宮守の神域   作:銀一色

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速攻で書き終えました。
文脈とか色々おかしくなっているかも知れませんがそこはスルーでお願いします。


第5話 正念場

 

 

 

 

 

 

 

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視点:神の視点

 

東四局 親:モブA ドラ:{北}

小瀬川 34600

モブA 23400

矢木 54800

モブB -9600

 

 

 

 

東四局。前局の矢木の役満によって逆転を許した小瀬川。流れを掌握され、一見ピンチに見える小瀬川だが、別に気にも留めなかった。

 

配牌も悪い。五向聴の遅い手でこの局も矢木がモノにしそうな気配。

 

しかし、そんなボロボロな配牌を、小瀬川はどこか懐かしい物を見ている様な表情で配牌を見つめる。

(赤木さんと打った時は殆どこんな感じ…別に相手が超劣化版赤木さんになっただけ…)

 

 

 

 

南郷はそんな小瀬川を見て不安になる。

(この五向聴でどう闘っていけばいいんだ…ここからの逆転が可能だとでも言うのか…?)

無論安岡も不安になるが、興味深さも内に秘めていた。

(さあ…これが最初の試練だぞアカギ(小瀬川)…

見せてみろ…俺の目が狂っていなければ、矢木の野郎にあっさりと負ける訳が無い…

ここからこいつの奇跡は始まる…!)

 

安岡の予想を裏付ける様に、小瀬川は手を進めていく。

流れを失った今、通用するのは自分の運とツキのみ。

 

 

そしてムダヅモ無しで聴牌。つまり五度のツモで全て有効牌を引き入れる。

 

小瀬川:手牌

{一索二索三索四索五索六索七索七索八索八索八索六筒七筒東}

 

後ろで見ていた安岡はこの手をどう仕上げるかを考えている。

(ここから手を高くするには{九索}引きの平和一通。若しくは2枚索子を引いての清一色多面待ちか…

どちらにせよここはダマで様子見であろう…)

安岡の考えは実に理にかなっている。

通常なら誰もがそうするだろう。

しかし、

 

 

「リーチ」

 

異常の赤木を受け継ぐ小瀬川はその普通という壁を破る。

安岡の推察を裏切る形でのリーチ。

無論、手は安くリーのみの手。

しかし、それはあくまでも小瀬川側から見たから無意味なリーチと見えるだけであって、反対側。つまり

 

 

(…)

 

矢木側からして見ればそれは矢木を惑わす武器になる…!

 

(聴牌即リー…清一色か混一色か…何方にせよ索子は危険牌…!切れない…!)

 

この時矢木は純チャン三色の手で、八索を切れば聴牌({七筒七筒八筒八筒九筒}の形)だが…

 

 

小瀬川:捨て牌

{白一筒三萬四筒横七萬}

 

 

肝心要、その{八索}が切れない…切れる牌ではない…

 

捨て牌はどう見ても索子の染め手に見える。たまたま索子が捨てられていないだけかもしれない…それで片付く話かもしれない…しかし…

 

(それで{八索}が切れたらどれだけ楽な物か…)

 

切れない…切ったら最悪逆転されるかもしれないこの状況での超危険牌は正に自暴自棄。

 

故に…切ってしまう。

勝負する為の{八索}ではない。勝負から逃げる為の{八筒}を切る。

まるで【逃げなければ死ぬ】と笑みを浮かべた悪魔に囁かれたように…

 

 

 

 

打{八筒}

 

 

 

まるで白痴だな…矢木さん

 

 

 

小瀬川が呟く。奇しくもその言葉はアカギが矢木に放った言葉と同じだった。

 

 

「あの状況で…私が馬鹿の1つ覚えみたいに索子の染め手にいくと思ったの…?」

 

 

 

「ロン。リーチ一発。2600」

 

 

 

(なっ…なんだと…!?)

有り得ない。矢木は困惑していた。待ちが{五筒、八筒}だったことではない。

矢木は逃げたはずだ。勝負から逃げる為に打ったはずだ。それが何故、危険な道だと気付かなかったのか。

或いは、危険な道を恰も安全だと小瀬川に唆されたのか。

 

何れにせよ、矢木は既にこの直撃で流れを失った。流れは勝負から逃げる者には決して味方をしない。

その証拠に、

 

「裏、2つ。満貫…8000」

 

裏ドラまでのる始末。些細な一手が、勝負の流れを完全に変えてしまった。

 

 

 

 

この後の矢木は見る影もない。

小瀬川に余り牌を執拗に狙われ続け、次第に見え見えの手にまで振り込むようになっていった。

 

この場にいる全員が、人の崩壊というものを知った。

ヤクザである竜崎も例外ではない。竜崎達は、壊れかけていた人間を壊しているだけであって、どう人間が壊れていくかの過程は知らない。

その過程が、自分の目の前で行われている。竜崎は言葉を失った。

 

まるで趣味の悪いショーだ。

矢木は既に壊れかけている。後一歩。後一歩で矢木の精神は崩れ、完全に廃人となる。

矢木は心の何処かで後悔していた。どうしてあの局面で逃げたのか、どうして流れを掴んだのに生かせなかったのか、どうしてこんな怪物と打ったのか。

 

しかし小瀬川の猛攻は終わりを知らない。

南三局は小瀬川の親だが、連荘が続き既に5本場を迎えている。

それだけではない。この親番中、小瀬川の上がりは全て矢木からの直撃である。

直撃と言っても打点が3900、満貫(+300)、2400(+600)、7700(+900)、2000(+1200)とそれほど高くも無い。しかし、削った点数よりも、矢木の精神の方を多く削っていった。

 

 

そして5本場の今の点差は

小瀬川 81400

モブA 4800

矢木 15900

モブB -2100

 

と、役満を直撃させても逆転しない状況であった。

しかし矢木は残っている僅かな精神をフルに使い、勝負にかける。目指すはダブル役満。四暗刻清老頭。

矢木の願いが通じたのか、どうにか聴牌まで漕ぎ着ける。{九筒、一萬}のシャボ待ち。

九筒はまだ1枚、一萬は2枚も残っている。

 

(ツモってくれ…!)

 

一筒をツモる。違う。まだ足りない。

 

「カン…!!」

矢木が一筒を暗槓する。この状況で嶺上開花でツモ和了すれば四暗刻清老頭。

嶺上牌に手を伸ばそうとしたその時、

 

 

 

 

 

 

 

「その花は…咲かない…」

 

小瀬川:手牌

{一萬一萬九萬九筒一索九索東南西北白発中}

 

「ロン。槍槓国士無双。48000に5本場を加え49500」

 

残っている筈の{一萬}2枚と{九筒}1枚がそこにはあった。

矢木の求めたものは既に無く、ダブル役満は幻想だった事を思い知らされた。

矢木は完全に崩壊し、卓に突っ伏した。

 

 

 

 

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視点:小瀬川

 

 

「…あれ」

気が付いたらいつの間にか自分の部屋に戻ってきた。どうやら勝負がつくと自動的に戻されるらしい。

 

【ククク…お疲れ様…】

赤木さんが労いの言葉をかけてくる。

その言葉に返事をする前に私はベットに倒れ込む。流石にもう疲れた。

 

【強かったか?矢木圭次は…】

「まあまあ強かった。赤木さんの足元にも及ばないけど」

【…そうか、ククク…まあ今日は休みな。明日はお友達との約束があるんだろ?】

どこでそんな情報を得たんだ。と思ったが赤木さんを学校に持って行ったので、知ってるのは当然だった。

「もう寝る…」

枕に顔を埋める。

【…いずれ俺と同類の男と闘わせてやるよ。】

赤木さんが不意に呟く。

矢木相手であれだったのに赤木さんの同類の男とやったらどうなるんだろうか

「ダルい…」

そう返し、私は夢の世界へと旅立った。

 

 

 

 




シロがどんどん神域に近づきます。途中で書いていて怖って思いました。(小並感)
また、市川や浦部、鷲巣との過去麻雀は番外編でやろうと思います。
次回はレズ(宇夫方葵)とのデート回です。
因みに宇夫方葵さんは咲本編でシロを食堂に誘ってたあの方です。

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