宮守の神域   作:銀一色

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東京編です。


第203話 東京編 ⑥ 三拍子

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視点:神の視点

東二局 親:小瀬川白望 ドラ{⑥}

 

小瀬川白望 30200

辻垣内智葉 25000

ダヴァン  19800

鈴木    25000

 

 

 

(さア……この三巡の間。気を付けねばいけませんネ。危険ならオリも考慮しなけれバ)

 

 小瀬川白望が無意味、無謀とも言えるようなリーチを放って一巡が経ち、メガン・ダヴァンは山から牌をツモってくる。その牌は小瀬川白望の捨て牌にも存在している{北}。これはどう足掻いても小瀬川白望が和了ることのできない牌だ。当然ながら大明槓からの責任払いということもない。メガン・ダヴァンは安心しながら、ツモってきた{北}を捨てる。

 メガン・ダヴァンの言う通り、この局は小瀬川白望の親番だ。一番やっていけないのは小瀬川白望に振り込んでしまうこと。危険と感じれば聴牌を崩して決闘(デュエル)放棄という手もある。その場合、おそらくこの局は小瀬川白望がモノにするだろうが、振り込むよりかマシな選択だと言えるだろう。

 

(マア……次巡に危険牌を掴まなければ良い話なんですがネ)

 

 確かに、次巡ともう次巡でメガン・ダヴァンが危険牌を引かなければ、それでメガン・ダヴァンの勝ちなのだ。安牌をあと二回ツモるだけで、だ。

 最も、小瀬川白望に通っていない牌全てが小瀬川白望の和了牌ということではない為、よほど露骨な危険牌を引かない限りは安心といって過言ではないだろう。相手が小瀬川白望という事でそういった一般的な考えは無力にしか過ぎないのだが、今回はそれが良い方向に傾いた。

 

 

(メグにシロの和了牌を引かせるわけでもない……何を考えている?)

 

 そしてそれを横で見ていた辻垣内智葉は、未だ小瀬川白望のあのリーチのことについて考えていた。小瀬川白望がリーチをかけた以上、彼女に何らかの意味はあるのだろうが、それが未だにわからないでいた。

 

(……流石に、メグを降ろすためだけのリーチではないだろう。ノーテンであればメグにばれているはずだし、シロもメグにそういう察知能力があるという事に少なからず気付いているはずだ)

 

(勘違い、もしくはミスという事は無いだろう……となると、シロは和了れると確信していてのリーチという事になるが……メグから直撃を奪うわけでもなし……私と鈴木から直撃をとるといった感じでもなさそうだ……)

 

 自分のツモ番となった辻垣内智葉だが、今は自分の手牌の状態よりも小瀬川白望の事を考えていた。まあこの局、既に小瀬川白望かメガン・ダヴァンのどちらか一方が和了る事がほぼほぼ確定しているため、振り込み以外であれば自分の手牌の事などどうでも良かったから別に不注意というわけではなかったが。

 

(いや……待てよ?)

 

 そうして牌を切り、メガン・ダヴァンのツモ番となったまさにその時、辻垣内智葉に電流走る。

 

(仮に……仮にだ。シロがもしメグと同じ待ちであったならば……決闘(デュエル)が発動した時、シロが掴むのはメグの和了牌であり……自分の和了牌。つまりツモ和了だ)

 

 確かに、考えてみれば単純なことである。メガン・ダヴァンの和了牌を掴まされるのだから、メガン・ダヴァンと待ちを同じにしてしまえばいいという、単純な話。

 しかし、それをやってのけるのには神懸かり的な読み、メガン・ダヴァンと待ちを同じにできる牌をツモってくる運。そして、確実にメガン・ダヴァンと同じ待ちになっているであろうと確信する心。この三拍子が揃ってこその離れ業だ。考えついたとしても、それを実行できる人間などまずいないであろう。

 

(……勝負あり、だな)

 

 辻垣内智葉は場が一巡して、もう一度自分のツモ番になる。これが、この局最後にツモである。あとは小瀬川白望がメガン・ダヴァンの和了牌……もとい自分の和了牌を引いて終了。それでおしまいであった。

 そしてメガン・ダヴァンはそんな事考慮さえせず、自分がまたしても安牌を引いた事に喜んでいた。まあ彼女からしてみれば、これで自分が和了ったと確信したため、しょうがない喜びだろう。

 

 

(さあ……飛び込んでくるデスヨ……)

 

 そう意気込むメガン・ダヴァンだが、小瀬川白望はそれを鼻で笑って一蹴した。メガン・ダヴァンは何が可笑しいのかわからず、困惑していたが、自分の決闘(デュエル)に狂いは無いと確信しているため、気にしない。

 そう、確かに狂いは無いのだ。ここで決闘(デュエル)が誤作動するなど、メガン・ダヴァンは伊達では無い。ただしかし、今回は皮肉にもその百発百中の精度が仇となってしまったが。

 

「ロ……」

 

 メガン・ダヴァンは、小瀬川白望がツモってきた牌を自分の手牌の前に置いた瞬間、手牌を倒そうとする。勝った。撃ち抜いた。そうメガン・ダヴァンは確信していたが、その瞬間彼女の顔が真っ青になる。

 

「……ツモ」

 

 

(ハ……!?)

 

 

小瀬川白望:手牌

{二二三三四四⑤⑥⑦5667}

ツモ{6}

 

裏ドラ表示牌

{3}

 

 

「リーヅモ一盃口ドラ1。裏はのらずに満貫……」

 

 

 小瀬川白望は淡々と点数申告していく。しかし、和了られたメガン・ダヴァンは驚愕して、声も出ぬほどであった。

 

(ジャア、さっき手替りしたノモ……ワタシに待ちを合わせるためでスカ……!?)

 

 有り得ない。まずメガン・ダヴァンが思った事はそこであった。小瀬川白望が、自分と待ちを合わせてきて、決闘(デュエル)を逆手に取ったという事は分かった。というか、そうと仮定しないとリーチの事が説明つかなから、そうとしか考えられないのだが。

 だが、どうやって小瀬川白望が自分と同じ待ちだと確信できたのか。まず、どうやって自分の待ちを見抜けたのか。そこが説明のしようがなかった。

 

「……確かに、ダヴァンさんのその能力は強いよ。確かにこれはちゃんと能力を理解しないと、まともに戦う事すらままならない」

 

 そんなメガン・ダヴァンに向かって、小瀬川白望はそんな事を言ってくる。メガン・ダヴァンは何故だか、その小瀬川白望のその言葉が自分の今後を左右する大切なものであると感じた。故に、メガン・ダヴァンは黙って小瀬川白望の言葉を聞いていた。

 

「だけど、ダヴァンさんはその()()()()()()()()()()が普通だと錯覚している……だから私や智葉のような格上が相手だと、なす術がなくなってしまう……」

 

「ジャア……ワタシはどうすれバ……」

 

「簡単な話、その能力に依存しないようにすればいい。……だけど、それは厳しいかもしれないから、気付かれた後の対策を考える。それか、全く別の打ち方を身につけ、それを併用する。……ダヴァンさんがどうしようがダヴァンさんの勝手だけど……」

 

 

「今のままじゃ、私には勝てない。……それどころか、直撃すら取れないよ。今のままじゃ、ね」

 

 

 それを聞いたメガン・ダヴァンはハッとしたような表情で小瀬川白望の事を見ながら、「ハハハ……」と笑い、小瀬川白望に向かってこう言った。

 

 

「ナルホド……改めて思い知らされましタヨ。自分の現状を」

 

 

「……マア、ワタシに課題を与えた責任くらいは、とってもらうとしますカ……さあ、続けまショウ。ワタシが何かを発見できるまで続けまスヨ、サトハ!シロさん!」

 

 

 

 




次回も東京編。
これは確実にダヴァンさんの強化フラグが建ちましたね……

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