宮守の神域   作:銀一色

171 / 473
今回結構攻めた内容です。
苦手な方は注意してください。


第159話 奈良編最終回 災難

-------------------------------

視点:小瀬川白望

 

 

「ん……あれ」

 

 玄と宥、松実姉妹によって生み出された寝るには丁度良い心地よさに身を任せるようにして寝ていた私が目覚めてまず視界に入ったのは天井であった。しかしこれはおかしい、私は椅子に座って寝たはずなのに、何故今私は仰向けになっているのだろうか。

 そう思って起き上がろうとするが、私の両腕が動かせないことに気付く。恐らく私の両腕が拘束されているにだろう。いや、動かそうとすれば動かせるくらいの拘束であったのだが、私には無理に解くことはできなかった。

 その理由は、私の両腕を掴んでいるのが松実姉妹であったからだ。私が寝ている間に何があったのかは知らないが、とても心地よさそうに寝ている。私が寝る前までは火花を散らし合っていた二人だが、今の状況を見るにそれも解決したのであろう。

 

(……どうしよう)

 

 しかし、未だ問題点は存在している。この状況、私は起きているものの私の両腕を掴む二人は起きていない。無理に解こうとすれば、せっかく寝ている二人を起こしてしまうかもしれないし、何より危険が伴う場合もある。そういう理由で、私は迂闊に動けなかった。

 

(まあ……いいか)

 

 しかし、今私が起き上がる特別な用事とかがあるわけでもなく、ただ単に起き上がろうとして起き上がれなかっただけで、結局私は再び目を閉じようとする。俗に言う二度寝というやつだ。

 

(……っ!?)

 

 その瞬間、私の胸に途轍もない違和感を感じた。もっと具体的に言うと、私の胸が玄か宥の何方かの手によって揉まれたという事だ。何方が揉んでいるのかは布団で隠れているため分からないし、その布団も両腕が使えない今退ける事もできない。しかし、右側を揉まれているため恐らく私の右側にいる宥が揉んでいるのだろう。私の腕はまだ掴まれているので、恐らく私の腕を掴んでいる手とは反対の手で揉んでいると思われる。

 玄はそういうのが好きだというのを知っているから玄の場合では驚かなかっただろう。しかし、宥がやってくるとは思いにも寄らなかった。まあその宥は寝ているため、宥も玄と同じような趣味があるという事には繋がらないのだが。

 

(それにしても……んっ)

 

 こうしている今も、宥の私を揉む手はは止まる事を知らなかった。寝ているという事を考慮しても、それにしてはどんどん私の胸を弄ってくるし、尚且つ手つきがいやらしい。それに加えて私の今の格好は昨日の夜から変わっておらず浴衣姿。ほぼほぼ直で触られていると言っても過言ではなかった。かといって恥ずかしい声を上げるわけにもいかず、私は声を押し殺すしかなかった。早く宥が目覚めるか、この手が止まってくれるかのどっちかが起こってくれる事を願う事しか今の私にはできなかった。

 

(ちょ……く……玄も?)

 

 そう願っている矢先に、私に次の不幸が待ち受ける。今度は玄が宥が揉んでいる反対側の胸を揉み始めたのだ。これで姉妹仲良く私の胸を揉むという異様な状況が出来上がってしまった。姉妹の仲が良いのは良い事だが、かといって同時に胸を弄られている私はたまったものではない。

 単純に考えても、私はさっきの倍我慢しなくてはならない。さっきの時点で既にもうギリギリだというのに、今の状態で私が耐えられるわけがなかった。

 

「んっ……ちょ、やめ……」

 

 押し殺そうとするが、どうしても声が漏れてしまう。次第に我慢が利かなくなり、どんどん私の頭の中で焦りが大きくなってくる。 

 そうして私が「あ、これやばい」と思ったその刹那、私に救いが訪れた。

 

「すみませーん!玄さんいますか!?」

 

 外から玄と宥の事を呼ぶ声が聞こえてきた。室内のここでも聞こえるくらいの大きな声。その声の主を私は知っている。昨日玄と共に出会った穏乃の声であった。

 その穏乃の大きな声によって、宥と玄は目を開ける。それと同時に私は心の中で「穏乃、ありがとう」と感謝して松実姉妹のホールドから抜け出した。危なかった。あれ以上続いていたら多分私は果てていただろう。何をとまでは言わないが。

 

「うーん……この声はシズちゃん?」

 

 そう言って玄は欠伸をして起き上がる。宥も「おはよう……シロちゃん」と言って布団に包まりながら起き上がった。どうやら本当にただ寝ていた時の事故だったようだ。事故とはいえ、恐ろしい体験をしたものだ。

 そうして私は椅子に座って暫く気持ちを落ち着かせていると、玄が「え、もうこんな時間!?」と言った。

 

「どうしたの、玄ちゃん?」

 

「もう11時だよ、お姉ちゃん!」

 

 それを聞いた宥もびっくりしたようで、「そんなに寝てたんだ……」と言い、姉妹揃って慌てて部屋を出て行った。11時か……そろそろ私も行かねばな。そう思い私は出発の支度をして、浴衣姿から着替えた。

 

-------------------------------

視点:小瀬川白望

 

 出発の支度が済んだ私は、宥と玄に顔出しをしてから私はこの『松実館』を後にした。そうして『松実館』から出た私は、外にいた穏乃に「ありがとう。助かった……」と伝えてその場を去った。

 穏乃は何の事だかわからず首を傾げていたが、まあ知らぬが仏というやつだ。そもそも私は教える気などないのだが。寝ていたら松実姉妹に両腕を掴まれていて、それで胸を揉まれたなんて言えるわけがない。言えるわけがないし、言いたくもない。

 

 

「災難だった……」

 

 私は赤木さんに向かってそう呟いた。すると赤木さんは笑ってから、私に向かってこう言った。

 

【こういうの何て言うか知ってるか、自業自得って言うんだぜ……ククク……】

 

「何が自業自得なの……」

 

【自分の心に問いかけてみろ……】

 

 そうあしらわれた私は頑張って何かしたかを考えたが、結局なにも心当たりが思いつかなかった。

 考えても無駄さと悟った私は、駅へと向かう。次なる目的地、和歌山県へと行くために。

 

 

-------------------------------

視点:小瀬川白望

 

 

「辻垣内さんから聞いたわよ……また!?またなの!?」

 

 あれから二日後、和歌山県から岩手へ戻ってきた私を待っていたのは怒り状態の塞と胡桃であった。

 どうやら智葉は私が近畿で何をしてきたかをある程度知っているらしい。流石に『松実館』で何があったのかまでは無いと思うが、それでもバッチリ玄や穏乃や憧たちとメールアドレスを交換している事は既に知られていた。

 いったいどうやってそんな事が分かるのか……そして何故塞はそれで怒っているのか。それが気になって仕方なかった。

 

「別に麻雀打ってきただ「いいから黙ってる!」……はい」

 

 私も弁解をしようとしたが、胡桃の一喝によって遮られてしまった。さっきから正座をさせれて足が痺れそうになっているが、塞も胡桃も何故か私を許す事はなかった。




雑すぎい!
次回からは九州編になる予定です。
今後のスケジュールとして、
九州(二年夏)→関東(二年冬)→未確定(三年夏)→中部(三年冬)
といった風なんですけど、どうしましょうかね……三年夏……
第三次小瀬川争奪戦でもやりましょうかね((

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。