宮守の神域   作:銀一色

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早めに出来上がったので投稿。
この後また上がるかは分かりません。私の気力次第。


第145話 奈良編 ⑧ 大より小

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視点:神の視点

東二局 親:新子憧 ドラ{西}

 

小瀬川白望 27700

高鴨穏乃  24300

赤土晴絵  23700

新子憧   24300

 

 

 「ポン……!」

 

赤土晴絵:配牌

{二二四七八⑦49白白発} {中中横中}

 

 

 親の新子憧が切った{中}を赤土晴絵が鳴く。それと同時に、東二局が始まりを告げた。赤土晴絵は{中}を晒すと、手牌にある{9}を捨てる。

 一見、ただの役牌鳴きに見えなくもない。それほど些細な鳴きであった。先ほどの小瀬川白望の鳴きのように、あえて相手に意図を汲み取らせるような鳴きではなく、それとは全く逆、相手に悟らせないような鳴きであった。

 

 (……勝負手、かあ)

 

 しかし流石小瀬川白望と言ったところか、赤土晴絵の表情と今の場の流れを照らし合わせて、あの鳴きがただ単に役牌を鳴いただけではないという事をすぐに察知し、確信に至る。

 通常、あの一鳴きだけで役牌速攻か勝負手……ここでは大三元、それを判断するのは極めて難しい。が、そんな常識をあっさりと小瀬川白望が覆していく。

 

 (気付いたか……でもまだまだ許容範囲……)

 

 だが、それも既に赤土晴絵は予測済みであった。小瀬川白望に読まれないようにする対策など赤土晴絵にとってできるものではないにしろ、小瀬川白望が自分の手を粗方読んでくるのはなんとなく分かっていた。だから別に小瀬川白望が読んでいたとしても、そんなに動揺するものでもなかった。

 というより、これは小瀬川白望だけでなく赤木しげるにも共通して言える話なのだが、彼らと闘う上で『常に自分の考えは読まれている』前提が最も重要であろう。彼らは自分自身でも気付かない癖、深層心理をいとも容易く読んでくる。そんな彼らが此方の考えに気付かないわけはないので、常に見透かされていると思って行動した方が良いだろう。……まあ、そこを逆手に取られる場合も勿論無きにしも非ずなのだが、普通に意表を突かれるよりかは全然マシであろう。

 それと大前提として、『奇襲をかけることはできない』と思った方がいいであろう。そもそも彼ら自身が異常な聴牌速度を誇るので、殆どの確率で後手に回る可能性が高いし、前述した通り此方の考えは粗方読まれているが故に、無理に奇襲をかけるのは無謀であろう。それこそ先手をとって尚且つ奇襲をかける事の出来る者など鷲巣巌位しかいないのだが。

 

 

四巡目

赤土晴絵:手牌

{二二四七八⑦4白白発} {中中横中}

ツモ{発}

打{⑦}

 

 話は戻って四巡目、赤土晴絵は大三元の種である{発}を対子とする。通常であれば思わず舞い上がってしまいそうな引きだが、ここまでは正直予定調和と言っても過言ではない。勝負はここから。

 

 

五巡目

高鴨穏乃

打{白}

 

 

 といったところで次巡、高鴨穏乃が{白}をツモ切る。高鴨穏乃はまさか赤土晴絵が大三元も狙える勝負手だとは思ってもいないため、やすやすと切ってしまった。無論、これを見逃すはずがなく、赤土晴絵は{白}を二枚晒して宣言する。

 

 「ポン……!」

 

赤土晴絵:手牌

{二二四七八4発発} {中中横中} {横白白白}

打{4}

 

 

 これで{白}と{中}を鳴き、{発}が対子であるため小三元以上が確定する。しかもこれが一向聴。それに加えて{二三六九発}のどれを引いても聴牌という五面受けと、受けも数多である。

 通常ならば、ここはあわよくば{発}を引きたいところだろう。しかしそれはあまり現実的とは言い難いのも事実。現実的に言うのであれば、ここは{六か九}を引きたいところだ。そうすれば自ずと聴牌は{二発}のシャボ待ちになるからだ。逆にここで{二か三}を引いてしまうと、待ちは{六九}待ちになり、大三元の芽は潰えてしまう。

 故に、ここは最低でも{六か九}のどちらかを引きたいところだ。そう、これが通常であれば。

 しかし赤土晴絵は違った。赤土晴絵は、むしろ{二か三}を所望していた。

 

 (大三元じゃあ……届かない)

 

 そう、仮に{発}を引いたとしても、そのまま大三元に向かおうとすれば小瀬川白望を上回ることはできない。小瀬川白望を上回るには、やはり小鍛冶健夜の時と同じように、大三元を囮にするしかない。

 そのためにも、ここは{二か三}をツモってこれなければ、少なくとも直撃は不可能であろう。そもそもこの策自体成功するかどうかは微妙なところであるのだ。それなのにただの大三元で小瀬川白望を刺せるわけがない。そして小瀬川白望の手も、赤土晴絵の推測だがかなり進んできている。一度{六九発}のいずれかを引いてからまた直撃をするために立て直す……というのも難しい話だろう。諦めてツモ狙いに移行するほかない。

 故に、正真正銘ワンチャンス。一度きりの挑戦であるのだ。思わず、赤土晴絵のツモ牌を取る手が震える。

 

 (引くことが……できれば……!)

 

 赤土晴絵は祈る。しかし、祈りの先は神などという存在ではない。自分自身。自分の運、ツキ、熱……それら全てに自分の思いをぶつける。赤土晴絵はツモ牌に手をかけると、そのまま勢いよく引いた。

 

 (っ……!)

 

 勢いよく引いたはずなのに、それを自分の目で確認するまでには膨大な量の時間を有した。いや、それはあくまでも体感時間での話であって、実際にはほんの数秒にも満たない僅かな時間であるのだが。

 そうして引いてきたツモ牌、赤土晴絵はそれを確認すると、手牌に静かに置いた。

 

赤土晴絵:手牌

{二二四七八発発} {中中横中} {横白白白}

ツモ{三}

 

 赤土晴絵の祈りは届いた。己が運、ツキ、熱……それらが祈りに応えた。これで赤土晴絵は{二}を切り、{六九}待ちとなる。

 しかし、まだ勝負は終わってはない。というかむしろさっきまでは前哨戦といったところか。問題はこのあと、小瀬川白望から直撃を奪うという無理難題に立ち向かわなければならない。絶対的存在の、小瀬川白望から。

 

 

 

 そして対する小瀬川白望は、赤土晴絵の左側に晒されている{中}と{白}の明刻を見て、今度は赤土晴絵の表情を見る。そうしてから、合点が行ったのか小瀬川白望は不敵に笑った。

 この時、小瀬川白望は察知する。根拠などはない。しかし、赤土晴絵の表情を見れば、その真偽は分かった。この状況が、赤土晴絵が昔トラウマとなった相手に恐らくではあるが直撃させた時の状況と酷似しているということに。無論小瀬川白望は赤土晴絵とトラウマの相手と闘ったところを知らないため、本当にそうかは分からない。だが、それは全て当たっていると赤土晴絵の目は告げていた。

 

 (……なるほど、赤土さん。そういうわけか……面白い。覆してみせよう、その記憶……)

 

 

 そうして事が起こったのは七巡目、新子憧によって{九}が、赤土晴絵の和了牌である{九}が放たれた。

 

 

 

 




次回、レジェンドどうする!?の巻
木曜日から外出してないから曜日感覚が狂うこと狂うこと……生活リズムも崩れまくってるし、明日から大丈夫かなあ……

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