宮守の神域   作:銀一色

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北海道編最終話と銘打っての完全な蛇足回。
次回からは善処します。


第114話 北海道編最終話 思わせぶり

 

 

 

 

 

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視点:小瀬川白望

 

 

 

「あ……」

 

爽と別れた後、新幹線が来るギリギリの時間まで雀荘を転々としながら麻雀を打っていた。そのおかげで私は駅のホームまで走って来るはめになったのだ。ギリギリ、とは言ってもまだ少し時間に余裕はあるのだが、万が一新幹線を逃してしまうことも無きにしも非ず、だ。

故に、私は体育の授業でも殆ど走らせない自分の足に鞭を打ち、走ってやってきたのだ。

だが、そんな足がパンパンとなっている私をホームで出迎えてくれたものがいた。当然のことながら余裕を持ってきたため新幹線の機体、ではない。

 

「シ、ロ……?」

 

そう、ホームで私を待ち構えていたのはまさかの智葉だった。だが、智葉から発せられる圧力は尋常ではないほどの圧力であった。まるで後ろからドス黒いオーラが飛び出ているかのように。しかし、そんなオーラとは裏腹に、智葉から発せられた声はいやに優しかった。いや、どう考えても声と雰囲気が一致していない。確かに智葉の口角はつり上がっていたが、目は完全に笑ってはいない。というよりむしろ怒っていた。

一体どうしたものか、と少しばかり考えたが、すぐにその答えは浮かび上がった。そう、昨日のホテルでの夜の事ばっかり思い出そうとしたせいですっかり忘れてしまっていた。確か私が爽をホテルに泊まらせるために智葉に電話した時、智葉は怒っていた?はずだった。

これで原因は分かった。しかし、そこからが全く分からないのだ。そう、あの時何故智葉が怒っていたか、である。今この最中も考えているが、一向に見えてこない。

 

(あっ……)

 

しかし、ここで私はある結論を導き出した。そうだ。これなら合点が行く。それと同時に、智葉に申し訳ないという気持ちが私の心を満たす。確かに、智葉があんなに怒るのも無理もない。これは完全に私が悪かった。

故に、私は頭を深々と下げる。そして智葉が私に何かを言う前に、私は智葉の事を思いっきり抱きしめた。そして私は智葉に謝罪の言葉を言う。

 

「智葉……ごめん」

 

 

 

 

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視点:辻垣内智葉

 

 

 

(な、ななんだとっ!?)

 

 

いきなりシロに抱きしめられ、思わず口をパクパクさせてしまう。なんということだ。あのシロが……私に……ハグを……もしかして私だけに……?そういう考えが頭の中を巡っていく。

 

(いや、いやいや!思い出せ!シロはどこの馬の骨かも分からん女と……その……ホ、ホテルに……)

 

そうだ。シロがそんな私だけに、などという思わせぶりな態度をとるわけがない。あの鈍いシロだぞ。そんなわけが……

だが、そんな自分に対しての必死の言い訳も、シロが私に対して次に放った言葉によって全て吹き飛んでしまった。

 

「ごめんね……智葉……分かってあげられなくて……」

 

え、いやいやいやいやいや……そんな馬鹿な。私の頭の中が真っ白になる。分かってあげられなくて、だと?それってもしや……

 

(こ……告白!?)

 

私の体が熱くなる。自分の顔だから分からないが、おそらく自分の顔は真っ赤に染まっているだろう。抱きしめられたことで少し周りの目とかが気になっていたが、今ではそんなことすら気にならなくなってきた。いや、気にならなくなったのではない。気にする余裕もなくなったのだ。

 

「ちょ……シロ、それって……」

 

私がシロに何を言うのかを聞こうとしたが、シロはそれを無視して続けた。

 

「ごめん……」

 

ああ、もう駄目だ。あまりの恥ずかしさに私の思考回路はショートしかけている。

そしてシロが口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「図々しく当たり前のようにホテルで追加で泊まれるようにしてって言おうとしてごめんね?」

 

 

 

「・・・は?」

 

 

思考が真っ白になる。だが、それはさっきまでの気分の急激な高揚による真っ白ではない。困惑の意味での真っ白ということだ。は?っていうことはさっきまでのあの良いムードは何だったんだ?

 

「智葉が大変だっていうことも知らずに……本当にごめん」

 

シロが更に続ける。いや、そういうことではない。それはもうどうだって良いのだ。私がわざわざこの北海道まで来るほど怒ったのは、見ず知らずの女と一緒にホテルに泊まったということだ。私の気持ちも知らずに、だ。

 

 

「し……」

 

私は口を開く。ありったけの声で。シロは意図的にやっていないのは確定として、そうだと分かっていても何故か私の気持ちが弄ばれたような感じがして、無性に腹が立った。

 

「シロのバカー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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視点:小瀬川白望

 

 

 

 

 

 

北海道から戻ってきて、はやくも数週間が経とうとしていた。北海道に行ってからも私は東北を泊まりで巡り、色んな経験を積めた……はずだと思う。旅の合間には智葉に頼んで賭け事もやってみたりと、怠惰の象徴である私が建てた計画にしては上手くいっている。・・・そういえば、北海道のあの時、智葉は何で怒っていたのだろう?私としてはアレしかなかったと思ったのだが、どうやら違ったようだ。しかもその事について赤木さんに【もう少し相手を思い遣ったらどうだ?】と笑われる始末。赤木さんにだけは言われたくないんだけどなあ……と思ったが、私には智葉が何故怒ったのか未だに分からないため、言い返すことができなかった。

因みにその後、新幹線内で爽からメールが来て、それを知った智葉がもっと声を荒げていた。爽と知り合いなのかなぁ……とそういうことを智葉に聞いてみたら、「うるさい!」と一喝されてしまった。本当に何があったんだか……

そういったことがあり、なんだかんだいってもう夏休みもこれで終わり。明日からは久々の学校生活が始まる。はあ、面倒だなあ……

 

 

 

次は冬休み。まだ確定ではないが、関西を中心に回ろうかと計画している。冬休みが始まる前には既に計画を完全に立てておき、智葉に頼んでおこう。

 

 

 




次回からは大阪編!
気合い入れていきたいですねー!

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