宮守の神域   作:銀一色

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大阪編です。まさかの3時に起きたので、パパッと書きました。早起きは三文の得といいますしね((
怜&竜華+……?


第129話 大阪編 ⑮ チョロい

 

 

 

 

 

 

 

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視点:小瀬川白望

 

 

末原恭子さんから貰ったメモ用紙を大切に保管し、怜と竜華との待ち合わせ場所へと歩く。そうして歩いている最中、ふと怜と竜華から聞いた話を思い出した。

 

(そういえば……初めて会う子も来るんだっけ)

 

そう、今日私が会いに行くのは、怜と竜華だけではないという事だ。怜と竜華が中学生になってから知り合った子が、たまたま今日一緒にいるという事で、それで私とも会うというのだ。確か名前は江口セーラっていう人。彼女の事は怜や竜華から聞いた情報しか知らないため、彼女が一体どういった雰囲気なのかとか、どんな風貌なのか全く予想すらできないのだ。私はこれまで多くの知らない人たちと関わって友達になってきたが、それは全て偶然……たまたま出会ったからである。故に予め知らない人と会うという事がわかっているという事は、私を結構緊張させるものだったりする。まあ、それは彼女も同じだ。写真とか私の姿を何かしらで見せているかどうかによって変わるが、私も彼女の事を知らないのと同様に、彼女も私の事を知らない。そんな変に緊張しなくても大丈夫だろう。多分。そもそも江口セーラさんは怜と竜華の友達であるのだ。少なくとも悪い人ではないだろう。

 

(まあ……多分大丈夫でしょ)

 

私はそう思いながら、どんどんと約束の場所へと両足を進めた。時刻は10時の少し前。そして集合時間は10時となっている。あまりここから集合場所まで遠くはないため、焦らずとも間に合うだろう。とは思いつつも、本音はダルいのにも関わらず、私はほんの僅かだけ歩くスピードを速めた。

 

 

 

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視点:小瀬川白望

 

 

 

「おはよ……」

 

 

 

そうして、私は待ち合わせ場所へと無事到着する。現在時刻は10時ちょうど。さっき少し歩くスピードを速めなければ危うく遅れていた事になる。別に大丈夫と思って歩くスピードを速めたが、意外にもここでそれの恩恵を受ける事ができたようだ。

私が少し前にいる既に到着していた怜と竜華……そして恐らく江口セーラさんに向かって挨拶する。それを聞いた三人は一斉にこっちに振り返った。そして怜は迷わず私に向かって走り出した。あれ、病弱じゃないのかなとかも思ったが、そんなに速くない走りを見て、ああ成る程と合点が行く。彼女なりの早く私に会いたかったという精一杯の意思表示なのだろう。私は無事に怜を受け止める事ができた。まあ、末原さんの時はイレギュラーであったが故にそのまま倒れてしまっただけで、ちゃんと予測と準備ができればただでさえ軽い怜を受け止めるという事は大した事ではないし、何ともない。怜は私に抱きつくと、抱きついたまま顔を上げて私と目を合わせる。

 

「おはようやで、イケメンさん」

 

そして、そのままの体勢で挨拶を返してくる。相変わらず、私の事を名前で呼ばず「イケメンさん」と呼ぶ怜。まあ、怜らしいといえばらしいのかもしれない。私は怜の頭を撫でながらそんな事を考える。すると、竜華と江口セーラさんだと思われる人物の二人が怜の後を追うようにして私の元へやってくる。

 

「おはようや、シロさん」

 

竜華が手を振りながら挨拶をする。それに合わせて、私も手を振り返す。まあ、ここまでは別に何の問題もない。むしろ問題はここからだ。

 

「……」

 

そう、江口セーラさんだ。こうして目線を合わせている今も、何て声をかければいいのか分からず、私と江口セーラさんの間には妙な空気が流れている。江口セーラさんは結構厳格な表情で私の事を見つめてくる。あれ、なにかしたかなとかさっきの自分の行動について振り返るが、全く身に覚えがない。

するとそんな空気を見かねたのか、竜華が江口セーラさんの背中を肘で突つく。

 

「ちょ……何するんや竜華っ」

 

「何緊張しとんやセーラ」

 

成る程。どうやら厳格な表情をしていたというよりは、緊張して顔が強張ってしまったという方が正しいだろうか。江口セーラさんの見た目は結構俗に言うボーイッシュ的な服装で、いかにも洋榎のようなフレンドリーっていうか何ていうか、そういう部類だと思っていたが、案外純粋な子なんだな、と心の中で思う。まあ、相手も自分と同じで緊張しているという事が分かったので、せっかく竜華がお膳立てしてくれたのだ。私は江口セーラさんに向かって右手を差し出した。

 

「・・・小瀬川白望。よろしく」

 

すると江口セーラさんは一瞬だけ躊躇ったような表情を見せたが、すぐに私の差し出した右手を掴んだ。

 

「お、俺は江口セーラ。よ、よろしゅうな」

 

やはり相当緊張していたのか。ぎこちなさが全面的に出ている。まあ、自分も会うまでは結構緊張していたので、その気持ちは痛いほど分かるのだが。

そういえば、江口セーラさんは麻雀を打つのだろうか。まあ怜や竜華の友達だと言っても、それが即ち麻雀を打つ雀士であるという事にはならない。まあ江口セーラさんが麻雀を打たないとしても、別に竜華と怜だけでも問題は無いのだが。恐らく打たないにしても、怜や竜華に今日来た趣旨は話してあると思うし。

 

 

 

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視点:江口セーラ

 

 

 

(はあ……調子狂うわホンマ)

 

俺はしどろもどろな自己紹介を自分で振り返る。なんというか、自分でも情けないと思うほど緊張していた。別に、小瀬川白望さんと会う前までは緊張など微塵もしていなかった。普通に接するつもりでいたし、普通に仲良くなりたいとも思っていた。

 

(せやけど……なんやアイツ)

 

そう、だが実際会ってみてどうだろうか。予想していたのよりも何倍もクールでカッコいいではないか。怜は彼女のことを「イケメンさん」と呼んでいるが、まさかホンマにイケメンさんだとは思わなかった。自分も自分で女みたいな格好はしていないが、彼女は普通の格好でもカッコええと思わせるほど、クールな顔をしていた。というより、自分は何故彼女を最初見たとき、俺はそう思ったのだろうか……別の事が第一印象であれば、さっきのよりももっとマシな挨拶もできたかもしれない。

 

「セーラ?どないしたん?顔赤いで」

 

そしてそんな苦悩すす俺に向かって小瀬川白望さんに抱きついている怜から、そんな事を言われる。ハッとして自分の手を頬にあてる。自分でも今赤面している事がわからなかった。なんだこれ、こんな気持ちになったのは初めてだ。

 

(それにしても……怜、ちっとばかし羨ましいなあ)

 

ふと彼女に抱きついている最中の怜を見て、そんな事を考える。自分も彼女と仲良くすれば、いつかああいう風になれるのだろうか。そこまで考えて、今、自分が何を考えていたかを冷静に分析する。今、自分は間接的に彼女に抱きつきたいと思ったのか……?そう考えると、また自分の顔が更に赤くなるのが今度は自分でも分かった。怜も彼女も、不思議そうに自分の表情を見るが、自分の腕で自分の顔を隠し、赤面した顔を見せないようにする。

 

(はあ……なんなんや一体……)

 

どうやら、今日は普通に過ごすことは少しばかり難しそうだ。そんな事を察した瞬間であった。

 

 

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視点:園城寺怜

 

 

(・・・ほーん?)

 

ウチは赤面するセーラを見て、何かを察する。竜華とイケメンさんはなんで赤面しているのかわかってなさそうだけど、ウチにはその原因は分かる。痛いほど分かる。

 

(っていうかセーラちょろ過ぎやろ……)

 

が、それと同時にセーラがちょろ過ぎるという事も思った。流石に、この僅かな時間で惚れるとか、普通は有り得ん……いや、イケメンさんなら分からないか。というより、実際ウチも若干一目惚れ感はある。そういった意味では、仕方ないというべきか……?

 

(まあ、セーラ……ウチは負けへんけどな)

 

そうして心の中で、親友であるセーラに対して宣戦布告した。セーラにも、他の連中にも負ける気はない。そうしてイケメンさんを抱き締める手を強くし、精一杯の力で抱き締めてから、手を離した。

 

「ほな、行くで。イケメンさん」

 

そうして、イケメンさんの右手を大胆に掴み、ウチらは歩き出した。

 

 

 




次回も怜&竜華&セーラ回
前話に続いて連続でオトすシロ……確実にパワーアップしてますねこれは……
嫉妬戦争待った無しですね(白目)

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