宮守の神域   作:銀一色

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東京編です。
どんどんフラグが建築されていく……


第199話 東京編 ② 虚無

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視点:神の視点

 

「ウーン……サトハ、グッドモーニングでス」

 

 まだ夜が明け切らない頃、メガン・ダヴァンは布団から体を起こし、既に起きて着替え終わっている辻垣内智葉に向かって挨拶をする。辻垣内智葉は「おう、メグ……おはよう。まだ時間はあるから、寝ててもいいぞ?」とメガン・ダヴァンに返す。しかし、メガン・ダヴァンは首を横に振って拒否する。

 

「いやア……もう目が覚めてしまったのデ。顔を洗ってくるので、洗面所を貸して貰えますカ?」

 

「ああ、別に構わんぞ」

 

 メガン・ダヴァンはああ言ったものの、眠いようで欠伸をしながら部屋を出て行く。メガン・ダヴァンなりに気を使ったのだろうか。そんな事をしなくても別に良いのに。まあ、その分早く部屋の片付けを始められることが出来て嬉しいのだが。そんな事を辻垣内智葉は思いながら、部屋の片付けを始めていく。

 小瀬川白望が来るまで、あと数時間といったところ。正直な話、まだ時間はあるのでそんなに辻垣内智葉が急ぐ必要はないのだが、あの小瀬川白望が来るということで、変に力が入っていた。それは辻垣内智葉の家にいる黒服もそうで、朝から大忙しであった。床や部屋の清掃、昼食と夕食の食材の買い出し、麻雀卓の準備、小瀬川白望を迎えに行くための車の配備など、黒服が総動員されていた。

 

「失礼します、メガン・ダヴァン様」

 

「あ、ハイ……」

 

 そして黒服が雑巾で床を磨いているのを見ながら、メガン・ダヴァンは辻垣内智葉の部屋に向かう。この時、メガン・ダヴァンはこんな事を思っていた。

 

(サトハって一体何者なんですかネ……家も途轍もなくビッグでしたし……)

 

(ハッ……!これが、いわゆるジャパンマフィアというヤツですカ!オトシマエですカ!)

 

 そう考え、メガン・ダヴァンは辻垣内智葉に直接聞いてみた。メガン・ダヴァンは俗に言うヤクザに対してとても興味を示しているが、辻垣内智葉はそれを否定もしないし肯定もしない。まあ、知らぬが仏というヤツだ。とメガン・ダヴァンに告げて、「取り敢えず、着替えてこい」と促す。メガン・ダヴァンは右手で敬礼をして「イエッサーです!ボス!」と言い、別の部屋で着替えを始めた。

 そんなメガン・ダヴァンを辻垣内智葉は若干呆れたとうな表情をしながら、(……別に知られたからといって消すわけにもいかないが、知られても面倒だしな。適当にあしらっておいて正解か)と心の中で思った。

 

 

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「よし、行くぞ。メグ」

 

 

 そうして1時間後、小瀬川白望をもてなす黒服たちの用意と、辻垣内智葉とメガン・ダヴァンの準備が終わり、二人は黒服に連れられて小瀬川白望を迎えに行く。そうして車の中に入ると、メガン・ダヴァンは辻垣内智葉に向かってこう言った。

 

「いやア……小瀬川サン、でしたっけ?どんな人なのか今から楽しみですヨ」

 

「そうか……まあ、昨日も言った通りあんまり奴を侮るなよ?」

 

「ハハハ!ったりめえじゃんデス!サトハには悪いですケド、全力をもって叩き潰してやるですヨ!」

 

 それを聞いた辻垣内智葉は微笑しながらも、メガン・ダヴァンに聞こえない程度の小さな声で「潰されるのはどちらかな……」と呟いた。

 

「ン?何か言いましたカ?サトハ」

 

「……いや、何でもない。気のせいだ」

 

 そしてその後はメガン・ダヴァンのアメリカでの生活のことや、逆に辻垣内智葉の生活の事を話しながら、集合場所へと向かっていった。

 二人が出発してから20分後、黒服は辻垣内智葉とメガン・ダヴァンに向かって「お嬢、メガン・ダヴァン様。そろそろ到着でございます」と告げる。

 そして車が集合場所手前で停車すると、辻垣内智葉とメガン・ダヴァンは車から降り、小瀬川白望が来ている手筈のところまで歩いていく。少しほど歩くと、白い髪の毛の女の子が立っていた。その人は、辻垣内智葉がよく知る、紛れもなく小瀬川白望であった。

 

「シロ」

 

 辻垣内智葉が小瀬川白望の事を呼ぶと、小瀬川白望は振り返って辻垣内智葉の事を見る。目が合った辻垣内智葉は少し顔を赤くしていたが、平静を装いながら「久しぶりだな。こうして直で会うのはいつ振りだ?」と言う。

 

「うーん……夏休み以来?」

 

「まあ、元気そうで何よりだ」

 

 辻垣内智葉と小瀬川白望がそんな会話をしている最中、メガン・ダヴァンはそんな小瀬川白望の事をマジマジと見ていた。

 

(……あんまり強そうに見えないのは気のせいでショウカ)

 

 正直な話メガン・ダヴァンは、小瀬川白望はそれほど強そうには見えなかった。それはあくまでも見かけ上のものだけであり、実際にオーラや風格を感じ取ったわけではないのだが。

 

(まあ……所詮はニッポン人。サトハのようなイレギュラーでない限り、ワタシでも十分戦えるはずデス……)

 

 メガン・ダヴァン曰く、本当に強いのであれば何もしなくても強者のオーラ、風格が滲み出ているはず。それがない小瀬川白望は恐るるに足らず。そう考えていた。

 しかし、ここでメガン・ダヴァンは見誤っていた。小瀬川白望のオーラが放たれていないのではなく、そのオーラが闇のように冷たく、まるで虚無の様であったが故にメガン・ダヴァンが感じ取れていないだけということに。無論、この見誤りが後のメガン・ダヴァンの首を締めることになるのは、言うまでもない。……まあ、ここで見誤らずとも結果は変わらなかったかもしれないが。

 

「ああそうだ、紹介しよう。こいつがメガン・ダヴァンだ」

 

「よろしくお願いしマス」

 

 

 そう言ってメガン・ダヴァンは右手を差し出す。すると小瀬川白望も右手を差し出し、握手をすると、それと同時にメガン・ダヴァンはニヤッと笑った。

 

(……ふーん)

 

 そう、小瀬川白望がメガン・ダヴァンの右手を握った瞬間、彼女は小瀬川白望に向けて自身のオーラを放ち、一瞬だけ威嚇したのだ。メガン・ダヴァンからしてみれば驚かそうと本気でやったのだが、これの何倍も大きい威圧感を経験してきている小瀬川白望にとって、この程度では動揺の「ど」の字もなかった。

 

(……アレ、これで平然にいられるんですカ……?)

 

 無表情のままメガン・ダヴァンの右手を握る小瀬川白望の事を見ながら、彼女は小瀬川白望の事を不審に思う。いくらちょっと驚かそうとしたとはいえ、本気で威嚇したはずだ。しかし、メガン・ダヴァンは(まあ……これくらいでビビってもらってはこっちとしても困りますからネ……)と前向きに捉え、握手を止める。

 そんな二人を見ていた辻垣内智葉は、(……早速仕掛けていったが、当然ながら不発に終わったか……)と思いながら、二人に向かってこう言った。

 

「まあ、話はここでなくても車内や家の中でもできる。取り敢えず戻るぞ」

 

「……そうだね。智葉」

 

「了解デス。じゃあ行きましょうカ、小瀬川サン」

 

 

(……ダヴァンさん、だっけ。少しは楽しめそうかな……)

 

(白望サン……精々ワタシを楽しませてくれると嬉しいデスネ……)

 

 

 二人の思いが交錯しながらも、辻垣内智葉含む三人は辻垣内智葉の家へと車で移動した。

 




次回も東京編。
ダヴァンさん終了のお知らせ。

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