-------------------------------
視点:神の視点
「ふぁ〜あ……もうこんな時間……」
小瀬川白望が辻垣内智葉やネリー・ヴィルサラーゼ、メガン・ダヴァンと談話しながら麻雀を気楽に打っている最中に、室内に掛けられている如何にも高そうな掛け時計を見て欠伸混じりにそう呟く。時刻はもう24時を回ろうとしていた。流石に中学二年生の身体には耐えられるような時間では無いらしく、ちょっと前から小瀬川白望はコクン、コクンと頭を揺らしていた。
「そろそろ寝るか?」
そして辻垣内智葉はそんな小瀬川白望を見て、そんな事を小瀬川白望に告げる。眠そうな状態とはとても思えないほど相変わらずの闘牌で、流石に思考力は低下しているもののそれでも他を寄せ付けない圧倒的な強さを誇っていた。しかし、いつ寝てしまってもおかしくないような状態であったため、辻垣内智葉はそう言ったのだ。
「うん……そうする」
小瀬川白望は目を擦りながらそう返事する。それを聞いた辻垣内智葉は「そうか。じゃあ私達も寝るかな」と言って麻雀牌を片付ける。ネリー・ヴィルサラーゼとメガン・ダヴァンは眠そうな小瀬川白望を立たせ、そのまま寝室へと送って行った。
「ココ、ですカネ?」
そしてメガン・ダヴァンは寝室だと思われる部屋の目の前までやってきてネリー・ヴィルサラーゼにそう言った。当然ながらこの辻垣内家の全貌を知っているわけがなく、常識では考えられないほどの広さを誇っている辻垣内家では一つの部屋に辿り着くのでさえも大変であった。
無論、メガン・ダヴァンもネリー・ヴィルサラーゼも今目の前にする部屋が寝室なのかなど分かるわけもなく、結局中に入って確かめるしかない。そうしてメガン・ダヴァンは扉をそっと開けると、そこには布団が四つ並べて敷かれている光景が見えた。どうやらここが寝室で間違いはないらしい。
「……おやすみ」
もし間違った部屋で、尚且つ極道の"危ない場面"に遭遇しないで済んだとメガン・ダヴァンが胸を撫で下ろしていると、横から小瀬川白望がすっと通り、そのまま布団へ倒れ込んだ。相当疲れていたのか、枕が扉側にあったため、小瀬川白望が倒れた状態のままでは寝る方向が反対であるのにも関わらず、そのまま小瀬川白望は倒れたまま動かなくなった。
「……どうする?メグ」
そんな反対になっている小瀬川白望を見て、ネリー・ヴィルサラーゼはそんな事を聞く。メガン・ダヴァンは「ムリに起こすのも悪いでしょうシ、そのままにしておきまショウ」と返した。
そして片付けを済ましてきた辻垣内智葉が来るのを待ってから、三人も寝ることにした。もちろん、小瀬川白望の隣は辻垣内智葉とネリー・ヴィルサラーゼであり、その更に隣でそんな三人を見ていたメガン・ダヴァンはふとこんな事を思ったそう。
(……ワタシも混ざりたいと思うのはオトサレている証拠なんでしょうか)
そんな事を考えながらフッと鼻で笑ったメガン・ダヴァンは瞳を閉じて、そのまま夢の世界へと旅立った。
-------------------------------
「……もう行くのか」
そして日が変わり、小瀬川白望が旅立つ時がやってきた。この一日だけでもかなりの事があった濃い内容の一日であったが、いざ終わりを迎えると早いものだ。そんな事を思いながら辻垣内智葉は小瀬川白望に向かってそう言う。
「うん……楽しかったよ。ありがとう」
そして小瀬川白望は辻垣内智葉に向かってそう言う。辻垣内智葉は少し寂しそうな表情をして「……また来いよ」と言った。小瀬川白望はフフっと笑って、「もちろん」と答えた。
「ネリーとメグはこれからどうするの?」
「ネリーは国に帰って取り敢えず借金を返すかな……その後はどうするかは決めてないけど、借りた分のお金は返さないとね」
「……いつでも待ってるよ」
(受け取る気はないけど。嵩張るだけだし)
「メグは?」
「ワタシも一度アメリカに帰るとしマス。その後は未定でスガ……今度はシロサンの家の方にでも行きましょうカネ」
ハハハと笑いながらメガン・ダヴァンはそう言うが、横にいる辻垣内智葉が「ほう……よく私の目の前でそんなセリフが吐けたな」と言って殺気を放つと、メガン・ダヴァンは「冗談ですヨ。冗談」と言って否定する。
(マア……行きたい気持ちはありマスけどネ……)
心の中でそんな事を呟いていると、小瀬川白望は「じゃあ……またいつか」と言って歩き始める。辻垣内智葉ら三人はそんな小瀬川白望の事を黙って見送っていた。そして小瀬川白望の姿が見えなくなると、メガン・ダヴァンはネリー・ヴィルサラーゼに向かってこんな事を言った。
「……ナゼでしょうカ。シロサンとはまたいずれ、何かしらで会うような気がしマス」
「ネリーもだよ。っていうか、ネリーはお金を返さなきゃいけないからまた会わないといけないし」
「……それもそうデスね」
-------------------------------
(はあ……なんだろう。昨日の夜辺りから身体が凄くダルい……)
そして辻垣内智葉の家から出発すること約20分。小瀬川白望は自分の身体の異常な気怠さを感じながら、戒能良子と昨日決めた待ち合わせ場所に向かって歩いていた。
(あー……そういえば、何の要求をするのか考えていなかった……)
(まあでも、それを考えてもらうのも一つのお願いって事で良いか……)
結局それでは罰ゲームとして成り立っていないような気もするが、取り敢えず小瀬川白望は待ち合わせ場所までやってきた。小瀬川白望が到着した時には既に戒能良子が待っており、小瀬川白望の事を見つけると「グッモーニングです。昨日以来ですね」と声をかける。
「おはよう……ございます」
小瀬川白望自身、数歳年上という微妙な年齢の人と関わる事が少ないためどうしたら良いのか戸惑っていたが、取り敢えず挨拶を交わす。
「別に年上だからといって敬語を使う必要はありませんよ?」
「ん……分かった」
そうして、戒能良子はいきなり本題である罰ゲームを聞き始める。「それで、私は何をすれば良いんでしょうか?」と戒能良子が小瀬川白望に聞くと、小瀬川白望は「ダルいから戒能さんが決めて……」と返答する。戒能良子もその返答は予想していなかったようで、少し考えた後、小瀬川白望にこう提案した。
「じゃあ、ショッピングにでも行きましょうか?」
それを聞いた小瀬川白望が「……買い物?」と聞き返すと、戒能良子は親指を立てて「イエス」と答える。
「あんまりダルくないのにしてほしかったなあ……」
「私に決めさせたのは白望さんですよ。さあ、レッツゴーです」
次回も東京編。
ようやく戒能プロのターン