宮守の神域   作:銀一色

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大阪編ラストですー


第137話 大阪編最終話 恥ずかしいの共有

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視点:小瀬川白望

 

 

「・・・じゃあ決めようか。竜華、セーラ……」

 

赤い割り箸を引いた怜を廊下で待機させ、ドアを閉める。そうして、部屋の中央に座っている竜華とセーラに向かってそう言った。しかし、私の格好が格好だけにどんな事を言っても私がただ間抜けな感じがしてならない。そりゃあ背中をほぼほぼ露出するセーターを着ているのだから間抜けと言ってしまえば間抜けなのだが。

 

「せ、せやな……」

 

私の言葉に、セーラは私から視線を逸らしてそう言った。まあ、目のやり場がないから仕方のないことなのだが。どうしても注目は後ろが割れているセーターを着ていることによって露出する背中に集まるが、下半身も十分際疾い格好だ。セーター以外に身体を隠しているものはなく、そのセーターもそれこそ大事な場所しか隠していない。多分、この格好で外に出たら数秒で通報されるレベルでヤバいだろう。怜はなんでこんな服を持っているんだ……

色々と問い詰めたい気持ちはあるものの、今度は私が怜の服を決める番だ。セーラと竜華の様子を見る限り、怜が提案したのだろう。あれだけ恥ずかしい思いをさせられたのだ。今度は私がきっちりとお返ししなければならない。……とは言ったものの、この部屋には大量に服がある。それはタンスの数が物語っているのだ。そこから一着を探すとなると、相当面倒な話となってくる。竜華とセーラに任せようかとも思ったが、折角の仕返しのチャンスだ。ダルい身体に鞭を打って、探すことにしよう。

そうして私たちは言葉も交わさずに、各自近くにあるタンスを虱潰しに捜索し始めた。

 

 

「こんなんどうや?」

 

それから探すこと数分、色々な案が出た。しかし、なかなかこれだ!というものは出てこない。露出度が高すぎて、まるで布切れのような服も見つけたが、これは流石にアウトだろうと見なかったことにした。暗雲が立ち込め始めてきたと思ったその矢先、セーラがあるものを私と竜華の目の前に出す。数分が経ったことでセーラと竜華はもう私の格好に慣れたのか、なんの動揺もなく話す事ができている。

 

「なんやこれ……水着?」

 

竜華がセーラが持ってきたものを広げてみる。するとそれはいかにも海とかの砂浜で女の人が着てそうななかなかに際疾い水着であった。私のように明らかにおかしい露出ではなく、ストレートな露出ではあるが、それでも相当露出度が高い服だ。

 

「異議なし……」

 

「ウチもや」

 

 

そうして私と竜華はその服に賛成し、全会一致で可決となった。私たちはドアを開けて、怜が待っている廊下へと出る。怜は出てきた私たちを確認すると、「ハア……」とため息を吐いてから部屋へと入る。まあ、最初からまともな服は用意されてないと理解しているのだろう。私もその覚悟はあった。私の場合は予想の斜め上を行ったが。部屋に入った怜は、ドアを閉める。私はそんな怜を見ながらどんな反応をするのかな、と思った。

 

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視点:園城寺怜

 

 

(・・・なんやこれ)

 

 

ウチは部屋に置いてあった水着を広げながら、心の中でそう呟く。水着……あの「NAGANOSTYLE」では無かっただけまだマシではあるが、水着というのもいかがなものだろうか。水着というのは本来プールや海に行くときに着るものだ。それに対して今ウチがいるのは室内。そして季節は冬。どう考えても水着を着るのはおかしい。何より恥ずかしすぎるのだ。

 

(せやけど……ウチもイケメンさんにあのセーター着せたしなあ)

 

だが、ウチもさっきイケメンさんにあの露出度が高い「童貞を殺すセーター」なるものを着せたのも事実だ。実際、あれを着たイケメンさんの姿はやはり官能的であり、思わず鼻血が出てしまうかと思った。だが、あれを着た時イケメンさんはきっと恥ずかしかっただろう。そう考えればウチだけ特別扱いということはできない。腹を決めたウチは身につけてあった服を全て、下着まで脱いで全てをさらけ出す。もしこの状態でイケメンさんが部屋に入って来れば……みたいな妄想をしながら、置いてあった水着を身体に身につけていく。

 

 

「入ってきてええで」

 

そうして脱いだ服を畳んでから、ウチは廊下にいる皆を呼ぶ。それを聞いた皆はドアを開けて部屋に入り、ウチのことをまじまじと見つめる。なるほど、さっきイケメンさんはこんな気持ちであったのか。そんなにまじまじと見られるととても恥ずかしい。

 

「怜……」

 

「イケメンさん……!」

 

ウチはそんな恥ずかしさをどうにかして紛らわせようとして、イケメンさんに向かって抱きつく。背中がパックリ割れているセーターを着ている少女に室内なのに水着姿でいる少女が抱きつくという、なんとも異様な光景であったが、そんなことは御構い無しだった。

 

「イケメンさん……あの時のイケメンさんが感じた恥ずかしさ、今なら分かるで……」

 

ウチはイケメンさんに向かってそう言う。いきなり抱きつかれてそんな事を言われたイケメンさんは最初は驚いていたが、イケメンさんもぎゅっと抱きしめ返してきてウチに向かってこう言った。

 

「分かってくれて嬉しいよ……怜」

 

そうして、ウチとイケメンさんは互いに見つめ合い、罰ゲームを受けた者同士にしか分からない感覚を共有する。しかし、まだこれでは足りない。この感情を、もっと沢山の人に知ってもらいたい。そういう理由付けをして、ウチとイケメンさんは罰ゲームを免れた竜華とセーラの方を振り向き、二人の方に近づいていった。

 

「ちょ……なんや!?」

 

竜華とセーラはいきなりのことに驚いているが、ウチらは御構い無しに二人に近づき、服を強引に剥いで行った。そうしてウチとイケメンさんで即興で選んだ服を着せる。竜華にはウチとイケメンさんのように露出が高い服、セーラにはいかにも女の子が着そうなひらひらした服を着させた。

 

 

「ハア……最悪やホンマ……」

 

「これ……ちょっと際どすぎやないか?」

 

 

そうして、部屋には三人の露出魔とひらひらした服を着た女の子というなんとも混沌とした状況が生み出された。全員が同じ恥ずかしさを知ったところで、このファッション対決もとい罰ゲーム大会は終了した。

 

 

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視点:小瀬川白望

 

 

 

「じゃあ、またね……」

 

あの罰ゲーム大会から時間が経ち、もう夕暮れとなったしまった。結局、帰る直前まであの服装で過ごすことになり、全員目のやり場に困りながらもなんとか過ごすことができた。

一時の感情とはいえ、大変な事をしでかしたものだ。怜は痛み分けという事でともかくとして、巻き込んだ竜華とセーラにはあとでちゃんと謝っておこう。

 

「またなー」

 

怜がマンションのエントランスの出入り口で手を振る。セーラと竜華は私と反対方向に歩き始めた。私はそんな二人と怜を見て、今日は色々あった一日だったなと半ば適当な振り返りをしてから、予約してあるホテルへと足を進めた。




次回は奈良編!
王者さんと阿知賀組ですかね。

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