宮守の神域   作:銀一色

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なんか今回は長々と自分の思うことを綴っただけ感が半端ないです。麻雀要素全くないですし。
色々な意見があると思いますが、まあ暖かい目で見てくださると嬉しいです。
(因みにアンケートやってます。詳しくは活動報告にて!)


第123話 大阪編 ⑨ 誤解、再確認

 

 

 

 

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視点:神の視点

 

 

(・・・確かに成長したけど……甘いね。洋榎……)

 

南二局、配牌を取りながら小瀬川白望は愛宕洋榎の事を見てそう心の中で呟いた。そう、確かに愛宕洋榎は俗に言う『人外』の道に足を乗せた。だがしかし、それではあくまでも人間から少し能力を伸ばしただけの、異端止まりにすぎない。『人外』と評してはいるものの、まだまだ赤木しげるという名の『神域』には遠く及ばず、彼と比較すれば『人外』もまだまだ人間であると言っても差し支えないだろう。というより、及ぶ及ばないの話ではないのかもしれない。まず根本的な感覚、感性が違うのだから。赤木しげるのような『神域』はどのような考えをしているのか、と疑問に思うのは仕方のない事だろう。無論『人外』たちもそう思う。だが、その時点で『神域』に追いつくことは以ての外、足跡すら追う事もできないだろう。

無論、『人外』の中でも格差はあるし、全員が全員同じ強さというわけではない。麻雀初心者の頃ではあるものの、赤木しげるを後一歩のところまで追い詰めた市川や、当時現役の王と呼ばれていた原田克美、赤木しげるが現れるまで裏世界最強と言われていた曽我三威、たった一度ではあるが、赤木しげるに勝利した天貴史。これら四人はその中でも最上位に位置する存在である。サマは当然の事、ヒラで打っても現在の麻雀のプロと言われる連中には十分余裕を持って勝てるだろう。だが、そんな彼らでさえも赤木しげるの、『神域』の前には霞んでしまうのだ。誰一人赤木しげるの事を完全に理解できた人間はいない。そういった意味でも、赤木しげるを本当に理解した人物は赤木しげるが唯一同類と認めた鷲巣巌以外にはいないだろう。まあ彼は『神域』『人外』などの枠組みとはまた別の部類なのかもしれないが。

極論を言ってしまえば、どれだけ『人外』の中で位をあげても結局のところ『神域』には届くわけもないのだ。そして更に言ってしまえば、『神域』になるということはつまり『赤木しげる』という存在と同列になると同義である。そもそも赤木しげるが『神域』に辿り着いたのではない。むしろその逆、赤木しげるという存在そのものが『神域』であるのだ。故に『神域』というものは『人外』の延長線上、というわけではない。全くもって別の時空に存在している。それを愛宕洋榎は……というかほぼ全ての『人外』たちは誤解しているが、いつまでたっても資質のない者は一生『人外』という枠で収まり続ける。それは小瀬川白望もそうだ。前に小瀬川白望は、辻垣内智葉が『神域』の域に入ったと思っていたが、それははっきり言って全然違うものだ。その証拠にその後辻垣内智葉は小瀬川白望に対等に戦えていたわけではなかった。言い代えるのならば、辻垣内智葉が起こしたのはあくまで『人外』を極めかかっただけ。だが何度も言うように、そこに新たな境地はないし、どれだけ『人外』の道を進もうとあくまでそれは『人外』。『神域』に届くことは不可能。鳥がどれだけ速く飛んだとしても、地球という鳥カゴからは出られないように、資質のない者もまたその鳥カゴから出る事はできないのだ。というか、そういう人間がほぼほぼ10割を占めているだろう。

そういう意味では、小瀬川白望は鷲巣巌と同じレベルでのイレギュラーな存在と言える。『人外』を極めるよりも、ただひたすらに『神域』を目指しているイレギュラー。逆に言えばそれほどのイレギュラーでもない限り、赤木しげるの域に達する事はできない。

つまりそれほど赤木しげるという存在はそれほど遠い存在であるという事だ。小瀬川白望の存在によってそれが安い存在であると思われがちではあるが、究極の話現時点までに赤木しげるに敵うものはいない。それは麻雀以外にも言える事だ。多分、彼以上に自分を優先して生きてきた者は存在しないだろう。一番自分を捨てる覚悟でありながら、一番自分を大切にしてきている。それは矛盾が生じてしまうかもしれないが、事実そうであった。少年期の時点で既に自分の死も厭わない狂気を有していたし、赤木しげるが自殺をした時は自分を自分のままでいさせたかったために自殺を決行したのだ。

結局のところ何が言いたいかというと、皆はまだまだ赤木しげるというものを理解できていないのだ。その誤解に気づく事ができた小瀬川白望は、改めて赤木しげるとの差を痛感させられる。まだまだ自分も未熟者、親友相手と多少過大評価はしてしまったとはいえ、軽々しく『神域』の片隅に入るなどという言葉は使えない。そもそもまだ自分もその『神域』に達してはいない。だからこそ今こうして武者修行をしているのだという事を再確認する。

 

(だからこそこんなところでは負けられない。そろそろ終わらせようか……)

 

 

そう心の中で呟いたあと、本気で威圧を卓に向かって放った。その瞬間全員の顔が歪む。いくら『神域』にまだ達していないとはいえ、その『神域』を師としている小瀬川白望の威圧は凄まじいもの。逆に、これほどのプレッシャーを受けてまだ倒れないでいる三人のガッツを評価すべきか。

 

そして結論から言うと、この勝負は小瀬川白望の圧勝だった。南二局では三巡跳満を愛宕雅枝に直撃させ、その後は三倍満ツモと再び跳満を、今度はツモ和了りで終了した。勝負が終わると、小瀬川白望は一人平然と椅子から立ち上がって、「ありがとうございました」と礼をする。それに対して愛宕家三人組は、全身を汗で濡らし、息を切らしながら深く背もたれに凭れかかる。後ろにいる愛宕絹恵は、驚愕したような目で小瀬川白望の事を見ていた。

 

「色々と今の勝負はためになりました……」

 

そう小瀬川白望は三人に向かって言うが、三人はもはやそれどころではない。まあそれを承知で小瀬川白望は言ったのだが。

確かにこの勝負、小瀬川白望にとってとてもためになった勝負であった。勝ちそのものにためになったものは然程ないが、この勝負によって自分と赤木しげるとの立ち位置を再確認できた。それだけでもこの勝負はとても意味のあるものであろう。

 

(まだ足りない……)

 

 

 

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(【やっと分かってきたじゃねえか……自分がどれだけ普通の道から外れているか……】)

 

小瀬川白望がそういった事を思った時と同時に、小瀬川白望の首にかけられている手づくりのお守りの中に入れられている赤木しげるはそんな事を思っていた。

そう、今まで小瀬川白望は勘違いしていた。道は外れていないものの、今自分が進んでいる道が普通の、皆が通る道であると誤解していたのだ。そう、赤木しげるは言うまでもなく偏っている。それこそが『人外』を極めても赤木しげるにたどり着く事ができない理由なのだ。

そう、自分が偏っているという事を自覚しなければいけない。その自覚が今まで小瀬川白望には無かった。それを教えてあげるのは簡単だ。だが、それでは凡夫止まり。自分で気づく事が必要だった。

だからこそ、ここで小瀬川白望がそれに気付いたのは大きい。これを契機に、赤木しげるにより近づくこととなるだろう。

小瀬川白望が、どんどん自分の同類と化していく事に赤木しげるは喜びを抱く。いつか、自分と肩を並べるのかと思うと、楽しみで仕方ない。

 

(【まあ、負ける気など毛頭なしだがな……】)

 

 

 

 




インフレしそうだ、という意見をいただきましたが、今回『人外』では神域にはなれないという壁を設けて、赤木しげる、いわゆる『神域』を絶対最強としました。
まあ苦しい言い訳、後付け設定にしか見えませんが、私の文章力、機転力ではこれが限界です。申し訳ありませんでした。

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