今回ちょっと適当じゃないですかね……?
脳味噌が働きません……
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視点:小瀬川白望
「じゃあ、行こうか。やえ」
そう言って私はやえの方を見る。さっきの憧と同じように顔を赤くしていたやえは、「う、うん……」と言った。これから私とやえが行くところは怜たちとは違い事前に二人で決めており、私だけが知らないという事はない。
しかし、ここで一つだけ問題がある。行き先はもう既に知っている。それは何を隠そうやえの家だ。問題なのは、そこで何をするか全く決めてなかったという事だ。やえも行き先だけ決めたその後何も私に言ってこなかったので恐らく何をするかはやえが決めているはずだ。ただでさえ怜の用意したバドミントンとファッション大会と称した罰ゲーム大会で大変な目にあった後の私はやけにそこの所が心配であった。まあやえはそんな事はしないであろうとは思うが。
「……行こう。し、しろ……白望」
そんな事を考えているとやえがそう言って後ろから私の腕を掴む。……なんか私がエスコートするような構図になったが、私はやえの家の位置は分からない。やえは進もうとしない私の事を不思議そうに見ているが、そんな目で見られても私は分からないのだが……
「……やえ」
「なっ、なんだ?」
「……私、やえの家が何処だか分からないんだけど」
その事をやえに伝えると、やえは少し疑問を浮かべていたが、すぐに今の謎な状況を理解したのか、ますます顔を赤らめて私の腕を握ったまま数歩ほど歩いた後、振り返って私にこう言った。
「い、行こう……」
「……うん」
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視点:小走やえ
(はあ……緊張していたとはいえ自分が情けない……)
私は白望の腕を握りながら歩いている途中、心の中で深くため息を吐く。いくらいきなり現れた白望に驚いていたとはいえ、あの失態は擁護しきれないほどのバカ具合だ。このままでは白望の私に対するイメージはただただ変な事をやっている意味不明な人というので終わってしまうかもしれない。しかし、まだ挽回できるチャンスはある。この後私の家で私のイメージを挽回すればイメージ的にプラマイゼロ、もしくはプラスで終われ……
(……ちょっと待て、私の家でイメージをって言うけど、何をするかまだ決まってないぞ……)
しかしそこで気付く。私の家に行くという事は事前に二人で話し合って決めている。だが、そこで何をするかという事は全く決めていないのだ。私の頭の中は白望が家に来るという事だけであったため、具体的に何をするとかそういうところまで頭が回っていなかったのだ。白望も私の家で何をするかという事を聞いてこないという事は、既に私が決めていると思っているからだろう。これは困った事になった。私は必死に考えるが、何をすればいいのかが全く分からない。そもそも白望が何の趣味があるとか何が好きであるかというのを私は全く知らない。麻雀という手もあるが、三人打ちなら聞いたとこがあるが、二人だけで麻雀など聞いた事がない。
(どうしよう……何も決めてないと知ったらますます私のイメージが……)
「……ねえ」
「ひゃい!?」
そう考えている最中、白望が突然声をかけてくる。思わず変な声が出てしまうが、心の中で「平常心」というワードを言い続けて、強引に平常心を保とうとする。
「ど、どうした?」
「……やえの家に行く事は話し合って決めたけどさ、何をするかはやえ、決めてある?」
(ど、どうしよう……)
今ちょうど考えていた事を白望に突っ込まれる。私は少しばかり頭の中で考えるが、さっき考えていた時に出なかったのに今パッと思いつくはずもなく、私と白望の間に奇妙な沈黙が生まれる。白望は私の事を不思議そうな目で見ている。
結局、何も出てこなかったため、素直に白望に何も考えていなかったという事を伝える。これは呆れられたかなあと自分の心の中で再度ため息を吐くが、白望は私に向かってこう言った。
「じゃあ、決めようか……二人で。私も何も考えていなかったからさ」
「そ、そうだな……」
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視点:小瀬川白望
「こ、ここだ」
やえが立ち止まって私に向かって言う。私はやえの家を見渡す。大きい一軒家であり、どこかやえらしい感じを醸し出していた。いや何がやえらしいのかは説明はできないが、何となくそう思った。
「お邪魔します……」
私はやえの家の中に入る。外見も立派なものであったが、中も立派である。私はおそるおそる部屋に上がると、やえに連れられてリビングにある椅子に座った。
「の、飲み物……何がいい?」
すると冷蔵庫の前に立つやえにそんな事を言われる。別に今特別に飲みたい飲み物などなく、無いものを強請ってしまう可能性もあるため、「やえのおまかせで……」と言ってやえに任せた。
「……これでいいか?」
すると私の目の前にあるテーブルの上に二Lのボトルを置く。見た感じこれは100%でないオレンジジュース。私は「いいよ……コップある?」と言う。
「大丈夫、私が装うから……」
しかしやえがそう言うので、私はコップの中がオレンジジュースで満たされるのをじっくり見ていた。そこで私は、やえの手が途轍もなく綺麗である事に気づく。
「どうした……?」
「え、いや……やえの手、綺麗だなあって」
するとやえは胸を張って私に掌を見せてこう言った。
「ま、まあこれでも小三の頃からマメなどできた事がなかったしな……」
それは自慢になるのかなあとか思ったが、よく麻雀を打ちすぎると手にマメができると聞いた事がある。私も赤木さんと打ってて手にマメなどはできなかったが、私が本格的に打ち始めたのは小六からの話であるため、長い間やればマメができるのは当たり前の事なのかなあとか頭の中で考えた。
「じゃあ……何しようか、白望。麻雀も二人じゃあできなさそうだし……」
そしてコップに注がれたオレンジジュースを二人で飲み、やえが私に向かって言う。私はやえの言葉によって、ある事を思い出した。
そうか、二人で麻雀はできなくとも、麻雀牌を使った遊びならあるではないか、と。
「それだ……」
「え?」
「やえ、あるよ。二人で麻雀牌を使った遊び」
「それは……一体?」
「"ナイン"と"十七歩"だよ」
次回はナインと十七歩です。