宮守の神域   作:銀一色

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東京編です。



第202話 東京編 ⑤ 愚行のリーチ

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視点:神の視点

東二局 親:小瀬川白望 ドラ{⑥}

 

小瀬川白望 30200

辻垣内智葉 25000

ダヴァン  19800

鈴木    25000

 

 

 

(……やはりメグでも足元にも及ばない、か)

 

 小瀬川白望の和了に驚きと恐怖を感じているメガン・ダヴァンを見て、辻垣内智葉はやはりといった感じで心の中で呟く。

 勝てる、などとは最初から辻垣内智葉は思ってなどいなかったが、メガン・ダヴァンの強さは辻垣内智葉がよく知っている。確かに、辻垣内智葉はメガン・ダヴァンの事を叩きのめしたものの、その叩きのめした辻垣内智葉自身も、メガン・ダヴァンはかなり強い位置にいると確信していた。辻垣内智葉はあまり認めたくはなかったが、あの強さなら日本でも十分に通用できるほど。

 しかし、小瀬川白望には足元にも及ばなかった。二……いや、せいぜい一局くらいなら小瀬川白望に和了らせずにメガン・ダヴァンが和了るかとも思ったが、それは小瀬川白望が許さなかった。

 

(それにしても……メグの決闘(デュエル)を一局も経たずに看破し、その上直撃を取ってみせるとはな。流石といったところか)

 

 辻垣内智葉は久々に小瀬川白望と闘ってみて、全国大会の時とは確実に強くなっている事に気づく。全国大会の決勝の時はオカルト持ちは殆どいなかったため、オカルトや能力には苦戦するかとも思ったが、それも今までの修行で完全に克服している。……そもそも、克服せずとも小瀬川白望なら十分勝てるかもしれないが。言うなれば鬼に金棒。確かに辻垣内智葉自身も全国大会の時よりは成長していると思っているが、そんな彼女でも今の小瀬川白望を止めるとなると確実に全国大会の時よりも難しくなっているだろうと思っている。ただでさえ全国大会の時止める事ができなかったのに、だ。

 

 

(……怖い、デス)

 

 そして小瀬川白望に直撃を取られ、精神的にも甚大なダメージを受けたメガン・ダヴァンは虚ろな目で配牌を取っていく。それも仕方のない事だろう。彼女は気にしていないようにも見えるが、前日に辻垣内智葉に負け、ただでさえショックを受けた状態で、またも決闘(デュエル)を攻略された挙句、それが辻垣内智葉より強く、その上で恐怖を直に叩きつけられたのだ。今メガン・ダヴァンが感じている以上に、彼女の心はボロボロであった。

 

(どうしたら……イッタイ……)

 

 メガン・ダヴァンは半ば錯乱しながらも、手を進めていく。心はボロボロだが、流れはどうやら好調らしく、今直ぐにでも逃げたい気持ちに反して、どんどん聴牌に近づいていく。

 

(聴牌……ですカ)

 

 

ダヴァン:手牌

{一二三四五六七八九④④27}

ツモ{5}

 

 

 一気通貫だけのノミ手ではあるが、兎にも角にも聴牌。嵌張の{6}待ちであった。取り敢えずダヴァンは{2}を切って、誰が聴牌しているかを確認する。

 

(小瀬川サンは……ノーテンですね)

 

 未だ誰も聴牌しておらず、自分だけが聴牌している状況であった。小瀬川白望も未だノーテンであるが、いつ聴牌してきてもおかしくない、ダヴァンはそんな気がしていた。

 

 

(……!きましタカ……)

 

 そしてその数巡後、小瀬川白望が聴牌した事を察知する。そしてダヴァンはある選択を強いられていた。それは小瀬川白望を相手に決闘(デュエル)を仕掛けるか否か。既にプライドやらメンタルやらはズタズタだが、それでも早々に諦めて尻尾を巻いて逃げる事だけはしたくなかった。

 

(……次巡、小瀬川サンが和了らなければ、決闘(デュエル)デス!)

 

 

 そうして牌を切る。僅かながらではあるが、先ほどまでの弱々しいメガン・ダヴァンではなくなった。ほんの少しだけ、闘志を再燃焼させていた。小瀬川白望もそれに気付いたようで、ツモった牌を見ながら思考を働かせる。

 

(智葉にはヘコませろとは言われたけど……一体どこまでやっていいんだろ……)

 

 小瀬川白望は、果たしてどこまでメガン・ダヴァンを潰しにかかっていいのか悩んでいた。確かにヘコませる事など造作もない事だが、それこそ二度と牌を触る事のできぬよう勝つ麻雀ではなく、100パーセント殺す麻雀でやっていいのか、どこまでやっていいかを智葉から聞かされていなかったのだ。

 流石の辻垣内智葉といえども、二度と牌を触る事のできないようにしろという意味で頼んだのではないのだろう。それはメガン・ダヴァンと辻垣内智葉とのやりとりや、先ほど小瀬川白望がメガン・ダヴァンと話した感じから容易に想像できる。が、逆にそれがかえって小瀬川白望を悩ませる要因でなかった。

 

(まあ……トラウマにならないレベルだろうな……加減するのは結構ダルいけど……これくらいなら大丈夫だよね……)

 

 そうして小瀬川白望は微笑みながら、ツモ牌を手牌へ入れる。聴牌したというのに手替りをするという光景を、小瀬川白望が聴牌しているという事を知るメガン・ダヴァンは驚いていた。

 しかし、小瀬川白望は気にもとめずに手牌から牌を切り飛ばす。しかも、それだけでない。小瀬川白望はなんと牌を横に曲げたのだ。メガン・ダヴァンと辻垣内智葉が驚くよりも先に、小瀬川白望は1000棒を投げ、宣言する。

 

「リーチ……」

 

 

(ば、馬鹿な……!?)

 

 

(リ、リーチですカ……!?)

 

 

 辻垣内智葉はリーチ宣言をした小瀬川白望の事を見て、驚愕する。それもそうだ。メガン・ダヴァンの決闘(デュエル)を知っている者なら、絶対にやってはいけない行為であるからだ。

 

(どういう意図がある……?まさかシロがメグの決闘(デュエル)を誤って解釈したわけでもなかろう……)

 

 

(……これはチャンス、なんですカネ)

 

 そして一方のメガン・ダヴァンは、驚きながらもこれをチャンスとし、小瀬川白望にもう一度決闘(デュエル)を仕掛ける。そこには、もう一度前局の時がまた起こるのではないかという恐れはなかった。

 

(……決闘(デュエル)ッ!)

 

 その瞬間、誰しもがメガン・ダヴァンの和了を予見した。三巡後にメガン・ダヴァンの和了牌を掴んだ小瀬川白望が振り込み、それで小瀬川白望の親が蹴られる。そう思われていた。流石にいくら小瀬川白望であれど、このままリーチをかけた状態で三巡が過ぎてしまえばメガン・ダヴァンの和了牌を掴むだろうし、振り込むであろう。

 しかし、小瀬川白望は違った。小瀬川白望だけは、違う未来を予想していた。

 

(……後、三巡だね)

 

 

 




次回も東京編。
果たしてシロの考えとは……?

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