宮守の神域   作:銀一色

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東京編です。
ダヴァンさん終了のお知らせ


第201話 東京編 ④ イメージ

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視点:神の視点

東一局 親:鈴木 ドラ{二}

 

小瀬川白望 25000

辻垣内智葉 25000

ダヴァン  25000

鈴木    25000

 

 

(決闘(デュエル)!!)

 

 メガン・ダヴァンは目を閉じて、ガンマンとなった自分を想像する。彼女の想像内では、今彼女は同じくガンマンの格好をしている小瀬川白望と背中合わせの状態となっていた。

 

(本来ならリーチをかけてきてくれれば一発なんですけド……まあ、贅沢は言ってられないですネ)

 

 彼女が小瀬川白望がリーチをかけてきてくれれば良かったと思っている理由は、彼女の決闘(デュエル)という能力の秘密にある。彼女の能力は、簡単に言ってしまえば自分と相手が聴牌している時、彼女が任意で能力を発動させて、三巡後に相手に自分の和了牌を掴ませるというものであった。無論、振り込ませる能力ではないため、掴ませたところで相手が切らずに回せば、彼女の能力は意味がなくなる。だから彼女は小瀬川白望がリーチをしてきて欲しかったのだ。そうすれば確実に小瀬川白望が振り込んでくれるからだ。

 

(あと二巡、でスネ)

 

 

 まあ、そんなに事がうまく進むはずもなく、結局メガン・ダヴァンは小瀬川白望が自主的に振り込んでくれるのを待つしかなかった。が、それでも尚メガン・ダヴァンは余裕の表情をしていた。

 

(まあ……仮に振り込んでくれなかったとしテモ、結局のところ小瀬川サンはオリなければいけなイ……サトハもオリのこの状況、直撃がツモになるだけですヨ……)

 

 そう、簡単な話小瀬川白望があと二巡後にメガン・ダヴァンの和了牌を掴むのだから、そうすれば小瀬川白望はあとはメガン・ダヴァンに振り込むか、聴牌を崩すかの二つの選択肢しかない。だからこそ、小瀬川白望がたとえ振り込まなかったとしても、メガン・ダヴァンの優位は揺るがないものであるのだ。少なくとも、メガン・ダヴァンはそう考えていた。

 

(さあ、あと一巡ですヨ……)

 

 メガン・ダヴァンは自身のイメージ内で、機関銃のようなものを構える準備をする。小瀬川白望と背中合わせになって互いに一歩ずつ離れていって、今が二歩目。三歩目になればメガン・ダヴァンと小瀬川白望の銃撃戦が始まる。メガン・ダヴァンはその時を待ち望んでいた。そうしてメガン・ダヴァンのツモ番となり、あとは小瀬川白望が彼女の和了牌を掴むだけ。そう思ってツモ牌を切り飛ばした直後であった。

 

(……ッ!?)

 

 突如、メガン・ダヴァンの背中に謎の悪寒が走った。メガン・ダヴァンは驚きながら、小瀬川白望の方を見る。それと同時に、イメージ内でも三歩目を踏み出そうとした直前で小瀬川白望がいるはずの反対側を振り返った。

 

(な、なんですかコレ……?)

 

 振り返って小瀬川白望の事を見ると、小瀬川白望の格好はガンマンのような格好ではなく、ただ普通の格好をしていた。それに、それだけではない。決闘(デュエル)直後には持っていたはずの銃すら、小瀬川白望は身につけていなかった。彼女の経験上、イメージ上で相手が途端に普通の格好になった時は決まって相手がオリた時である。それはメガン・ダヴァン自身も分かっていた。

 しかし、今は違う。小瀬川白望はオリてなどいないし、何より今のツモ番はメガン・ダヴァンであったはずだ。今小瀬川白望がオリるということは有り得ない。そして何よりメガン・ダヴァンが驚き、慄いていた理由は、小瀬川白望がただただ不気味であったからである。

 

(な……)

 

 そうして慄いていると、イメージ上での小瀬川白望は、普通の格好をしていて何の異常もないはずの小瀬川白望は、ゆっくりとメガン・ダヴァンの元へと歩き始めた。ゆっくり、ゆっくりと。しかし、メガン・ダヴァンからして見れば、不気味と言わざるを得なかった。まるで、死んだはずの人間を見ているような、未知という名の恐怖にメガン・ダヴァンは震えていた。思わずメガン・ダヴァンは、自分の能力のイメージであるというのにルールを無視して、三歩など関係無しに小瀬川白望に向かって発砲する。しかし、小瀬川白望は自分が発砲されているのに気付いていないかのように、メガン・ダヴァンに向かって前進していく。メガン・ダヴァンの手が震えているのか、それとも小瀬川白望が間一髪で避けているのか、そもそも彼女の能力のイメージ内であるため、当たらないようになっているのか。一体何が原因なのかはわからないが、そんな事御構い無しといった感じで小瀬川白望は着々とメガン・ダヴァンとの距離を詰めていった。

 

(や、ヤバいでス……此処にいたら殺られル!)

 

 銃が不発に終わったメガン・ダヴァンが次に取った策は逃走。さっきまでの威勢や、自信を全てかなぐり捨てて脇目も振らずに逃げ出した。全速力で、メガン・ダヴァンは逃げて行く。だが、

 

 

(……!?)

 

「……」

 

 メガン・ダヴァンが逃げた先にも、小瀬川白望は立っていた。何故、どうして。メガン・ダヴァンがそんな事を疑問に思いよりも先に、小瀬川白望に完全に間合いを詰めらていた。

 彼女のイメージ内の小瀬川白望はゆっくりと右腕をメガン・ダヴァンに向ける。その瞬間、小瀬川白望の背後から途轍もない勢いで闇のような真っ黒な何かが噴出する。メガン・ダヴァンが何かを思う前に、その闇はメガン・ダヴァンに向かって振り下ろされた。

 

 

 

 

「ロン……ッ!」

 

 

(……ハッ!?)

 

 

 その瞬間、イメージ内の世界が突然遮断され、現実へと引き戻される。現実に戻されたメガン・ダヴァンがまず先に目にしたのは、自分がツモ切った牌によって小瀬川白望が手牌を倒しているところであった。小瀬川白望は「タンヤオドラ2……5200」と点数申告をする。それを聞いたメガン・ダヴァンは、状況の整理が追いついていないものの、「ハ、ハイ……」と言って小瀬川白望に点棒を渡す。

 

(さっきは……一体?)

 

 そうして点棒を渡し終えたメガン・ダヴァンは、さっきの事を振り返る。確かに自分の決闘(デュエル)を、発動してから三巡以内でカタをつけるという単純だが、三巡というチャンスの少なさを考えればかなり難しい攻略法。これをやってのけたのも十分に驚くべき事だ。しかし、それが問題ではなかった。さっきの攻略法も、小瀬川白望が初めてというわけではないし、現にメガン・ダヴァンは辻垣内智葉にその攻略法を使われてバッサリ一刀両断された。しかし、小瀬川白望はどうだろうか。イメージ内での話ではあるが、辻垣内智葉もあそこまで不気味な感じにはならなかった。一体、小瀬川白望には何があるというのか。そして、おそらくメガン・ダヴァンは麻雀の中で初めて恐怖を知ることとなった。さっきまでは平然といられたのに、今ではもう小瀬川白望の事を直視する事すら叶わない。メガン・ダヴァン自身、何度か決闘(デュエル)を破られて撃ち抜かれたり、斬られたりなどをイメージ上でされてきたが、あそこまで恐怖を感じた事はなかった。イメージ上での話だというのに、初めてメガン・ダヴァンは『死にたくない』と感じてしまった。

 

「……」

 

 そして、未だにどうしたらいいのか分からずに困惑しているメガン・ダヴァンを小瀬川白望は見て、微笑する。メガン・ダヴァンは恐る恐る小瀬川白望の事を見ると、小瀬川白望はメガン・ダヴァンに向かってこう言った。

 

 

「……今のでダヴァンさんの能力は大体わかった。確かに強力な能力だけれど、その(脅し)じゃ私は縛れない。それに、突破口も沢山ある。今の殺られる前に殺る方法も、数多くある内の一つにしか過ぎない。……まあ、一つだけアドバイスをあげるよ」

 

「『死にたくない』。こう思っているようじゃあ、私は殺せない……」

 

 




次回も東京編。
ダヴァンさんのライフはもうゼロ……

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