宮守の神域   作:銀一色

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はい、大阪編です。
アンケートは今日までです!


第136話 大阪編 ㉒ セーター

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視点:小瀬川白望

 

「・・・誰当たったん?」

 

そういって、怜が私たちのことを見る。まあ当然ながらセーラと竜華が「当たった」というわけが無いので、私は割り箸の先端部分が見えるようにして割り箸を置いた。

 

「はあ、私か……」

 

私は小さなため息を吐いてから、よっこらせと体を持ち上げるようにして立ち上がる。やれやれ、まさか一発目から当たりを当ててしまうなど、全くもってついていない。

 

「まあ、任せときや!イケメンさん!」

 

怜はそういってやけに嬉しそうな表情を浮かべながら、廊下へと続くドアに私の背中を押して誘導する。しかし何故だろうか、怜の微笑みを見ているとあんまり信頼できない気がする。

念のため、廊下に出る前に私は怜に向かってこう言った。

 

「あんまりダルくないのにして……」

 

しかし、怜は俄然その微笑みを浮かべながら私の問いかけに対してこう返してきた。

 

「まあ、楽しみにしとくんやで」

 

そういって怜はドアを閉め、私は廊下で待機することにした。もう何をしようが私は怜たちが選んだ服を着るほかない。せめて季節のあった服装にしてほしいなと心の底から願い、黙って待つことにした。

 

 

 

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視点:江口セーラ

 

 

「・・・さあ、決めるで」

 

ドアを閉めた怜が、下衆な笑みを浮かべながらオレらに向かってそういった。まさか自分もシロが一発目で引くとは思わなかったので、内心びっくりしていた。

 

(怜の言ってたことがまさかもう起こるとはなあ……)

 

そして、先ほど怜に耳打ちされて言われたことを思いだす。怜はあの時、オレに向かってこう言ったのだ。

 

『イケメンさんのごっつカワイイ姿、見たいやろ?』

 

そう、そんなことを自分に言ってきたのだ。確かに、自分が似合わない服を着るかもしれないというリスクもあったが、シロの可愛い姿を見れると考えれば、腹をくくるしかないだろう。そうして半ば適当気味に承諾したが、まさかそれが一回目で起こるとは。

そんなことを考えていると、怜は自分と竜華の目の前に大量に服を置いた。やはりオレが思っていた通り、怜が持っている服は自分には合わないような服ばかりだった。内心自分じゃなくてホッとするものの、本当にシロに半強制的に着せるのを自分が決めていいのかと罪悪感が背中を這いずり回るが、やるしかない。やるしかないであろう。

 

「よっしゃ!決めるで……怜、竜華!」

 

半ば自暴自棄になりながら怜と竜華に向かって言う。怜と竜華はその言葉に対しコクリと頷き、服の山からシロに着させる服を選び始めた。

そうして服を選び始めること数分が経ったが、なかなか決まらず場は膠着していた。しかし、そんな膠着は怜が持ってきた服によって破られた。

 

「なんやこれ?」

 

そういって竜華が怜の持ってきた服を手に取る。既にその服が異常だというのは分かるのだが、よく見てみるとそれ以上にその服は異常だった。

 

「ちょ……ちょい待ちや。なんやこの服!?こんなん布切れやないか!」

 

そう、その服は明らかに露出が高いものだった。というか、竜華が言うようにこれはもう服としての機能が果たせないほど露出が高かった。まさに布切れと言えるような服であった。

怜曰く、「NAGANOSTYLEや」とかわけのわからない事を言っていたが、長野にこんな服があるとでも言うのだろうか。実際怜も貰い物でしかも着たことがないらしい。

 

「そ、それはアウトやろ……」

 

オレもすかさず意を唱える。だめだ。その服は季節的にも、色々な意味でも危ない。そんなもんを着せられるなんて、考えただけでも寒気がする。そう思うほどやばいのだ。多分、こんな布切れを好んで着る人間などいないであろう……そうであると信じたい。

すると怜は「ええ……竜華とセーラがそう言うんならしゃあないなあ」と若干心残りがあるような言い方をしながらも、布切れ……じゃなくて服をタンスへとしまった。

 

「じゃあ、これならええやろ?」

 

すると怜はもう一枚服をオレと竜華の目の前に出す。一見普通のセーターであったが、怜が裏側を見せるとその異常性が明らかになる。

 

「んなっ……」

 

そう、そのセーターはホルターネックで背中が大きく開いていた。それが何を意味するかというと、つまりそれを直で着れば背中がぱっくりと露出するということだ。いや確かに、さっきの布切れに比べれば露出度は減ったように見えるが、それを考慮しても明らかに露出は高い。

 

「なんでこんなん持っとるんや……」

 

思わずそう言ってしまうほど変わった服であった。さっきの布切れもそうだが、一体なぜこんなものが怜の家にあるのかが分からない。すると怜は「オカンが持ってたんや」という。だが、いくら怜のオカンだからといってなんでこんなのを持っているのかという疑問はまだ残っている。

 

「・・・これなら仕方ないなあ」

 

すると隣にいる竜華はそんなことを言った。オレは「ハァ!?」と言ったが、ここで怜の表情が邪悪に微笑んでいるのが見えた。もしや、さっきの布切れは囮で、この本命のセーターの印象を薄くするという作戦だというのか。肝心の竜華は全く気付いていないようだが、気付かない方がおかしいであろう。これも怜が竜華のことをよく知っているということなのだろうか。

 

「じゃあ、決まりやな!」

 

オレの同意を聞く前に、怜は決定しようとする。もう何を言っても止まらないだろう。心の中でそっとシロに向かって謝りながら「せ……せやな」と言った。

そして残りの下半分は二、三分でトントンとすぐに決まった。いや、決まったと言うのには少し語弊がある。どういうことかというと、下半身に装着する服は必要ないとなったからだ。その例のセーターだけでも必要最低限の箇所を隠す事ができるため、シロが着る服はあの背中がパックリ割れたセーターだけだ。異議を唱えようとしたが、もう怜の暴走を止めることはできなかった。そうして、オレたちはその例のセーター以外の服をタンスにしまった。そしてオレたちは廊下へと出た。

 

「じゃあ、イケメンさん。部屋に置いてある服をしっかり着てなー」

 

怜がそうシロに言って部屋に入れようと促す。そうして部屋に入ろうとするシロの肩に手を置き、「・・・すまん」と言って部屋に入らせた。彼女はなんのことを言っているのかわからなかったようだが、まあすぐに分かるだろう。すまない。

 

 

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視点:小瀬川白望

 

 

 

(服……ってこれなのかなあ)

 

部屋に入ってまず目に入ったのが、セーターらしき服だ。いや、というかこのセーターしかない。しかも案外普通の服かと思ったら、それを着ようと思ったらまさかの背中の部分がぱっくり割れている。それに加えてこれ以外に着るものがない。つまり、これを着れば背中がほぼ全て露出してしまうのだ。下半身も必要最低限の箇所以外は露出してしまう。これでは寒くて凍え死ぬのではないかとも思ったが、冬であるということを考慮しているのか、さっき部屋にいた時よりも暖房が効いていた。いや、確かに寒くないから着れるけど……

 

(・・・仕方ないなあ)

 

文句を言いたくもなるが、もう後に退くこともできない。仕方なく私は服を脱いで、そのぱっくりセーターをはじめとした服をどんどん着て行った。そうして着た姿を鏡で確認したが、やはり非常に恥ずかしい。

 

「ダル……」

 

思わずそう呟き、ドアに向かって「入っていいよ……」と声をかける。すると私がそう言った刹那、怜がドアをバン!と開けて勢いよく入ってきた。

 

「おお……ええなあ」

 

怜がそう言って私のことをまじまじと見つめる。怜の後ろにいる竜華とセーラも、顔を赤くしながら私のことを見る。私はもうヤケになったのか、先ほど使った割り箸を怜に渡した。

 

「・・・もう一回やろう」

 

そういって先ほどのように取る割り箸を決めて、一斉に割り箸を引く。そうして割り箸の先端を見ると赤くは塗られておらず、普通の割り箸であった。まあさすがに二回連続はなかったか。

 

「あ……」

 

そうしてホッとしていると、怜がそう呟いた。私たちが一斉に怜の方を見ると、怜の持つ割り箸の先端部分は赤く染まっていた。

私はそんな怜に向かってこう耳打ちした。

 

「しっかりお返しするから……」

 

 

 

 




次回かその次で大阪編は終わりですね。
セーターに関しては、童貞を殺すセーターで調べればいくらでも出ると思います。書きたかっただけです。

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