事でしょ…?」
【そういう事だ。】
「分かった。」
聞きたい事も聞き終えたので、私は学校へと行った。
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学校が終わり、家に帰ってきて自分のベッドに寝転がり、塞とメールを打っていた私は未だ「ブラックホール」について考えていた。
(「ブラックホール」…赤木さんを追い詰めたのと同じようなモノ…か。)
(まあ、私はそんなモノで勝つより、実力で勝ちたいから別にどうでもいいけど…もっと詳しく知りたいなあ…モヤモヤするし)
そう思っていた矢先、ピロリンと手に持っている携帯が着信音を放つ。
宛先は智葉からだ。
(あ、そういえば交換してたんだっけ…何も送ってないけど…悪いことしたなあ。)
罪悪感をぶら下げ、智葉から来たメールを開く。
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16:48
From 辻垣内 智葉
件名:私だ
こんにちは。今少し時間あるか?
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なんだろうか。流石に今東京には行けないぞ。
とりあえず「何の用?」と返す。
そしてその1分後、再び着信音が鳴る。
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16:50
From 辻垣内 智葉
Re:何の用
今週の土曜日、麻雀大会の予選があるんだが…
お前も参加してみないか?
因みに岩手も今週の土曜日が予選だ。
本戦は三週間後になるはずだ。
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麻雀大会?麻雀大会ってあの『全国小学生麻雀大会』の事か?
別に私はそういう大会には興味無いのだが…
まあいい、智葉が出るような大会だ。期待はずれって事にはならないはずだ。少なくとも智葉とは打てるのだから。
私は「いいよ。エントリーってどこでするの?」と返そうとしたが、続けて智葉から送られてきて、
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16:51
From 辻垣内 智葉
Re:Re:何の用
エントリーはこちらで済ませておく。あとはお前次第だ。
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と先読みされた。
私は「エントリーってどこでするの?」という文だけ消して返信した。
土曜日か。
まだ時間はある…予選だからといって気は抜かない。全力で叩き潰す。
そう意気込んで、赤木さんとの特訓に励む。
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視点:辻垣内 智葉
ついにあいつを誘ってしまった…
震える手を強引に押さえつけ、メールを打った甲斐があった。
(あいつとまた会えるのか…)
そう考えると胸が高鳴る。と同時に私は自分の有り様に恥ずかしくなり、布団にくるまる。
(あいつとまた会って…それで…デ、デートなんて事になったら…)
〜〜〜
脳内:小瀬川
[早く行こう。智葉。恋人同士なんだから…あんまり恥ずかしがらないで…私も恥ずかしいんだから。]
[でも大丈夫…私がついてる…]
〜〜〜
「〜〜…!!」
声にならない叫びで悶える私。その日、私は寝る事が出来なかった。
次回は予選ですが、麻雀描写は少ないです。