宮守の神域   作:銀一色

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松実編です。


第154話 奈良編 ⑰ 姉妹

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視点:小瀬川白望

 

 

「玄……」

 

「数時間振りです!シロさん!」

 

 

 玄が私のところへとやってくる。やはり私の予想が的中したらしく、この「松実館」は玄の家のところが経営している旅館だった。相変わらず玄の目線は私の胸をしっかりと捉えているが、それは気にしないでおこう。

 

「ところで、シロさんは何を?」

 

「今日、ここで泊まるんだけど……」

 

 私は目の前にある「松実館」を指差して玄に言う。それを聞いた玄はびっくりして、「泊まるんですか!?」と言って私の顔を見た。私も意図してこの「松実館」を選んだわけではないので、事実私も驚いている。

 

「そっか……じゃあ旅館の手伝い、いつも以上に頑張らせて貰います!」

 

 そう言って玄は右手を額にビシッと当てて私に敬礼する。まだ小6だというのに旅館のお手伝い……色々と旅館を経営するのも大変なんだなあとか思いながら、私は玄に連れられて「松実館」の中へと入った。

 

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視点:小瀬川白望

 

 

「ここがシロさんの部屋です」

 

 玄に連れられて入った一室。正直言って、予想の何倍も綺麗であった。部屋の広さも一人で寝るには明らかに広いし、成る程智葉が用意してくれたのも頷ける旅館であった。私は部屋の中に荷物を置くと、玄に「ちょっとこれから時間ありますか?」と言われた。私は玄の方を向き、用件を聞く。

 

「どうしたの……玄」

 

「今から私のお姉ちゃんをシロさんに紹介したいのですが、よろしいでしょうか!」

 

「別にいいよ……」

 

 そう言って、私は玄の後をついて行った。結構「松実館」の中は広く、これ迷子になったりしないかなという若干の不安を感じていると、玄はある部屋の襖の前で止まった。

 

「お姉ちゃーん?」

 

 そう言って玄は部屋の襖を開ける。私がその部屋に入って最初に感じた事は、「暑い」であった。今は冬であるという事を考慮しても、それでも暑いと思えるくらいの室温であった。そんな部屋の中央に置かれた炬燵の中で温まっている人がいた。その人は私と玄が部屋に入ったのに気づくと、むくっと起き上がった。こんな暑い部屋でよく炬燵に入れるものだ。私も無類の炬燵好きであると自負してはいるが、流石にこんな状況で炬燵に入ろうとは思わない。この人には炬燵に関しては勝てない(?)なと心の中で負けを認める。

 

「紹介するね、シロさん。私のお姉ちゃんの松実宥!」

 

 玄のお姉ちゃん、もとい宥さんはこんな室温の中でも凍えているような仕草をしながら、私の事を見る。宥さんは「よろしくね。シロちゃん」と言って手を差し伸べてきた。それに応えるようにして私も手を出し、「よろしく……宥、でいいかな」と言った。

 

「玄ちゃんから聞かされたけど、同年代なんだし……呼び捨てでも大丈夫だよ」

 

「分かった。宥……」

 

 そう言って私と宥は手を握る。その瞬間宥の体が跳ね、「あ、あったかくない……」と言った。私はそう言われて咄嗟に手を離したが、さっきのはどう考えても私の手が冷たいのではなく、宥の手が熱すぎるだけだ。確かにさっきまで外にいたとはいえ、この部屋に来て既に手の温度は通常に戻っているはずだ。

 

(多分、そういう体質なのかな……)

 

 聞いたことがないが、そういう体質なのだろう。妹の玄も面白い能力を持っていたし、姉の宥にも何かしらはあるのだろう。

 

「それにしても……玄ちゃん、よかったね。シロちゃんが泊まってきてくれて……」

 

「お、お姉ちゃん?」

 

「玄ちゃん、さっきお使い行く前に私と話してた時、すっごく嬉しそうにシロちゃんの事を話してたんだよ。……だからそんなシロちゃんとお話できて、私はすっごく嬉しい……」

 

 そう言って私に向かって微笑む。横にいる玄の事をちらりと見ると玄の顔は真っ赤に染まっており、口をパクパクさせていた。フリーズした玄はひとまず置いといて、私も宥に向かって「私も宥とお話できて嬉しいよ」と言った。

 すると宥は炬燵の中から出て、私の目の前までやってくる。何かと思えば、宥は私に向かって再び手を出して、「もう一回……握手してもいいかな?」と言った。私は恐る恐る宥の手を握り、宥の表情を見た。

 

「あったかくないけど……心はあったかい……」

 

 そう宥が笑いながら私に向かってそう言う。すると横からいつの間にか元に戻っていた玄が「おお、やはりどちらも立派なおもち……」と言って私と宥の胸をまじまじと見ていた。

 

「じゃあ、またね。宥」

 

「またね……シロちゃん」

 

 興奮している玄を連れて、私は廊下へと出る。部屋の室温に慣れてしまって感覚が麻痺しているのか、廊下がとても寒く感じた。

 そうして部屋に戻っている途中、私は玄に向かってこんなことを言った。

 

「玄……」

 

「シロさん、どうしました?」

 

「宥、いいお姉ちゃんだね……」

 

「……自慢のお姉ちゃんですから」

 

 姉妹愛、とでも言うのだろうか。私も宥ではないが、どこか二人の関係がとても「あったかく」感じた。

 ……そういえば、姉妹といえば照は結局いつになったら妹さんと仲直りするのか。私も早く解決させてあげたいのは山々なのだが、肝心の照が小心者すぎて「私はきっと咲に嫌われてる……許してもらえるはずがない……」と言って中々解決へと進まない。

 ここのところ照とはその喧嘩(?)の事については話していないため、現状がどうなっているのかはわからないが、きっと妹さんも照の事を許しているはずだ。だから照もそんな思いつめなくても大丈夫なはずだ……それを松実姉妹を見て確信した。

 ……まあ、照にも照なりの考えというものがあるのだろう。第三者の私が突っ込まずとも、いずれ二人で解決してくれるはずだ。そう信じて、私は部屋へと戻った。




字数が少ない……少ないぞ……!
そして宥の口調に違和感がないかどうか不安でしかたない……
そして何故唐突に照の話題になったのか……次は東京の予定じゃないのに……


まあ、大目に見てください。

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