宮守の神域   作:銀一色

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更に倍プッシュ…!3話連続投稿…!
4話すら完成していないのに異端の3話連続投稿…!


というより鷲巣麻雀はまだ終わらないのでしょうか。


第3話 飛躍する話

 

 

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あの出会いから1週間が経った。

 

 

今の生活はとても充実していて、前とは比べ物にならないほど世界が輝いて見える。

 

赤木さんとの麻雀が楽しく打てたおかげか、身の回りのモチベーションも向上していた。

 

一時期『怠惰の小瀬川』と言われた私が、見違えるほど何事にも積極的になっているという。

ダルい物事にも諦めずに挑戦する姿勢は恐らく赤木さんとの麻雀で何度も心を折られかけた所為だろうか。

 

その証拠として、隣の席の男子には『お前、前よりもイキイキしてんな…』と言われた。

 

…私もそうだがこの学校の生徒の一部は精神年齢が異様に高い。そこらの中学生よりも口が達者で、人生を悟ってる奴等が多い。

斯く言う隣の男子もそれに該当する。

多分、私が達者になったのは大半はコイツの影響だ。

 

因みに赤木さんがいる《欠片》は私が肌身離さず携帯している。

 

家に置いてたら親に捨てられてそうだし、机の引き出しに放置ってのも可哀想な気がする。

そこで私はお守りの中に入れて携帯することにしたのだ。

 

本人曰く、【狭いとかそんなのは幽霊には心配ご無用って話だ…】とのことだ。

 

まあそんな感じで私のスクールライフは光り輝いていた。

 

…自由研究の件を除いて。

 

やはりあの日から麻雀漬けの生活をすれば自由研究の件など思い出せる訳も無く、それに気付いたのは学校初日だった。

 

私の親友である臼沢塞と鹿倉胡桃には『まあしょうがない。』と心配にすらされてなかった。

いや、心配してもらう程の件でも無いのだが。それでも少し悲しいものだ。

 

そして案の定担任に怒られ、説教を喰らった。

流石に教壇の前に立たされて晒し者にされたままの説教は辛かった。

ちらりと横を見ても、親友含むクラスメイトには親指をグッと立てて"頑張れ"とニヤニヤしながら口ぱくをされた。

 

後日自由研究として提出したのは《人生とは》という哲学を延々と述べた論文の様な物だ。

 

勿論人生を最期まで経験している人(?)が此方にはいるので、経験談を踏まえて作成した。

 

本来原稿用紙数ページで良いと担任に言われたが、赤木さんの話に夢中になってしまったので、最終的に全部で15ページの大作を作り上げてしまった。

 

ダルがりの私がここまでやったのだ。それに見合う対価はやはりあの担任の驚く顔だろう。

 

自信満々に教師に見せつけて、これは勝った。と思ったその直後。

 

「…まあ、頑張ったんじゃないか?うん。」

 

えらく冷めた対応だった。はてどうしたものかと問い詰めると、何と私のページ数の実に2倍以上の量を書いた奴が私を除き四人いたという。

テーマは消費税問題、政治、第二次世界大戦、少子高齢化問題。

…本当にこいつら小学生かよ。と改めてこの小学校の異常さを感じた。

 

因みにその中の一人は『イキイキしてんな』と私に言った隣の席の男子である。

 

まあそんな思い出しただけでダルい事は置いといて、麻雀についてだ。

 

やはり1週間では赤木さんの足元にも及ばないものの、ネトマでは好成績を安定して出せる様になった。お陰でレートが上がること上がること。

 

赤木さんの課題である《自分を信じる心》は5割完成されており、滅多なものでは揺るがなくなった。

赤木さんの心を折りにいく精神的攻撃の本気の30%くらいでも大丈夫になってきた。

…これが100%になると私は麻雀関連の単語に関しただけで発狂しそうになるのではないかと恐怖する。

いや、麻雀関連の単語で発狂って日常生活にも支障がでる様な気が…

まず、ビンゴは当然《リーチ》があるから無理だ。

《平和》もダメ。というより《平和》を聞いた瞬間発狂する人間は最早戦闘狂か若しくは悪の大王だろう。

《3色》、《アンコ》、《東西南北》等…

それに《テンパる》という単語も、元は麻雀の《聴牌》が由来だ。

挙句数字や丸を聞いただけで発狂とかだとそれは人間と言えるかどうかは微妙なとこだ。

 

まあ半分お遊び半分恐怖のジョークは辞めにして、次は《流れ、ツキ、運を見極める事》(以下"読み"とする)についてだ。

 

*一応、

流れ=誰が有利か

『場の』流れ=全体の牌の偏り

ツキ=自分の打点の高さ

運=牌の進みやすさ

と差別化を図ってますが、コロコロ変わるので、その都度言います。

 

 

これも結構成長していて、30秒の時間が必要だが、赤木さんの"読み"の25%は発動できる様になった。

…これで成長と言えるのかは微妙だが、まず第一に普通の人間には理解できない境地なので、まあ良しとしよう。

夏休み前の私が"30秒考える(?)だけで場の流れ云々が分かる"と聞いたらどんな反応をするだろうか。

…多分頭のおかしい奴だと決めつけてダラけるだろう。いや、私は今でもダラけたい精神は一杯だが。

因みに、毎順使うと精度が若干落ちる。流石に毎順も使えば精神的疲労があるからであろう。

それでも赤木さんは常時それを発動しているので恐ろしい。

 

他にも戦術などを教わった。

主に狙い撃ちのやり方と敵の待ちの見分け方についてだ。

敵の待ちの見分け方は赤木さんが最初に編み出したロジック《捨て牌三種の声》をベースに見分け方を伝授してくれた。

 

《捨て牌三種の声》を簡単に言うと、超高性能レーダーのようなものだ。

その証拠にそのロジックによって赤木さんは全くと言っていいほど振ることは無かったらしい。

…一度「絶一門」でどうしようもない余り牌を狙われてピンチにはなったらしいが…

 

次に狙い撃ちの方だが、これはシンプルに《捨て牌三種の声》を騙せるような迷彩を作れば良いだけである。

至ってシンプルに言ったが、難易度は激ムズである。しかも折角作った迷彩も赤木さんは軽々と交わすので、自信が無くなりかける。

それでもネトマでは遊び半分の迷彩でも引っかかってくれるから私の鬱憤晴らしにはもってこいだ。

まあ、ダルい私がネトマをやる時などそうそう限られてくるけど、完璧な迷彩を作ってブチ当てた時のアドレナリンは言葉にはできない。

 

今迄軽い感じで言ってきたが、これらを100%使いこなすには相当の運を要する。

当然、どんなに"読み"が的確でも、攻める為の手牌がよくなきゃ意味が無い。どんなに自分を信じても、運が悪けりゃ意味が無い。

こういった不安だが、赤木さん曰く

 

【嬢ちゃんの運は良いに決まってる…死んだ人間に会えるなど多分世界でお前さんしかいない…

60億分の1さ。天和は33万分の1だろ?じゃあお前さんの運は良いはずさ…】

 

と、何か誤魔化された感はあるが、そう言うなら大丈夫という事だろう。

 

 

 

そんなこんなで私の今の課題は

・"読み""信じる心"の強化

・実際の麻雀の経験

の2つである。

 

体感的に"読み"などの技術面は後半年もしたら完成するのでは無かろうか、と感じる。

無論、赤木さんの域に達するには相当後になるが、中学卒業までには赤木さんの本気を出させるまでに仕上げたいものだ。

 

実際の麻雀の経験については、今日の放課後、家で何かをするらしい。

 

何かは予測出来ないが、まあ楽しみにしている。今は昼休み。後だいたい2,3時間後か。

 

と、机に突っ伏しながら放課後の事を考えていた矢先、私の名前を叫ぶ声が聞こえた。

 

「小瀬川さーん!放課後一緒に遊ばない?」

 

そう呼んで起き上がって見てみると前髪をわけている黒髪ロングの女の子がよんでいた。

名前は…確か宇夫方葵とか言ったっけか。

私のクラスメートで、何かと私に突っかかる人だ。小6になってから初めて同じクラスになり、それから知り合った。

…最近は特に私に突っかかってくる。一体私に何があると言うのだ。

まあ放課後は用があるので断っておく。用が無くてもダルいから断るであろう。

 

「用事があるから、また今度で…」

 

そうすると宇夫方さんは『そっかー、なら何時ならいいかな?明日?明後日?明々後日?それとも弥の明後日?』といつの間にか私の目の前まで接近してきた。

 

こうなると約束しない限り離してくれなさそうなので、

「じゃあ明日で…」

と返答する。そうしたらいきなり

「よっしゃあああ!言質とったもんね!じゃあ明日ね!何を着て行こうかな〜!」

と言って、廊下へ駆けていった。

「ちょっと…明日何をしに行くの…」

と呟いたが彼女はもう教室から出て行っているのだ。届かないと思っていながらも呟いたが、

「お散歩よ!二人きりで!」

と一瞬にして戻ってきて返答し、一瞬にしていなくなった。何者なんだ彼女は…

そう考えている時、一枚のメモ用紙が机におかれた。差出人は隣の席で数学Bと書かれている本を見ている優等生の男子からだ。

 

メモをみるとそこには『彼女に刺されないようにな。』

と書かれていた。彼がそこまで言うのならそれ程ヤバいのだろう彼女は。

「…ダルっ」

そう口にして午後の授業を受けた。

 

 

 

 

 

 

 

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放課後

 

 

 

午後の授業も難無く終わった。

宇夫方さんの件の事で頭の中がモヤモヤしていたが、とりあえず早く家に帰ろう。

 

実際の経験と言っていたが、誰かを呼ぶのだろうか?いや、赤木さんは幽霊であり、今もこうして私のお守りの中にいる。抜け出せる間は無かったはずだ。

 

 

 

 

そんな事を疑問に思いながら、私は家に着くなり自分の部屋へ駆け上った。

そしてお守りから《欠片》を取り出す。

「…今日は何をするの?」

そう質問すると赤木さんは自信満々な声でこう言う。

【嬢ちゃんには実際にプロ雀士と打ってもらう。今からだ。】

どういうことだろうか。自分の中で真っ先に無いと思っていた筈なのに。まさか知り合いの幽霊でも呼ぶのだろうか?

【これはつい最近気付いたことだがな、どうやら嬢ちゃんを過去に飛ばすことができるらしい。】

「…は?」

【まあそんな顔すんなよ…でも実際できちまうんだから仕方無えさ。】

何を言っているんだ。そして何という御都合主義感。とうとうこの神域は時空をも超えてしまったのか。

【ま、モノは試しさ。行って来い。】

「え…」

頭の混乱が収まらない内に《欠片》が光り出す。私はその光に飲まれてしまった。

 

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???

 

 

気が付いたら私は見知らぬ部屋にいた。そこは薄暗かったが、無数の雀卓を見て、ここは雀荘だと確証した。

 

隣には何やらガタイのいいおじさんと如何にも悪そうな緑色の服を着たおじさんがいる。

 

そして目線を前に送ると緑色のおじさんの数倍悪そうなおっさん達がいる。所謂ヤクザだろうか。

その中で一際存在感を放つ男。優雅にタバコを嗜んでいて、その目は自信と殺意に溢れている。

何なんだこいつは、と思った矢先そいつが私に向かって

「さあ座りな、俺とのサシ勝負に勝てたら南郷さんの借金はチャラだ。」

と雀卓に座って言う。もしかしなくてもその目は私を見据えている。

そもそも南郷とは誰であろうか、と考えていたら

「頼むぞアカギ、お前ならできる…きっと勝てるはずだ…」

とガタイのいいおじさんが私の肩に手をやり言う。きっとこの男が南郷という人だろう。

ん?アカギ?赤木さんの事か?私は女だぞ、流石に間違えんだろ…

【これは俺の過去…俺が実際闘った相手とお前に打ってもらう。名は矢木圭次。ついでに今お前は他の奴から見ればガキの頃の俺に見えるようになってる。】

と脳内から赤木さんの声が聞こえる。頭がショート寸前の私にとってその声は助けだった。

【まあとりあえず打て。一応言っとくが俺はこの時自分の指を賭けて打っていたが、負けても指が飛ぶこたあねえよ。】

…前言撤回する。助けではなくただの脅しだった。




赤木は時空を超えました。設定が唐突すぎますが知りません。
次回から麻雀します。

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