宮守の神域   作:銀一色

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佐賀編です。
最近の文字数の低下が悩み。


第162話 佐賀編 ③ 普通ではない

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視点:神の視点

東一局 親:鶴田姫子 ドラ{3}

 

小瀬川白望 25000

白水哩   25000

鶴田姫子  25000

 

 

(一体さっきのはなんしゃったのか……?)

 

 鶴田姫子は先ほど小瀬川白望から受けた威圧に未だ捉われながらも、配牌を取っていく。はっきり言うと、鶴田姫子が受けた威圧は小瀬川白望からしてみればほんの序の口、片鱗にしか過ぎなかった。

 しかし、鶴田姫子も威圧だけで怯むほどヤワではない。そんな簡単に決意が揺らぐほど、白水哩に対する鶴田姫子の愛情は小さくはなかった。

 

(考えても仕方んなかばい……)

 

 鶴田姫子は深呼吸をして心を切り替え、配牌を開く。この一連の動作、何気ない事ではあったが、実は結構重要なこと。過去に捉われずに、ただ今この瞬間を全力で乗り越えようとするその心。それが小瀬川白望と闘う上で最低限必要な心構えであった。いつまでも前の事に気を取られてしまっていては、それこそ小瀬川白望の格好の的である。

 しかし、無論その心構えをしただけで小瀬川白望との闘いが優位になると思ったらそれは大間違い。その心構えはあくまで一時的なもの。小瀬川白望がやろうと思えば、いくらだってその心構えを崩せる。それに耐えられる程頑強な心構えであれば、小瀬川白望と良い勝負ができるかもしれないが、そんな屈強で頑強な心構えを持つ人間など、まずいない。鶴田姫子の心構えは、確かに常人が持つ事ができるのはそれほど多くはないだろうが、あくまで小瀬川白望と闘う上での最前提中の最前提。それに過ぎなかった。

 

鶴田姫子:配牌

{一②赤⑤⑦⑧⑧14667東西白}

 

 東一局の配牌、鶴田姫子の心構えとは裏腹に立ち上がりの配牌はあまり良いとは言えない。面子がなく、字牌が三つもある四向聴。いくら三麻である程度手は進み易いとはいえ、その条件は他の二人にも言えること。

 

鶴田姫子

打{西}

 

 鶴田姫子は手牌にあるオタ風の{西}を切り飛ばし、東一局が開始する。そして小瀬川白望のツモ番になる……と思われていたその矢先、小瀬川白望が声を発する。

 

「ポン」

 

小瀬川白望:手牌

{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏} {横西西西}

 

打{7}

 

 

(西鳴き七索切り……流石白望……開始早々に訳が分からんばい)

 

 白水哩は小瀬川白望の晒した{西}を見てそう心の中で呟く。この時、小瀬川白望は南家。場は東風であり、{北}は特例で全員の風牌。そう、小瀬川白望は唯一のオタ風である{西}を鳴いて行ったのだ。それも、一巡目から。

 一体、小瀬川白望には何が見えていて、何を考えているのか。白水哩には見当すらつかなかった。

 ここから予測できる小瀬川白望の手牌は、せいぜいチャンタか筒子か索子の混一色の二択。通常の場合この二択が妥当であろう。それが合理的だし、何よりその二択に行けないような手牌ならわざわざ{西}を鳴いたりする必要はない。

 

(くっ……!)

 

 しかし、白水哩は非常に悩んでいた。普通に考えればチャンタか他の役牌抱え。その二択で間違いはないはずだ。しかし、今目の前にいる小瀬川白望は違う。どう考えてもその"普通"で推し量ることのできない存在。もっと言うなれば、"普通"に最も遠い存在である。

 そんな彼女が、果たしてその"普通"の選択肢を取るだろうか。いや、だからといって小瀬川白望が必ずしも普通の選択肢を取らないというわけではない。裏の裏をかいてくる可能性だってある。だが、白水哩の第六感がそう告げていた。

 小瀬川白望の手は、確実に"普通"の手ではないという事を。

 

 

(やられる……)

 

 そう確信した白水哩は、徹底的にオリへと回る。通常ならば絶対有り得ない選択肢。だが、白水哩は確かめたかった。自分の第六感が的を得ていたか否かという事を。これを機に白水哩は一切の攻めっ気を失い、完全な守へと移行する。

 

 

(……チャンタか混一色、か)

 

 一方の鶴田姫子は、白水哩とは正反対の考えをしていた。四向聴スタートという事もあってか、鶴田姫子はオリたが、小瀬川白望の手牌はストレートにチャンタと混一色に絞った。そうして七巡目、鶴田姫子は{九}を掴んでくる。

 

(九萬……)

 

鶴田姫子

{一①②赤⑤⑧146689東白}

ツモ{九}

 

 チャンタの可能性が高い小瀬川白望にとって、この{九}は本来切ってはいけない牌。当然、鶴田姫子はこの{九}を手中に収めて、代わりに{6}を切り飛ばした。

 しかし、その瞬間小瀬川白望が手牌を両手で倒した。

 

 

「ロン……っ!」

 

「え……!?」

 

 

小瀬川白望:和了形

{一一一③③③⑨⑨⑨6} {横西西西}

 

 

「対々和三暗刻……満貫……」

 

 

(そぎゃん……対々和三暗刻だって……?そいぎあ西ば鳴かなければ役満だってあり得たそいぎなかか……)

 

 そう、この小瀬川白望の手牌、最初の時点で{西}を鳴かずにおいておれば役満も狙えた絶好の手牌であった。しかし、小瀬川白望はそんな事は気にもとめずにあっさり役満の可能性を捨て去った。白水哩は、やはりな。といった表情で小瀬川白望の手牌を見る。まさか役満を狙えた手牌を崩すとは思ってもいなかったが、どうやら白水哩の第六感は的中していたようだ。しかし、一方の鶴田姫子には不思議で仕方がなかった。何故あそこで鳴いたのか。わけが分からずにいた。

 

(流石に哩は鋭いね……)

 

 対する小瀬川白望は白水哩を見てそういった事を心の中で呟く。嘗て一度小瀬川白望と打ったことがあるだけに、そういった事は鋭い。もちろん鋭いだけでは小瀬川白望には勝てないのだが、何もできないよりかはまだマシであろう。

 そして今度は小瀬川白望は鶴田姫子の方を見る。未だに鶴田姫子はまだ小瀬川白望がどうしてあの変な打ち方をしたのか、気付いていないようだ。

 正直な話、小瀬川白望にとって今のはほんの小手調べ。これだけで参ってもらっては小瀬川白望とて困るのだが、まあこの場で教えてあげるほど小瀬川白望も甘くはない。

 

(どんどん行くよ……)




次回も佐賀編。
果たして姫子はシロとどこまで闘えるのか……

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