宮守の神域   作:銀一色

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お風呂回だと思った?残念、次回以降でした!
…まあ、見れば分かります。


第170話 佐賀編 ⑪ 手錠が故の

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視点:鶴田姫子

 

 

 トイレの一件から部長の部屋でダラダラすること数時間。結局手を満足に動かすことができないので私たちは麻雀もする事ができず、ダラダラすりことしかできなかった私と白望さんの目の前に今日の夕飯という事で部長が作ったお粥が置かれた。

 

「……お粥?」

 

 何故ここにきてお粥なのか。病人でもあるまいし……そう思っていた矢先に隣にいる白望さんが部長にそういった。すると部長は「スプーンば使って食べるものと言ったらお粥くらいでしょ?」と返す。少し恥ずかしがりながら言っている部長を見るに、要は私と白望さんに「あーん」したいという事なのだろう。分かりやすい部長だ。

 

(でも……そぎゃん部長が可愛いんだけどね……)

 

 私はそんな部長を微笑ましそうに見る。最初からそう言えばいいのに、素直じゃないんだから。まあ、そうやってプライドを守ろうとしているのもカッコいいし可愛いのだが。

 

「そいぎあ、昼は姫子が先しゃったから……今回は白望からでよかか?」

 

 そして部長はそんな事を私に向かって言い、私はそれを了承する。別に私としては食べる事よりも、部長と白望さんに食べさせてもらう事が重要だったりするので、順番はどうであれ、二人に食べさせてもらえればそれでよかった。まあ、やっぱり白望さんが部長に食べさせてもらっているときは私は蚊帳の外なのでちょっと羨ましくもあるが、それはしょうがない事として諦めるしかないだろう。

 

(というか……もうこぎゃんと時間なんだ……)

 

 そんな二人を横目に見ていると、ふと部屋に掛けてある時計が目に入った。時刻はもう19時を回ろうとしている。あの事件からもう7時間程度が経とうとしているのか……まあまだ解決してはいないのだが。せっかく白望さんと部長の家にやってきたというのに、午後からはあまり何もせず、ただダラダラと駄弁ったりぐったりしていただけであった。

 でもまあ、こういうほのぼのとした空気感も悪くないだろう。何か特別な事があるわけでもない、俗に言う『なんでもない時間』。これこそが一番幸せだったりする……のかもしれない。

 

「ごちそうさま」

 

 私がそんな感情に浸っていると、既に白望さんがお粥を食べ終えていた。白望さんがそう言うと、部長は白望さんのお皿を片付け、白望さんに食べさせていたスプーンを使って私の目の前にあるお皿に盛られたお粥を掬う。今度は私が間接キスをする番だ。そう考えると自然と顔が赤くなる。部長はこれが間接キスになっていることに気付いているのかは定かではないが、今回は最初の時点でスプーンが一つしかなかった。

 

「い、いただきます」

 

 私が少し戸惑いながらもそう言うと、部長はスプーンで掬ったお粥を冷ますように「ふーっ、ふーっ」と息を吹きかける。その仕草の可愛さと言ったらたまったものではない。多分今の私の頬は、お粥と同じくらい熱くなっているであろう。

 そうして部長が私にお粥を食べさせ始める。やはり部長も慣れ始めたようで、結構スムーズに食べる事ができるようになった。そして部長が白望さんにスプーンを手渡す。白望さんもダルいダルいといつも言っているようなイメージが強いが、こういう事は断らずちゃんとやってくれる辺り根は優しいのだろう。

 そんなこんなで私もお粥を食べ終え、最後に部長もお粥を食べ終える。これで夕食という関門は乗り切った。これで後はお風呂という関門と、一緒に寝るという関門を乗り切るだけである……そう思われた。

 しかし私は此の期に及んで気づかなかった。お風呂という関門は私と白望さんがどう頑張っても、乗り切る事はできないという事を……

 

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視点:白水哩

 

 

「お風呂沸いたけど、先入るか?」

 

 食事を終えた私はお風呂を沸かし、今もなお手錠で繋がれている二人に向かって私はそう投げかけた。が、二人揃って私が先に入っていいという事を言ってきたので、客人を後に風呂に入らせるのは多少アレな感じだが、2人がそう言うなら仕方が無い。

 そんな事を考えながら風呂場までやってきた私は、服を脱ぎだす。一人だけのこの空間、私はふとある事を考えた。

 

(それにしても……昼食といい夕食といい……雛に餌ばやる親鳥の気持ちが分かったような気がすっと)

 

 そう、あの昼食と夕食の時、なんとなく自分が大人で姫子と白望が子供のような感じがしてならなかった。

 それにしても赤ちゃん姿の姫子と白望……そのままの年齢の状態でも、歳相応の状態でも少しそそるなと思うのは私が変態だからなのだろうか。いや、そうでないと信じたい。

 

「ぶ、ぶちょー!って、わっ!?」

 

「ちょ、姫子!?」

 

 そんな変な妄想をしていると、姫子が手錠で白望を半ば引きずるようにして扉を開ける。私はちょうど服を脱ぎ終わり、入ろうとしていたので素っ裸の状態である。もう既に色々見られたが、一応私は大切な箇所を腕などで咄嗟に隠す。姫子と白望は真っ裸の私を突然見たもので、驚きながらも顔を赤くしながら私に話しかけてくる。

 

「あ、あの……部長」

 

「どうしたばい……?」

 

 そうして姫子は私に説明を始める。個人的に私は早くバスタオルか何かで身を隠したい気持ちでいっぱいだが、姫子と白望はとりあえず私の方から視線を外しているため取り敢えずは大丈夫……いや、本当は大丈夫じゃないのだが。

 

「……成る程ね。そういえばそうだよなあ……」

 

 姫子から聞かせられたのは至極当然の事だったが、自分も気づかなかった事である。その事とは、あまりにも当然の事だが、手錠で繋がれている状態では服が脱げないという事である。そりゃあ手が繋がれているのだから脱げるわけがない。

 

「……仕方なか。取り敢えず今日は私が頭洗ってやるばい。明日、手錠ば外れたら銭湯にでも行かんとね」

 

 そう姫子と白望に言い、取り敢えず頭だけ洗う事にした。しかし未だに私は真っ裸で、真っ裸の人間が服を着ている人間の頭を洗うという異様な光景が出来上がってしまった。




真のお風呂回は次々回ですかね。

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