宮守の神域   作:銀一色

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東京編です。
戒能プロ編はこれで終わり!


第223話 東京編 ㉖ ばっちり

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視点:神の視点

 

 

(……白望さんも今頃はスリーピングでしょうし、私もさっさとお風呂に入ってスリープとしますかね……)

 

 小瀬川白望が寝室へ戻り、おそらくもう寝たであろうと推測した戒能良子は風呂を沸かす事にした。小瀬川白望も相当疲れていたのだろうが、自分も意外と疲れているので早めに寝るには越した事はない。

 そうして風呂が沸くと、戒能良子は着替えを持って浴室へと向かった。

 

 

 

 

(ふう……やはり寒い日に浴びるシャワーはマキシマムですね)

 

 そして服を脱ぎ去った戒能良子はさっさとシャワーを浴びる。室内であるというのに寒さが伝わるほど冬というものは寒く、これがもっと北の地域になると更に寒くなるというのだから恐ろしい。戒能良子は心情で(私はきっとノースの地域ではLiveできませんね……)何て事を思いながら、身体を洗っていく。

 そうして身体と頭を洗い終えた戒能良子は、いざ風呂に入ろうとしたが、そこで彼女は何かを忘れている事に気づく。

 

(おっと、うっかり入浴剤を入れるのをフォゲットしてしまったようですね)

 

 そう、戒能良子は風呂に入浴剤を入れるのを忘れていたのだ。乾燥する冬場で、保湿効果を持つ入浴剤は女性にとっては不可欠(のはず)。戒能良子もそれを愛用していたのだ。他にも保温効果やリラクゼーションなど色々な効果があるものの、一番はそこではあった。流石の戒能良子でも肌荒れを治す神様や霊を降ろすことはできない。というかそんなものが存在していなかった。

 戒能良子が使っている入浴剤は固形のものであり、それは浴室の隣にある洗面所のある棚の中である。戒能良子がそれを得るためには一度浴室から出る必要性があった。それの何が問題かというと、濡れた状態で寒い洗面所へ出るというのが問題であった。いくらそんな数秒もかからない行為だとしても、その数秒間はきっと地獄であろう。そんなリスクが戒能良子が入浴剤を持ってくるという行為を逡巡させたが、戒能良子は意を決して行く事にした。

 

(……ゴー)

 

 そうして戒能良子は浴室と洗面所を隔てる浴室ドアを開ける。そうして洗面所へと出た瞬間、浴室ドアとからではなく、()()()()()()()()()()()が開く音がした。

 

「なっ……」

 

「あ……」

 

 

 戒能良子は驚いて後ろを振り返ると、そこには驚いて言葉を失っている小瀬川白望が立っていた。二、三秒沈黙が訪れるが、その直後小瀬川白望がバン!と勢いよくドアを閉める。戒能良子は閉まったドアを見ながら、少しばかり突っ立っていた。

 そうして、戒能良子は深呼吸をしてから大いに焦り始める。

 

(な、なぜ白望さんはスリープしてなかったんですか……?Why……?)

 

 思わず問いかけたくなってしまうほどの衝撃を受けた戒能良子は焦りと羞恥心でいっぱいであった。何故ちょうどタイミングが良い時にやってきたのか、そして何故小瀬川白望は起きていたのか、何から何まで理解できていなかった。

 

(……ばっちりルックしてましたよね///)

 

 とりあえずそのことは置いといて、小瀬川白望がここに来たという事は何かしら訳があったのだろう。戒能良子はバスタオルに身を包んでドアをそっと開ける。するとそこには未だ驚きの表情をしていた小瀬川白望が立っていた。

 小瀬川白望は戒能良子がドアを開けた事に気づくと、一瞬びっくりしたものの、バスタオルに身を包んでいる様子を見てとりあえず安心した。

 

「……What Happenedですか?」

 

 そして戒能良子が問いかける。戒能良子も冷静になっていると思いきや、動揺しすぎて英語の発音も完全にネイティヴになりかけていた。小瀬川白望は視線を逸らしながらも、戒能良子に向かって「いや……タオルが乾いてたから、濡らそうと思って……」と言う。それを聞いた戒能良子はああなるほど、その可能性があったかと自分が前もってタオルを濡らさなかった事を後悔する。もし戒能良子が小瀬川白望が部屋に戻って寝ると言った時に、タオルに気づいて濡らしておいていれば、今回の事件は免れたかもしれないというのに。

 

「あ、ああ……そうでしたか……」

 

 戒能良子は後悔しながらそんな事を呟く。もう起こってしまったものは仕方ない。気にしないようにしようと戒能良子の心の中で切り替え、話題を別の方向へ逸らそうとする。浴室から出たら体が冷えると危惧していたのにもかかわらずに、そんなことなど既に忘れ去っていた。

 そして、戒能良子は思い出したかのように小瀬川白望に向かって聞く。

 

「バイザウェイ。白望さんはバスに入るんですか?sickの時にバスに入ってはいけないというのは迷信だとよく言われますが……」

 

「……そうだね、長風呂はする気は無いけど、さっとなら入ろうかな……」

 

 そして会話が終わると、戒能良子は少しほど顔を赤くしながら「じゃ、じゃあ。私はコンティニューしますね」と言って棚から固形の入浴剤を取り出し、中身をとって包装紙を捨て、浴室のドアを開ける。そしてサッと浴室の中へと入っていった。

 そうして小瀬川白望がタオルを濡らし終えたのか、洗面所から出て行く音がすると、戒能良子は深い溜息をついて脱力する。そしてさっきやった自分の失態を改めて恥ずかしく感じた。

 

(……これではWifeに行けません///)

 

 

 

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「……上がったよ。戒能さん」

 

 あの後からは何事もなく戒能良子が風呂から上がり、小瀬川白望と交代して、そして今小瀬川白望が上がってきた。若干顔を赤らめているパジャマ姿の戒能良子はそれを聞いて「そうですか……」と言って目線を逸らす。そして小瀬川白望が寝室へ行こうとすると、戒能良子が小瀬川白望に向かってこんな事を聞いた。

 

「……トゥモローは何かあるんでしょうか?」

 

「……あるよ」

 

「そうですか……」

 

 戒能良子は少しほど寂しそうな表情をしながら、小瀬川白望の事を見る。そんな戒能良子に、小瀬川白望はこう言った。

 

「何も、今日で終わりってわけじゃないでしょ」

 

「今日できなかった事……いつかやろう。戒能さん」

 

 それを聞いた戒能良子は、ふふっと笑って小瀬川白望に向かって笑顔でこう返した。

 

「……次はhealthな状態で来てくださいよ?」

 

「うん……わかった。おやすみ」

 

 そう言って小瀬川白望はリビングから出て行き、寝室へと向かう。そんな小瀬川白望の後ろ姿を見ながら、戒能良子はさっきまでの寂しい想いなど忘れ去り、次への期待に胸を膨らませていた。

 

(……私もスリープしますかね)

 

 そして戒能良子も寝る事にした。確かに小瀬川白望と一緒に寝たいという欲望はあるが、風邪の小瀬川白望と寝るわけにもいかないので、やむなくソファーで寝る事にした。

 

 

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「……36.7。どうやら完全にリカバーしたようですね」

 

 そして翌日、戒能良子は小瀬川白望の脇から抜き取った体温計を見てそう呟く。実のところまだ熱があれば予定をキャンセルして今日も家で休養してくれるかなとか戒能良子は思っていたが、即座にその用事は小瀬川白望にとっても大事な用事なのだろうと自分自身で考えを否定する。

 そしてそれを聞いた小瀬川白望は、戒能良子に向かって「昨日一日、看病してもらってありがとう……」と感謝の意を伝える。対する戒能良子は「You're welcomeですよ」と返す。そうして小瀬川白望は彼女の荷物を整理し始める。それを見た戒能良子は彼女に向かってこう言う。

 

 

「……そろそろ時間ですか?」

 

「うん……そうだね」

 

「……いつでもコンタクトして下さいね」

 

「……うん。勿論」

 

 そうして彼女は荷物を纏め終え、戒能良子に「じゃあ、またね」と言って玄関へと向かう。戒能良子は玄関の前で立ち、「シーユーアゲインです」と言う。小瀬川白望は玄関の扉を開け、戒能良子の家から出て行く。戒能良子は小瀬川白望が出て行っても暫くの間、玄関のドアを見つめていた。




次回はとうとう照編。

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