宮守の神域   作:銀一色

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鹿児島編です。
霞さんかわいい(唐突)
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第194話 鹿児島編 ⑳ 逆上せ

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視点:石戸霞

 

 

 

「ん、霞……」

 

 

 初美ちゃんに背中を押されるようにして白望ちゃんのところへやってきた私は、此方を振り向いて私の事を見てくる白望ちゃんに少し顔を赤くさせながらも、あくまで冷静を保っているように振る舞う。

 

「隣、いいかしら?」

 

「別に……いいけど」

 

 白望ちゃんの了承を得た私は、白望ちゃんが入っている隣に自分の体を入れる。白望ちゃんとの身体の距離が縮まるほど、私の心臓がバクバクしてきているのが分かる。顔が真っ赤に火照ってるのが分かる。そして今とても緊張していることと合わさってか、もはやお風呂のお湯の温度どころではなかった。

 

(さっきまではまだそんなにでもなかったのに……)

 

 さっきまでは気軽に……いや、気軽に言う事ではないのだが裸になれだのお風呂に入ろうだのそんなに緊張していた事ではなかったのだが、ここにきて物凄く緊張してきている。さっき裸で抱き合っていたなど考えられないほど、私の見方というか感覚というか考え方というか、それら全てが変わってしまったのだ。

 

(初美ちゃんにとんでもない爆弾を抱えさせられたわね……)

 

 正直、緊張と恥ずかしさが相まって今からでもここから立ち去りたい気分なのだが、入ってすぐに出るのも不審に思われるし、かといって白望ちゃんと何を話せばいいのかも分からないので無言となっているこの状況はとても過ごし難いものである。

 結局私から白望ちゃんに声をかける事はできず、また、白望ちゃんからも私に声をかけることなく、ただ時間だけが過ぎていく。

 

(……まだ大丈夫なのかしら)

 

 そうして互いに無言のまま10分以上が経ち、私はそろそろ逆上せかけてきたところで隣にいる白望ちゃんの事を見るが、彼女はまだまだ大丈夫そうだと言わんばかりに平然としている。正直、此方はそろそろ限界が近づいてきたので、上がりたい気持ちでいっぱいなのだが、何故か白望ちゃんと一緒に上がりたいという謎の意思が働いているため、意地になってでも出ようとはしなかった。

 

 

(ま、まだ……?)

 

 そこから更に数分が経ち、お風呂に入る前から赤く染まっていた事を考えても、私の顔は茹で蛸のように異常なほど真っ赤になっていた。未だに白望ちゃんは平然な顔をしているし、上がろうとする気配はなさそうだ。ここでやめておけばいいものの、一度やりだしてしまった以上やり通さなければという変な意地があるので、止めるに止めれない。

 とはいっても、心の中では白望ちゃんに対して早く上がってくれと念じているのだが。そんな念が通じたのか、白望ちゃんは私の方を向いて、話しかけてきてくれた。

 

 

「ねえ、霞」

 

「な……何かしら?」

 

 私はてっきりそろそろお風呂から上がろうと言ってくれるものだと思い、立ち上がる気満々であったのだ。しかし、白望ちゃんは私の(勝手な)希望を裏切り、私に顔を寄せてこんな事を聞いていた。

 

「私はさ、霞に呼び捨てでいいって言われたから呼び捨てで呼んでるけど……霞は私の事呼び捨てで呼ばないんだ?」

 

(顔……近い///)

 

 眼前に白望ちゃんの顔があるお陰で、ただでさえ熱い私の顔が更に加熱されていくのを感じる。白望ちゃんにあんな事を聞かれたが、正直耳に全く入ってこなかった。

 

(あ……)

 

 そしてそれと同時に私の身体に限界がきたのか、私はあまりの身体の熱さによって気を失ってしまった。

 

 

 

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視点:石戸霞

 

 

「……ん」

 

 

 目が醒めると、私は布団の上で寝転がされていた。あれからどれくらい気を失っていたのかはわからないが、私の横で白望ちゃんが心配そうに私の事を見てくれてると気付いた私は、時間は分からずとも、白望ちゃんに迷惑をかけてしまった事には変わりなかった。

 

「霞……大丈夫?」

 

「え、ええ……ごめんなさいね。白望ちゃんが運んできてくれたの……?」

 

「まあ……そうだけど」

 

 白望ちゃんはそう言って私に冷水が注がれてあるコップを私に手渡す。私はそれを受け取って冷水を飲んでいると、白望ちゃんが「それでさ」と私に向かって言ってくる。

 

「結局、私の事は呼び捨てで呼ばないの?……まあ、別にいいんだけどさ」

 

「そ、そうね……」

 

 一体どういう意図があってそう言ってるのかなど、私には分からなかった。表情を伺っても、何を考えていて、何を思っているかなど、まるで悟らせないような表情を浮かべているようだった。

 結局、謎の白望ちゃんの圧力に押されて、私は呼び捨てで呼ぶ事となった。

 

「シ、シロ……。こっ、これで十分かしら?」

 

 それを聞いたシロはふふっと微笑むと、「それでいいよ。霞」と言う。僅かな微笑みだったが、それでも私の心を射止めるには十分すぎるものであった。私は顔を逸らして、枕に顔を埋めるようにして恥ずかしさによって顔が赤くなっていることがバレないように必死に隠す。しかし、どうみても怪しかったのは言うまでもない。

 

「霞さん」

 

 そんな状況で私に助け舟が降りたのか、襖を開けて巴ちゃんがやってきた。私の事を若干呆れたような目で見ると、溜息をついて私にこう言ってきた。

 

「白望さんに感謝して下さいよ。霞さんを運んできてくれたの、白望さんなんですから」

 

「白望ちゃ……シロ、すまなかったわね」

 

「いや……別に」

 

「全く、一応白望さんもお客様なんですから、迷惑をかけるような事はしないで下さいね」

 

 かつて巴ちゃんが私にそんな事を言ったことがあっただろうか。どこか悔しいなと思いながらも、「ごめんなさいね。次からは気をつけるわ」と巴ちゃんに向かって言った。

 

「もう夕食出来上がってるんで、あとは霞さん待ちですよ」

 

「あらあら、悪いことしたわね」

 

 そう言って布団から出て、立ち上がろうとすると、何故か私の裸体が見えた。いくら巫女服が着方によっては露出が高い服とはいえ、こんなにも裸体が見える事はあるはずがない。どうしたものかともう一度私の体をよく見ると、私は巫女服どころか一糸まとわぬ姿であった。まあ、お風呂場で倒れて運ばれてきたのだから当然といえば当然なのだが、突然のことで時が止まっていた私は数秒間真っ裸のままで立ち尽くしていた。それを見かねた巴ちゃんが、咳払いをした後、私の近くに置いてあった巫女服を持って私にこう言った。

 

「……早く服を着てください」

 

 私はそれを受け取って巫女服を着ようとすると、横にいるシロが顔を逸らしている事に気がついた。そしてうっすらではあるが、顔が赤くなっていた。私はシロにも羞恥があるんだという事を思いながら、服を着た。




次回も鹿児島編。
シロにも羞恥はあるんだよなあ……

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