宮守の神域   作:銀一色

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鹿児島編です。


第195話 鹿児島編 ㉑ 手伝う

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視点:小瀬川白望

 

 

「もうお蕎麦茹で上がったですよー」

 

 

 霞が巫女服を着てから、皆のところへとやってきた私と霞を、先に椅子に座って盛られた蕎麦を前にしている初美と春と小薪が待っていた。仕方ないとはいえ、遅れてきた私と霞は少しほど急いで皆のところへと行く。

 

「あ、あのっ!」

 

「ん……?」

 

 席に座ろうとすると、さきほどまで寝ていたのか眠そうにしていた小薪が私に声をかけてくる。何事かと思った私は小薪の言う事を聞くと、「さっきは途中で寝てしまってすみませんでした……そして、私を運んでくれてありがとうございます!」と小薪は言って私に向かってお辞儀をする。私はそんな小薪に対して、「別にいいよ。十分楽しめたし……」と返す。すると小薪は嬉しそうな顔をして、「それは良かったです」と言う。

 そうして、取り敢えず適当な席に座ろうとした私は意外にも春の手によって止められる。腕を春に掴まれた私は、「……なに」と春に聞くと、「隣に座って……」と腕を掴みながら私に向かって言う。そしてそれを聞いた瞬間霞と初美が吹き出した。

 

「ゴホッ……ゴホッ……!なにを言ってるんですかはるるはー!」

 

 若干噎せた初美は驚きながら春に向かって言う。私以上に驚いているのもおかしな事だったが、まあ急に言われれば驚くであろう。事実私も突然言われて驚いている。

 

「わ、私も白望さんのお隣に座らせて下さい!」

 

 そして春が掴んだ反対の方の腕を、小薪が掴んでそう言う。またも初美と霞は驚いているようで、私の見間違いかどうかは分からなかったが、霞の腕がワナワナと震えていたような気がした。

 

「姫様も、あんまり無理な事を言うんじゃないですよー……」

 

 初美も私の事を気遣ってくれているのか、小薪と春に止めるよう促す。……まあ実際、別にそれでもいいのだが。

 

「……いくら年上でも、これは譲れない」

 

「んなっ!?」

 

 そういったことを思っていると、いつの間にか初美と春との言い争いが始まっていた。いくら初美の方が年上で、尚且つ今回は完全に初美の方が正しいと言っても、端から見れば完全に駄々を捏ねる子供とお姉さんにしか見えない。これを言ってしまっては失礼だろうからあえて言わないでおくが。

 

「べ……別にいいわよっ」

 

 するとそこで霞が、拗ねたようにして椅子に腰掛ける。……なにがあったのかは分からないが、後で霞に謝っておこうと心の中で思った瞬間であった。それを聞いた春は勝ち誇ったような表情を浮かべて私の腕を掴み、「本当は二人っきりがいいんだけど……我慢する」と私に向かって言う。歓迎されるのは嬉しいが、ここまでくると宇夫方さんと似た系統の若干の面倒さを感じるのは私の偏見なのだろうか……

 

「じゃあ、ここに座るよ」

 

 そう言って私は春と小薪の間の席に腰掛ける。そうして全員が揃い、「いただきます」という声と共に蕎麦を食べ始めた。

 

(ん……美味しい)

 

 普段蕎麦を食べないからなのか、それともここの蕎麦が特別良いのかは分からないが、とても美味しい。これなら蕎麦だけでもいくらでも食べれそうだというレベルだ。

 そうして蕎麦を食べる事に夢中になる事数分後、あっという間に私は蕎麦を平らげてしまった。岩手に帰ったらもう一度蕎麦を食べようかな、と心の中で決心して、「ごちそうさま」と言って夕食を終える。

 

「はあ……白望さん。すみませんねほんと……」

 

 そしてテーブルを拭く巴が、私に向かってそう言った。まあ、別にそんな気にもしてないし、全くもってダルくなかったとは言い切れはしないが、全然許容範囲内であった。

 

「全然大丈夫……それこそ、巴の方が大変なんじゃない?」

 

 私は巴に向かってそう言うと、巴は少し恥ずかしそうにして「いや……そんな事ないですよ」と言う。私から見た巴は、同じ赤髪の塞と同じようなお母さん的ポジションであるため、あの反応を見るにやはり何かと苦労しているようだろう。

 

(……ちゃんと塞も労ってあげないとな)

 

 そしてそんな事を思っていると同時に、その塞に色々と迷惑をかけたなあと思った私は帰ったら塞を労おうと心の中で決める。岩手に帰ってからやろうと心に決めた物事が若干多いような気もするが、そこはまあ帰ってからという事で……

 

「……手伝おうか?」

 

 取り敢えず、私は今目の前で頑張っている巴を手伝おうと巴にそう言うが、「お客様にそんなことやらせれません」と拒否されてしまう。が、ここで素直に退くほど私も軟弱者ではない。私は巴の肩を掴むと、「良いから……二人でやればその分早く終わる……」と言った。対する巴は口をパクパクとさせていたが、黙秘は容認とみなすとよく言うので、私も容認したという解釈でテーブルを拭くのを手伝う。

 そうして食器洗いなども一通り手伝った私は、久々の家事に疲れて背筋を伸ばしていると、顔を赤くした巴が「あ、ありがとう……ございます」と言ってくる。私はそんな巴に「全然いいよ。むしろ、巴と一緒にできてよかった」と若干の御世辞も交えて言うと、巴は壊れたロボットのように立ち尽くして我ここにあらずといった表情となっていた。あれ、なにか変な事言ったっけかなと思いながらも、私は巴の背中を押して私の荷物が置いてあった部屋へと移動する。特に何もなければ、後は寝室を一室借りて寝るだけなのだが、そういえばまだ巴と春、小薪はお風呂に入ってないんだっけか。まあ、先に寝させてもらおうと思いながら、部屋へと向かった私と巴であった。




シロ……流石としか言いようがない……

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