宮守の神域   作:銀一色

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麻雀回です。
初美ちゃん涙目……


第183話 鹿児島編 ⑨ 驕り

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視点:神の視点

東一局 親:小瀬川白望 ドラ{①}

 

小瀬川白望 25000

石戸霞   25000

神代小薪  25000

薄墨初美  25000

 

五巡目

薄墨初美:手牌

{二五六九①③⑧33北} {東東東横東}

ツモ{北}

 

(さあ、来ましたですよー!)

 

打{九}

 

 小瀬川白望が薄墨初美の『裏鬼門』の正体の核心に大きく迫った直後、薄墨初美は実質最後のキー牌の{北}を引いてくる。後はこの対子となった{北}を鳴くだけである。たったそれだけで四喜和聴牌が出来るのだ。もうキー牌を持ってくる必要も、何かしらの準備も必要ない。ただ捨てられた{北}を鳴くだけ。晒すだけでいいのだ。たったそれだけの単純作業。……しかし、その単純作業を薄墨初美がすることはほぼほぼ有り得ないのだ。

 

小瀬川白望:手牌

{一二三四五六七八九⑥⑧中中}

ツモ{北}

 

 

(……北か)

 

 そう、肝心の小瀬川白望が字牌を切ってこない以上、薄墨初美が鳴ける可能性は神代小薪のヒューマンエラー以外ありえないのだ。危険視していた字牌の{北}を引いたので、当然小瀬川白望は字牌を切らずに{⑧}切り。この一気通貫の聴牌を崩し、{北}を抱える。薄墨初美の理想と現実とのこのギャップ。これが致命的……薄墨初美の侮りであった。まだ小瀬川白望には気付かれないであろうという驕りが、自分の首を絞める形となった。

 

 そして聴牌を崩した小瀬川白望は二巡後、すぐに{中}を引いてきて張り直す。しかもさっきまでは一気通貫のみであったのに、張り直した後の方が打点が高くなる中混一色一気通貫の跳満手となった。

 小瀬川白望はここはリーチを掛けず、ダマで聴牌する。薄墨初美に警戒心を与えずに素の状態を見るためだ。

 

 

 そして小瀬川白望が聴牌してから数巡、場は膠着しており、小瀬川白望はまだ和了牌をツモってこれず……まあ、ツモってきたとしても見送るであろうが。石戸霞はオリ、神代小薪は未だ{北}を掴んでないため手を進めていた。

 

(むー……なかなか白望ちゃんから北が切られないですよー……もしや霞ちゃんか姫様が抱えてるのかも……?)

 

 薄墨初美はなかなか{北}を鳴けずにうずうずしていたが、そう考えていた直後の薄墨初美は{北}。これで{北}が暗刻となった。

 無論、鳴かなければいけないため{北}が暗刻になったところで意味はない。兎にも角にも{北}を晒さなければいけないのだ。通常なら、ここで最後の一枚を待って暗槓して『裏鬼門』を発動させるのがセオリー通りなのだが、ここで薄墨初美にある思惑が過った。

 

(ここは霞ちゃんか姫様が抱えていると仮定すると……)

 

 薄墨初美はニイッと口角を吊り上げて手牌から牌を切り出す。その牌は{北}。そう、このセオリーを無視した打ちまわし、薄墨初美にはある考えがあった。

 

(霞ちゃんは分かりませんけど……姫様が抱えていたら私の北切りを見れば溢れる可能性は大いにありますよー!)

 

 そう、これは{北}を安牌と思い込ませる一種のブラフ。無論、このブラフ、筋は通っている。確かにこの状況で{北}が切られれば薄墨初美が『裏鬼門』を諦めたのかと思う可能性はある。それが初心者の神代小薪なら尚更である。

 しかし、薄墨初美は見誤っていた。まず、{北}を抱えているのは神代小薪でもなく、石戸霞でもなく、小瀬川白望であるという点。そして、薄墨初美は自分の手牌と{北}の行方しか気にしていなかったため、小瀬川白望が聴牌している事など考慮すらしていなかった点。

 

「ロン」

 

 

「えっ……?」

 

 

小瀬川白望:和了形

{一二三四五六七八九北中中中}

 

 

「跳満……18000」

 

 

(そっ、そんな馬鹿なですよー!?)

 

 薄墨初美は思わず小瀬川白望の手牌を二度見してしまう。そう、小瀬川白望がロンと言っていたのにも関わらず自分の幻覚かと疑ってしまうほど、薄墨初美にとってそれは衝撃的なものだった。この{北}単騎待ち、明らかに偶然そうなったわけではない。確実に{北}を危険と見て手牌に抱えていたと知り、薄墨初美は驚愕する。

 

(という事はこの人……一局で見抜いたんですかー!?)

 

 有り得ない。二回や三回目ならともかく、まさか初見で自分の『裏鬼門』を攻略されるとは思ってもいなかった。確かに、薄墨初美自身少し怪しまれそうな行動は取っていた。早々の{東}大明槓がそうだ。しかし、そうだとしても情報が少なすぎる。どうして{北}が危険という結論に至ったのか、薄墨初美は理解できなかった。

 

(でも……まだこれで終わりではないですよー!)

 

 しかし、薄墨初美はまだ折れない。確かに小瀬川白望には見抜かれたが、見抜かれただけで完封できるものではない。何なら{東と北}どちらも暗槓してしまえばそれで発動できるのだ。鳴くことができずともそれで大丈夫だ。

 そして何より、和了った小瀬川白望は親。つまり、連荘でまた薄墨初美が北家となるのだ。『裏鬼門』チャンスの回数は変わらず、未だ二回残っているのだ。

 

(18000の支払いは痛いですけど……32000を和了ればチャラどころかお釣りが貰えますよー)

 

 そう薄墨初美はポジティブシンキングで前向きに考え始めるが、それは横にいる神代小薪の発言によって遮られてしまう。

 

「あれ……」

 

(ひ、姫様……!?)

 

「終わってる……」

 

 いきなり我に返ったかのような反応を見せる神代小薪に対し、小瀬川白望は「……どうしたの」と一声かけた。

 

「……すみません……少し寝てました」

 

「……?」

 

 さっきまで目を開けていて、そして麻雀を打っていた人物とは思えない返答が返ってきた小瀬川白望は少し困惑したような表情をしていた。

 しかし、薄墨初美は神代小薪の事を驚愕しながら見つめていた。

 

(もう寝て起きたって事は……いつ二度寝が来てもおかしくないってことじゃないですかー!?ただでさえ18000振ってるのに、『裏鬼門』を発動する前にバカでかい手で和了られちゃたまりませんよー!!)

 

 薄墨初美が焦っている理由は、神代小薪が降ろす神様の存在である。その神様が、たった一局で覚醒直前となっていたのだ。

 『裏鬼門』の薄墨初美に、神様を降ろす神代小薪。状況は更に混沌と化しながら、場は東一局一本場へと移る。




次回も麻雀回!
神様VSシロ……さてどうなる?

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