宮守の神域   作:銀一色

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東京編です。
戒能プロのキャラ崩壊……?


第221話 東京編 ㉔ 看病の一環

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視点:神の視点

 

(……やはりかなりタイアードだったようですね……もうスリープしてしまいました)

 

 戒能良子は小瀬川白望が眠っている寝室のドアをそっと開け、中の様子を覗く。そこには静かに寝息を立てる小瀬川白望がいた。やはり疲労が溜まっていたようで、さっき戒能良子が出て行ってからまだ5分も経っていないのにも関わらずもう寝てしまっていた。

 一応これで戒能良子が小瀬川白望にできることはし尽くしたのだが、あらかたやってしまったため随分と暇になってしまった。本来戒能良子は今日を全て小瀬川白望のために費やすと決めていたため、小瀬川白望がこうなってしまった以上何もすることが無くなってしまった。

 今からリビングに戻って本やテレビを見ることだってできるのだが、別にいつでもできることだし、特別そういう気分でもない。そして何より小瀬川白望がこうなっている状況で放っておくわけには行かなかった。そういう名目で戒能良子はリビングに戻らず、開けたドアから堂々と侵入する。小瀬川白望を起こさないように、足音を立てないように小瀬川白望が眠るベッドの横までやってきて、そして寝室にあった椅子をこれまた音を立てずにそっと持ってくる。

 通常ならばここで誤って音を立てて小瀬川白望を起こしてしまう。そういう展開になりがちであるが、戒能良子はそんなミスはしない。なぜなら彼女は小さい頃から麻雀やイタコの修行だけでなく、傭兵としての訓練やスパイとしての訓練を受けてきたのだ。彼女自身プロ雀士を志している人間に必要なものなのかといつも疑問に思っていたが、今日ようやくそれが役に立つ時が来た。

 

(まさかシークレットエージェントのトレーニングがここで役に立つ時がくるとは……)

 

 実際訓練が本当に役に立っているのかはさておき、とりあえず少しも音を立てずにこうして椅子に座って小瀬川白望の寝顔を見ることができた。小瀬川白望の普段の顔も十分破壊力があったのだが、寝顔もそれと同等、もしくはそれ以上の破壊力があった。

 

(寝顔もキュートですね……軽くジェラシーしちゃいますよ)

 

 そうして戒能良子は寝ている小瀬川白望の頬を撫でるようにして触る。触られた小瀬川白望が寝ている状態で反応を示すのが戒能良子からしてみれば可愛らしくて仕方なかったのであった。端から見れば、寝ているのをいいことに良からぬことをしようとする悪い人間にしか見えなかった。

 

(……流石に風邪をキュアーできるモノは居ませんし……怪我をヒーリングしたり、逆に病気にかけると言ったらまた話は別なんですけど……)

 

(結局、私にできることはこうしてルッキングすることだけ。これもナーシングの一環です)

 

 しかし戒能良子はそう言い聞かせ、小瀬川白望の事を間近で看病する。最初の内は小瀬川白望の寝顔を見るだけで堪能できていたのだが、次第にそれも飽き……というか満喫しきり、そして尚且つ自分も疲れていたのか、いつの間にか戒能良子も椅子に座りながら寝てしまっていた。

 

 

「ん……」

 

 そして戒能良子も寝てしまってから1時間ほど経ち、戒能良子ではなく小瀬川白望が目を覚ました。小瀬川白望は先ほどよりはだいぶマシになったが、まだダルさと風邪の時特有のボヤッとした晴れない感覚の中、小瀬川白望は上半身を起こす。するとまず最初に目に入ったのは椅子に座って眠っている戒能良子であった。

 

(……戒能さん、ずっと看ててくれたんだ)

 

 小瀬川白望はそんな戒能良子を見ながらふふっと笑い、起こしていた上半身を再び倒し、タオルを自分で自分の額の上に乗せる。無理に起きて風邪を長引かせるのも看病してくれている戒能良子に対して失礼である。そう思って小瀬川白望は直ぐに寝ようとする。

 実際、さっき寝たばかりなのにまた寝れるものかと思っていたが、不思議なように目を閉じたら直ぐに寝ることができた。

 

 

 

 

「……おや、どうやら私もスリープしてしまっていたようですね」

 

 小瀬川白望が再び睡眠を始めてから今度は3時間が経とうとしていた頃、戒能良子はようやく目を開けた。自身が寝てしまっていたことと、そして4時間ほど寝てしまっていたことに気づき、どうやら自分も疲れが溜まっていたという事を思い知らされる。

 流石に4時間も経てば、小瀬川白望の額の上に乗っている濡れていたタオルもすっかり乾ききっていた。戒能良子はとりあえずそのタオルを水で濡らし、再び額の上に乗せようとすると、小瀬川白望の着ている戒能良子の服が濡れていることに気づいた。

 

(……白望さん、汗によってウェットな状態ですね)

 

 汗で濡れたままでいるのも、次第に汗が冷えてしまうと考えればそのままにするのは良いとは言えない状態である。小瀬川白望を起こすのも悪いし、ここは自分が汗を拭いてあげるしかないだろう。そう自分に言い聞かせ、興奮を抑える。

 

(と、とにかく……汗を拭く用にNEWなタオルをbringしてこなくては……)

 

 そうして新しいタオルを持ってきて、改めて汗に濡れる小瀬川白望を前にする。戒能良子は息をのんで、音を立てないように……そして小瀬川白望の足などを誤って踏んだりしないようにベッドの上に乗り、小瀬川白望の上半身をそっと起こし、前にも後ろにも倒れかからないように左手で体を支える。

 

(流石に上半身オンリーですけど……本当に良いんでしょうか、これは……)

 

 しかし、ここまで来た以上退くわけにも行かないと自分に言い聞かせた戒能良子は右手に持つバスタオルを手に届く範囲で置く。そして恐る恐る小瀬川白望の着ている自分の服のボタンに手をかける。

 

(ボタン式のクローズで助かりました……)

 

 内心そんなことを考えながらも、ボタンをプチプチと外していく。わずかな音ではあったが、今はそのわずかでも命取りとなるこの状況、細心の注意を払う。そうしてボタンをある程度外すと、小瀬川白望のブラジャーによって守られている胸が開帳する。

 戒能良子はもしかしたら高校生の自分と同じくらいあるのではないかと少しびっくりしながらも、直ぐに任務を続行する。あくまでもこれは看病の一環。決してやましい事ではないのだ。

 

(ブラジャーを外すなんて事流石に看病の一環といえどインポッシブルですけど……とりあえず拭けるエリアは拭きましょう)

 

 そうして服のボタンをだいたい外すと、戒能良子はタオルを手にとって小瀬川白望の身体を拭き始める。前側は何の問題もなく終わった。というより、あまり前側が汗に濡れていなかったため、直ぐに終わることができた。

 そして問題は裏側である。背中側は服を着たままではなかなか難しいし、そもそも背中側に至っては服まで濡れているため、背中だけを拭いただけでは無意味であった。なら服を脱がせば良いのだが、それが至難の技なのであった。普通に脱がせるだけなら全然難しい事ではない。しかし、それに寝ている状態のままという条件が加わると難易度は一気に上昇する。それに、他にも服を変える必要があり、小瀬川白望が起きたと同時に気付かれるのではないかという後の心配もしていた。

 

(……しかし、やるしかありませんね。……イエス、アイキャン)

 

 戒能良子はそう言い、小瀬川白望から服を外していく。まずはボタン。途中まで外していたボタンを全て外し、今度は腕。右手からそっと服を抜き取っていくように脱がせていく。

 ここまでは順調であった。が、しかし。

 

「ん……?」

 

 小瀬川白望が目を閉じたまま発した声。寝言なのか起きる直前なのか分からないが、その声は戒能良子を非常に焦らせた。その拍子に、誤って戒能良子は前に向かって倒れかかってしまう。この時、戒能良子が前傾の状態で座っていなければ、こういう事にはならなかったのであろう。戒能良子は小瀬川白望の事も巻き添えに押し倒してしまう。そして、倒された小瀬川白望はパチリと目を開く。

 

(なっーーー!?)

 

 

「え……」

 

 その結果、上半身の服を脱がせられている最中の小瀬川白望と、脱がせていた戒能良子の目が合ってしまった。その瞬間、いきなりのことで驚いた小瀬川白望は思わず拳を放ってしまう。しかし、戒能良子はその拳を冷静に掴み、場に沈黙が訪れた。




次回も東京編。
さて、戒能プロはどう乗り切るのか!?

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