宮守の神域   作:銀一色

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中学生編です。


第3章 武者修行 (中学生編)
第101話 中学生活の始まり


 

 

 

 

 

 

 

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四月

 

 

「シロー!おはよー!」

 

「おはよ……」

 

 

暖かい日の光が私たちを照らし、桜が咲き誇る四月の朝。春休みが明け、今日は学校の登校日。まだ生活リズムが戻ってない自分の体に鞭を打ち、朝早くから家を出ていつもの胡桃と塞との集合場所へ行く。相も変わらず私が三番目であったが、それはまあ関係ないだろう。そして揃った私たち三人が学校へと向かって歩き出す。だが、私たちが今日から行く道は、今までとは違う道。そう、いつも歩いていた小学校への道、六年間変わることのない忌々しい通学路は今日からはおさらば。私たちは今日から中学生……つまり中学校への通学路を歩く事になったのだ。・・・まあ小学校への通学路が忌々しいとはいえ、中学校への通学路は実際は小学校より少し遠くなったので本当のところは小学校の頃の通学路の方が良いのだが。

 

(・・・始まる。中学三年間)

 

まあ今はそんな事どうでも良いだろう。問題は、今日から自分は中学生だということだ。中学三年間……私が武者修行をすると決めたこの三年間。この三年間をどう過ごすかによって私の目標の赤木さんに追いつけるかが決まってくる。現状に甘んじていては、赤木さんに追いつくどころか、同じ土俵に立つことすらできないだろう。悔しいけど、私はまだまだ赤木さんの足元にも及ばないと思う。全国大会を通してそれを痛感した。故に、もっと経験を積まなくてはならない。麻雀だけでなく、ギャンブルの経験も必要だ。赤木さんに聞いた話ではもともと麻雀をする前から命の保証がないチキンランやらをしていたらしい。それも13歳の時点で既に、だ。もしかしたらもっと小さい頃からやっていたのかもしれないけど。・・・まあ今のご時世、命を賭けた博打などできるわけないのだが、智葉に頼めば命までとはいかずともそれに近い事は出来そうな気もするけど……まあそれは後々考えることにしよう。もしかしたら智葉の家は危ない方じゃないかもしれないし。

ともかく私はこの中学生活を使って自分を鍛える予定だ。前にやった遠くの方へ行って麻雀を打ちに行くのがメインとなるだろう。そういう事を計画している事を話したら智葉が『旅費は任せろ』と言ってくれたので金銭的な問題はない。・・・本当に智葉には頭が上がらないなあ。

 

「じゃ、行こうか……塞、胡桃」

 

「「・・・うん!」」

 

 

二人にそう言って、私たちは中学校へ向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

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「・・・ねえ」

 

「何?」

 

通学途中、いきなり塞が私の方をジロジロ見て言葉を発した。服に何か変なものでも体についていたのかな、とか思っていると、塞が私から少し目線を逸らしながら小さくこう言った。

 

「・・・シロの制服、可愛いね……」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・えっ」

 

いきなりの事に私の時は一瞬止まる。そういう塞だって、私と同じ制服だし、どっちかっていうと私より似合ってるし……などと色々頭の中で思考が巡ったが、塞にかけるべき言葉が何も出ず三人の空間は沈黙に包まれた。……かに思えた。

 

「何言ってんの!塞!」

 

「うぎゃ!」

 

胡桃が塞に向かってツッコミを入れる。よりにもよって頭に思いっきりのチョップだ。しかも、思いっきり。チョップをモロに食らった塞が思わず頭を抱え、うずくまって胡桃の方を見る。

 

「イタタタタ……ってちょ、何すんのよ!胡桃!」

 

「うるさいそこ!そもそもシロが可愛いとか周知の事実だからいちいち言う必要なし!」

 

胡桃が胸を張って塞に指差して高らかに言う。いや、そんな自信満々に言われても私が困るんだけど……と口を挟もうとしたが、それを御構い無しに塞は胡桃に向かって言い放つ。

 

 

「そっ……そういう胡桃だって言おうとしてたのバレバレなんだからね!?」

 

「えっ……!?///」

 

「ほらー!顔赤くしちゃって、ねえ、胡桃サン?」

 

「う、うるさいそこ!!///」

 

 

 

 

(さっきから一歩も歩いてないけど、入学式に間に合うかな……流石に入学式から遅刻は嫌だなあ……)

 

二人の言い争いを遠目から見ていた私は、入学式に間に合うかどうかを考えていた。しかし、火のついた二人を私が止める事などできるわけがなく、私はただ二人の言い争いが早く終わることを見守るだけだ。

 

 

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(・・・!?)

 

二人の言い争いが始まってから数分が経とうとして、まだ終わりそうにないかなあと半ばどうでもよくなりかけていたその時、ふと背中に悪寒が走った。

 

「小瀬川さん!」

 

「・・・なに。宇夫方さん」

 

 

後ろを振り返ってみればそこには私や塞、胡桃と同じ制服を着ていた宇夫方葵が私のすぐ目の前に立っていた。そういえば宇夫方さんも同じ中学なんだ……小学校の卒業式の時に私に泣きながら抱きついてきたからてっきり違う中学だと思っていたけど、じゃあ何であの時泣いたんだか……

そして、突然やってきた宇夫方さんに控えめに言ってもびっくりした。さっきのさっきまで足音ひとつ聞こえなかったのにいつの間に私の背後までやってきたのか。忍者の類の人なのかな……

 

「いや、学校に行こうかなーって思ったら丁度小瀬川さんがいたからつい声をかけちゃった!」

 

宇夫方さんは私に笑って平然と言ったが、どう考えても偶然なんて嘘にしか聞こえないのは私が人を信じれない人だからなのか、それとも宇夫方さんの自業自得か。

 

「そう……」

 

とりあえず適当に返事をして、私は視線を宇夫方さんから塞と胡桃の方に向けた。二人は未だに言い争っているらしく、心なしか両人とも顔が赤く染まっているようにも見える。一体どんな事を言ったらそうなるんだか……

そう思っていると、宇夫方さんも二人の方を見て、何かを考えるようなポーズをとっていた。そして私に向かってこう言う。

 

「じゃあ……行こうか!」

 

「え?」

 

そう言って宇夫方さんは、突然行こうと言われて反応に困っている私の腕を掴んで更にこう言った。

 

「学校!ダッシュで行くよ、小瀬川さん!」

 

「えっ」

 

宇夫方さんは私の返答を待たずに私が背負っている学校の指定カバンを取って私の手で持たせ、そのまま私をいわゆる『お姫様抱っこ』で抱え、走り出した。何が起こっているのか整理が追いつかない私だが、取り敢えず塞と胡桃を置いてきてしまったという事はわかった。宇夫方さんに言って下ろしてもらおうかとも思ったが、宇夫方さんの出す尋常でないスピードがそれを妨げた。結局、私は心の中で塞と胡桃に謝り、そのまま宇夫方さんに学校に連れて行ってもらう事にした。

 

 

 

 

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「いっつも充電充電って、シロとスキンシップしたいだけでしょ!?」

 

「な、何てこというの!?///」

 

「全く……ってアレ?……あー!?シロがいない!?」

 

「えっ、そんな!?私たちを置いてったの!?」

 

「ぐぬぬ……ほら胡桃!行くよ!」

 

 

 

 

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中学校に着いてからも宇夫方さんと私のクラスが違う事を宇夫方さんが知って叫んだり、後からやってきた塞と胡桃にめちゃくちゃ叱られたり、初めて会うはずのクラスメイトから手紙を貰ったりなど、色々あったが無事入学式が無事終わり、家に帰宅し始めた。結局宇夫方さんとは違うクラスで、私と塞と胡桃は同じクラスという事となった。・・・まあそのおかげで朝の件に関しての説教がいつまでも続いてしまったのだが。

 

「はあ……疲れた」

 

「誰のせいだ、誰の」

 

そして思わず呟いてしまった事に対して塞がすかさずツッコミを入れる。・・・実際あれは私のせいじゃなくて宇夫方さんのせいなんだけど……まあ聞く耳なんて持たないよね……

 

(今年も疲れそうな一年になりそうだな……)

 

中学生活初日からこの疲労となると、先が思いやられる。武者修行の旅は学生なので夏休みや冬休みに行うしかないので、こういった日常生活で疲れるとなると一年中疲れっぱなしではないのかと初日から危惧しているが、まあどんなに疲れたとしても武者修行を緩めるような事はしないから別に関係ないのだが。そして私は最初の夏休み、何処に行こうかを頭の中で考える。

 

(・・・夏休み、最初は何処に行こうかな……)

 

 




次回はいきなり飛んで中学一年の夏休み編です。
中学生編は夏休み編→冬休み編を三回繰り返しみたいな感じで進行していきたいと思います。ネタが切れたら減るかもしれませんが。

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