やっと今週が終わりましたね……
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視点:神の視点
東一局 親:小瀬川白望 ドラ{九}
小瀬川白望 30000
宮永照 30000
亦野誠子 30000
始まった小瀬川白望と宮永照と亦野誠子の三人打ち。親である小瀬川白望は配牌を取りながら宮永照の事を見る。
(……確か、東一局は和了ってこないんだっけか?)
そう、もし宮永照が今までと同じ方針で麻雀を打ってくるのならば、宮永照はこの最初の東一局は和了らずに、『照魔鏡』を使って相手全員の能力、言うなれば本質を覗くことに徹してくるはず。故にこの最初の東一局だけは実質小瀬川白望と亦野誠子の二人だけの対局と言っても過言ではなかった。
(……できることならこの一局で決定的な打点を和了りたいところだけど……釣り人さんも釣り人さんで何かありそうだしなあ)
そう心の中で呟いて亦野誠子の方を見る。彼女のあの自信満々の表情からして、彼女には何かしらはあるのであろうと推測する。それが井の中の蛙であり、ただ単なる過信であるのか、絶対の自信を持つ強者の表情であるのか、ああいう表情はどちらとも取れてしまう。故に実際に打って小瀬川白望自身が確かめるしかなかったのであった。
(まあ、表情から情報を得れる時点で赤木さんよりはまだ有情なんだろうなあ。まあ、もし生きていた状態の赤木さんと打っても表情だけじゃ全然わからないと思うけど……)
確かに亦野誠子がどれほどの実力者なのかは未知数ではあるが、この東一局、宮永照が攻めにこないこの東一局での和了は重要である。
小瀬川白望はそんな事を心の中で呟きながら、自分の配牌の牌姿を見る。
小瀬川白望:手牌
{一一九②⑦⑧⑨1157東北北}
三向聴ではあるものの、ここから目指せる役がほとんどなかった。しかし三麻での{北}の扱いは抜きドラかもしくは役牌扱いで、この勝負では役牌として扱う事になっているので、平和すら望めない状況と、打点はあまり望めなさそうな手牌。今の状況の小瀬川白望からしてみればあまり打点は必要ではないとは言い難い。確かにどんな形であれ和了れば連荘ではあるが、その場合宮永照と差を開けることなく闘う事となってしまう。確かにそうなった場合でも殴り合いに持っていけば小瀬川白望ならば十分勝てる範囲であろう。しかし、小瀬川白望が危惧していたのは宮永照の『照魔鏡』ではない、もう一つの能力。『加算麻雀』であった。
半荘内での自身が和了った合計飜数が十三以上になると自動的に発動し、十三飜以上となった局の次の局に役満を聴牌できるという圧倒的能力。かつて小瀬川白望はその単純なカラクリではあるが、絶大な火力によって苦しめられたのだ。……もっとも、その時は自身の闇に身体を蝕まれていたのも重なっていたのだが。しかし、それを抜きにしたとしても宮永照の『加算麻雀』が強力である事には変わりない。
小瀬川白望
打{東}
小瀬川白望はとりあえず{東}を置いて、東一局が始まる。そうして宮永照が手を伸ばそうとした瞬間、亦野誠子がニヤリと笑って牌を倒す。
「ポン!」
亦野誠子:手牌
{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏} {東横東東}
打{②}
亦野誠子が早々に飜牌の{東}を一副露。自身の能力『釣り人』を発動させるために邁進しているようだ。しかし小瀬川白望と宮永照は亦野誠子が何を狙っているのかまだ分からないため、未だ様子見程度ではあったが、彼女らはとりあえず『亦野誠子が何かをしようとしている』という事に気付いたため、当然のように警戒する。小瀬川白望は自身が和了に向かいながら、宮永照は自身の点棒を減らさないように警戒していた。
「ポン」
亦野誠子:手牌
{裏裏裏裏裏裏裏裏} {横888} {東横東東}
打{一}
しかし、宮永照が切った{8}を亦野誠子が鳴く。この牌は小瀬川白望の安牌であったため宮永照が切ったものであったが、運悪くそれが亦野誠子の手を進める事となってしまった。亦野誠子は心の中で(あと一副露……流石に露骨に狙いすぎたか?)と言って、自身の萬子と筒子で構成された捨て牌を見る。端から見れば混一色狙いであるということが一目瞭然である。これは亦野誠子にとっては痛手であった。この捨て牌を見て索子を絞られてしまうと、鳴きたくても鳴くことができない。当然の事ではあるが、それが結構痛手であるのだ。故にここは能力を使わずに自力で和了を目指した方がいいかと思っていた矢先、小瀬川白望が衝撃の一手を放った。
小瀬川白望
打{5}
(……んなっ!?)
亦野誠子は驚愕する。自分で言うのもアレなのだが、いくらなんでもこんな露骨な捨て牌にあんなど真ん中の牌を打つなどあり得ない。愚行極まりないものであった。なぜ、あんな牌が打てるのか。いや、実際小瀬川白望が打った{5}は亦野誠子は和了れないし鳴けないのだが、それにしても驚くべきものであった。
(ただの素人か、それとも此方の手が見透かされているのか……どっちだ?)
亦野誠子は小瀬川白望の事を見ながらそう呟く。得体が知れない。素人という言葉で済ますこともできるのだが、亦野誠子は今自分の目の前にいる小瀬川白望から、なんとも言えぬ凄みを感じていた。一体それがなんなのかは分からないが、とにかく素人という言葉で片付けて良いものではない。そう悟った。
そうして亦野誠子が驚愕しながらも引き続き自力での和了に向かったが、さっきの{5}打ちで一向聴となっていたのか、その一巡後に小瀬川白望がリーチをかけ、一発でツモ和了った。
「ツモ」
小瀬川白望:和了形
{一一一⑥⑦⑧12234北北}
ツモ{3}
裏ドラ表示牌{赤⑤}
「リーチ一発ツモ……裏1。6000オール」
(くっ……)
(……)
亦野誠子は小瀬川白望の和了形を見て苦言を呈す。もう少しバレないよう慎重に行っていれば三副露できていたかもしれないという若干の後悔と、本来ならばリーのみの手で、一発や裏が乗って満貫となってしまった小瀬川白望の強運に驚く。
そして東一局、宮永照は小瀬川白望に振り込むことなく東一局を終えることができた。満貫ツモはやられたもののm、振り込まなかっただけ大きいものであった。そして……
バキッ!!
(……来た)
(な、なんだこの感覚は……!?)
宮永照の『照魔鏡』が発動することとなった。
次回も東京編です。