宮守の神域   作:銀一色

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東京編です。
とうとう明日で終わってしまいますね……(絶望)


第208話 東京編 ⑪ 情熱

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視点:神の視点

 

東一局 親:戒能良子 ドラ{⑨}

 

小瀬川白望 25000

黒服1   25000

戒能良子  25000

黒服2   25000

 

 

(……始まったか。泣いても笑ってもこの一回きりの半荘。さて、天はどちらに味方するか……)

 

 対局が始まるとほぼ同時に、組長は対局している部屋へ入り、煙草を吸いながら小瀬川白望と戒能良子、両者の行く末を見届けていた。しかし、彼の瞳は戒能良子に勝ってくれという懇願はさほど見られず、どちらかというと小瀬川白望と戒能良子がどのように闘うのか興味を示しているようにも見えた。無鉄砲ながらもどこか圧倒的な凄みを感じられ、どんな事にも臆せず自分の命すらも厭わない小瀬川白望と、表の世界では高校1年目にして早くもプロ入りが確実視されている戒能良子、この正反対とも言えるこの両者の闘いが彼の心を躍らせた。

 

(戒能のとこの孫は言わずもがな、あの小瀬川とかいう嬢さんも凡人にはないオーラ、存在感がある……これは面白くなりそうだ)

 

 そこまで考えて、組長は心の中でハッとする。自分が今、恐らくここ10年20年は感じなかった、心の高揚を感じていた事に。彼の中で眠っていた若かりし頃のあの麻雀に対する情熱が、今再び呼び起こされた感覚を彼は感じた。

 

(不思議だな……何故かあの嬢さんを見ていると、昔のことを思い出してくる……)

 

 そしてそんな懐かしい感情を呼び起こした小瀬川白望の事を、組長は不思議そうに見つめていた。

 

 

(サイコロの出目次第とはいえ……起家はバッドですね……彼女の出方を見る上でも、グッドとは言い難い……)

 

 一方、起家となった戒能良子は自分の起家に対して心の中で苦言を呈しながら、配牌を取っていく。

 

戒能良子:配牌

{一二六七②⑨1568東東西中}

 

(配牌もバッドですね……唯一の救いが東の対子でしょうか。イタコの能力もまだインフィニティに使えるわけではありませんし……というか今の私ではワンチャンスしかありませんからね……)

 

 面子もなく、打点もイマイチでせいぜいダブ東のみの手になりそうな微妙な配牌であったが、とりあえず戒能良子は{西}を切って様子を見る。いざとなれば自分のオカルトを使っても良いのだが、果たして一回きりしか使えないというのに、東一局という初っ端からその一回きりを使って良いのだろうかという問題に悩みつつも、いざとなったらいつでも使えるように心の中で準備をする。

 

(そうですね……いざとなったら"ソロモン王"の力でも借りましょうか。マヤ神話のモノでは相性が良くなさそうですしね……と言っても、借りるのは"ソロモン王"本人ではなく、従えていた悪魔と天使の力なんですがね……)

 

 そうして第1ツモを行う小瀬川白望を見ながら、戒能良子は何かを念じた後、自身の左手薬指から指輪のようなものを召喚する。そう、これこそがかつてソロモン王がヤハウェに祈りを捧げ、大天使ミカエルから受け取ったとされている『ソロモンの指輪』。それを戒能良子は発現させ、自身に装着させる。

 

(……さあ、どう動いてくるか、カモンです)

 

 

 

 

(シロ……相手は恐らく、今までのオカルト使いの中で一、二を争うほどの厄介なオカルト使いだ。私もアイツの牌譜を見て考察したが、何も答えは出てこなかった……)

 

 そして小瀬川白望の後ろにいる辻垣内智葉は、心の中で小瀬川白望に向かって声援を送る。辻垣内智葉が言っていたように、彼女自身も今年のインターハイの牌譜を見て考察を重ねたが、一貫して戒能良子の全貌は掴めなかった。まるで小瀬川白望のような牌譜だとも思ったが、小瀬川白望とは違って、戒能良子には明白な何かがある。小瀬川白望は素の状態であるのに対し、戒能良子は何かが取り憑いている、もしくは使役している。そんな感じがしたのだ。そういった意味では、小瀬川白望とはまた違った謎である。

 

 

(シロサン……前までは前側しか見れていませんでしタガ、今回は後ろから見える……一体どんな麻雀を打つのでショウカ……)

 

 辻垣内智葉の横にいるメガン・ダヴァンも、今まで散々叩きのめされてきた小瀬川白望の闘牌がいよいよ後ろから見えるとなって、緊張を交えながらも小瀬川白望の打ち筋を楽しみにしていた。

 

 

(……)

 

 

 しかし、そんなメガン・ダヴァンの期待とは裏腹に小瀬川白望は何か変わった打ち方をするわけでもなく、ただただ平凡に、手なりに打っていく。

 それを感じ取ったのか、戒能良子も首を傾げながら小瀬川白望の事を見ていた。

 

 

(何かをするわけでもないという事ですか……なら)

 

 

「ポン」

 

戒能良子:手牌

{一二六七②125678} {東東横東}

 

 

打{②}

 

 横にいる黒服が切った{東}を鳴き、これでダブ東が成立する。まだ聴牌までには遠いものの、この{東}を鳴けたのは大きかった。

 

 

(……)

 

 しかし、対する小瀬川白望はそんな事を気にも留めずに手を進めていく。戒能良子が聴牌していないと考えてか、もし仮に聴牌しているとしたら危険牌となりうる牌を次々と払っていく。その一打一打に迷いはないが、後ろから見ている三人にとっては一打一打が冷や汗ものであった。絶対に振り込まないであろうと信じているものの、いざあんな事をされてしまっては緊張してしまうというのが人間のサガだ。

 

小瀬川白望:手牌

{四五六六七八①②⑥⑥⑦23}

ツモ{4}

 

 そして数巡後、小瀬川白望が戒能良子よりも早く聴牌する。しかし、聴牌したとは言ってもそれはあくまで形だけである。待ちも悪ければドラもなく、このままでは打点が望めないこの手、まだ中盤に差し掛かったこの段階では手を確定するには惜しすぎる手であった。せめてあと二、三手挟んで{①②}の搭子を払って断么九、欲を言えば平和を狙って行きたいところだ。

 

(サスガにこれは、リーチには行かないでしょう……)

 

 後ろで見ていたメガン・ダヴァンも同じような事を考えていたようで、ここでのリーチは有り得ない。そう呼んでいた。

 が、しかし。小瀬川白望はそんなメガン・ダヴァンの思惑を真っ向から裏切る形で点箱から1000棒を取り出し、{⑦}と共に放り投げた。

 

 

「リーチ」

 

「!!」

 

 

小瀬川白望

打{横⑦}

 

(エエッ……?そこでリーチですカ?)

 

 

 メガン・ダヴァンは困惑しながらも小瀬川白望の事を見る。それもそうだ。待ちも悪く打点もイマイチのこの手でリーチをする意図が分からなかった。

 しかしメガン・ダヴァンは今までの小瀬川白望を見てきたが故に、ここでリーチをかけたのもきっと何かがある。そう思っていたが、その希望も数巡後に真っ向から裏切られる。

 

 

「……ツモ。ダブ東のみです」

 

 

 戒能良子のツモ和了によって。




これじゃあシロにピンチが到来しちゃう(棒読み)
シロは一体どうするのか……

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