宮守の神域   作:銀一色

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昨日はすみませんでした。
寝て起きたら治りました。これからは体調管理もしっかりしていきたいと思います。
今回ですが、病み上がり+異常なテンションで書いたため、色々おかしい部分があるかもしれませんが、脳内補完をお願いします(予防線)


第99話 決勝戦後 ① 表舞台にサヨナラ

 

 

 

 

 

 

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視点:小瀬川白望

 

「やっと終わった……」

 

対局室のドアの前で待ち構えていたメディアの人達の取材やらインタビューやらを一通り終わらせ、やっと解放された。どうやら他の三人も取材が終わったのか、廊下を埋め尽くさんとしていたメディアの人達は綺麗さっぱりいなくなった。

 

(にしても……照の変貌ぶりは凄かったな……)

 

取材の時にも色々あったのだが、中でも一番驚いた事は、照の取材時の豹変ぶりである。なんといえば良いのだろうか、いつものクールな態度とは打って変わって取材時ではいかにも明るい健やかな小学生っぽい態度になったのである。俗に言う営業スマイルとやらだ。これは後で聞いた事だが、本人曰く『本当に心の底から思っているから嘘は言ってない』らしい……それでもあの変わりようはもはや別人レベルなのだが。

 

「・・・やっと終わったか」

 

私が照の営業スマイルについて考え終わると同時に智葉が私に向かって言った。その口振りから見て、どうやら私が一番最後に取材が終わったらしい。まあ優勝した私が一番長いのは仕方の無い事ではあるが。

 

「いやーしっかし、シロちゃんはやっぱりいつも通りっちゅうか何ていうか……シロちゃんも宮永を見習った方がいいで?」

 

「・・・それはダルい」

 

「白望さんも私と表情筋鍛える?」

 

「ええ……」

 

というよりあそこまで変わるのは流石に無理だろう。表情筋とかそういうの関係無く……いやホントに。

 

「シロの満面の笑顔か……いや、シロにはあのクールさがあってこそカッコ良いのだが……どちらも捨て難いな。実に悩ましい……」

 

智葉が壁の方に向かって何かをボソボソ言っているが小さくてあまり聞き取れなかった。だが、まあ大方の予想はついてるのであまり言及はしないようにしておこう。

そう思った直後に智葉が正気(?)に戻ったらしくコホンと一つ咳払いをして、私に向かってこう言った。

 

「そ、そういえばシロは『記者会見』何を言うかもう決めてあるのか?」

 

え?記者会見?何を言ってるんだ智葉は。取材はあれで終わりじゃなかったのか。これ以上またあんなしんどいのやらされるとか聞いてないぞ。

 

「あれで終わりじゃないの……」

 

「さっきのは取りあえずのインタビューみたいなものだ。小学生とはいえ全国の頂点。それに加えてシロはあんな麻雀をしたんだ。たったあれで終わりじゃないだろう……さっきの記者たちが『詳しくは記者会見の時に聞く』みたいな事言ってたが……聞いてなかったか?」

 

 

前言撤回。・・・確かそんな事も言ってたような気がする。全然考えてないけど大丈夫かな。

・・・まあ別に隠すような事でもないし、"あの事"を公言するいい機会だろう。

 

「・・・考えておくよ」

 

「そうか。じゃあ記者会見の時に笑顔で言うってのは……」

 

「それは断っておく」

 

生憎だけどそれだけは有り得ない。私が拒否した瞬間智葉が残念そうな表情を見せたが、それでも私は絶対にやりはしない。

 

 

「じゃあ、それぞれ戻ろうか……」

 

 

取りあえず、閉会式にはまだ少し時間があるので、私はそう言って各々の場所へと戻るように促した。まあ各々とはいっても塞達のいる場所が他の人たちとは違うらしく、そこはどうやら智葉が設けた場所のようなため、私と智葉は一緒にその場所へと行く事になるのだが。

そんなわけで、私と智葉は一緒にその場所へ行く事にした。といっても私はその場所がどこかは知らないため、智葉について行くしかないのだが。

そして私が智葉について行っている途中、ふと智葉がこんな事を言った。

 

 

「なあ」

 

「・・・どうしたの」

 

「シロは中学生になったらどうするんだ?」

 

「どうするって……」

 

その事を記者会見の時に言おうかと思っていたのだが、今この場で智葉に言っていいのだろうか……

そう悩んでいると、智葉が続けてこう言った。

 

「宮永、中学では麻雀の大会には出ないそうだ」

 

「えっ……」

 

「色々あいつにも事情があったらしくてな。本来この大会も出ないつもりだったらしいが、親が小学最後という事で出場するよう勧めたらしい……」

 

 

何て事だ。確かに照は色んな事情があるとは何となく分かっていたが、まさかそこまで深刻な事だったとは……まさか照"も"だったとは。

・・・仕方ない。私も言うしかないだろう。

 

 

「智葉」

 

「ん?」

 

 

 

「私も……来年からは大会に出るつもりはないんだ」

 

「・・・」

 

 

そう。私も中学の大会、所謂インターミドルには参加する気は無かったのだ。確かにこの大会で得たものは沢山ある。今までに味わえなかった緊張感やプレッシャーも感じる事ができた。・・・だけど、それじゃ足りない。足りないのだ。私の目標は全国制覇ではない。あくまでも赤木さんを越えることが私の目標。それを達成するためには、大会に出る事じゃ足りない。だから、一度表舞台から降りて武者修行をすると決めていたのだ。無論、この事を人に言ったのは初めてだ。だからこれに賛同してくれるかどうかは分からない。

 

 

「・・・成る程。赤木しげるさんを越えるためか……そうだろ?」

 

だが、智葉は私の思っていた事をすぐに見抜いてきた。そして智葉は続けてこう言う。

 

「・・・マスコミの方にはその事だけ回して、今大会のシロに関する情報は全て規制させておく。・・・シロを追うようなマスコミ共が出てくるかもしれんからな。だから記者会見は止めだ」

 

「・・・ありがと」

 

それに加えて、智葉は後処理を殆どしてくれるようだ。しかも情報規制までするようで、そこまでやらなくてもいいけどと思ったが、他の誰でもない智葉がやると言うのなら智葉に任せよう。それにしても私のためにそんな事をしてくれるなんて、やっぱり智葉は優しい人だ。・・・たまに残念なところもあるけど、智葉に出会えて良かったと本当に思う。

 

「あとそうだ」

 

「何?」

 

「たまには私のところへ遊びに来い。いつでも歓迎してやる」

 

「・・・分かった」

 

智葉に対するお礼と言ってはあれだが、現在私のできるとびきりの笑顔で返した。本当なら恥ずかしくてやりたくなかったが、さっきの智葉の悲しそうな顔を思い出したら、やってあげてもいいかなと思ったからだ。・・・だがやはり恥ずかしいものは恥ずかしい。やった私は勿論、智葉も顔を真っ赤にして見つめ合う。

 

「シ、シロ……今の……」

 

「・・・もうやらない」

 

「そんな!もう一回、もう一回でいいから!」

 

 

 

 

 

 

 

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「ただいま……」

 

 

塞達のいる部屋に行ってドアを開けた瞬間、塞と胡桃がクラッカーを持ってこちらに向けているのが見えた。

そしてそれをクラッカーだと確認する間もなく、クラッカー特有のパン!という音が鳴る。そして目の前にはカラフルな色。

 

 

「「おめでとー!!」」

 

 

そしてクラッカーの音に遅れて塞と胡桃の声が聞こえた。体に直で紙テープを食らった私と智葉は、取りあえず体に付着した紙テープを払った。

 

「ありがと……」

 

 

【ククク……良かったな。優勝できてよ。そこのお嬢ちゃんもよく頑張った】

 

 

「ありがとう……赤木さん」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

その後は閉会式が始まるまで皆で談笑を始め、決勝戦の振り返りや、さっき智葉に言った事を話したりなどした。

 

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そして閉会式も何事もなく終わり、私はトロフィーや賞状を貰った。

閉会式後、私たちが帰ろうとした時、洋榎がカメラを持って猛ダッシュでやってきた。

 

 

「おーい!シロちゃん!」

 

「・・・何?」

 

「写真撮ろうや!決勝戦のメンバーで!」

 

そう言って洋榎より奥の方を見ると、智葉と照もこっちへ向かってやってきた。どうやら二人には既に話をしているようだ。

 

「じゃあチビッコ!カメラよろしくな!」

 

洋榎がそう言って胡桃にカメラを渡す。胡桃は自分がチビッコと呼ばれた事に不服があるようで、洋榎に向かって怒る。

 

「チビッコ言うな!」

 

「なんでや!どう考えてもチビッコやろ!」

 

「うるさいそこ!」

 

そう言った洋榎と胡桃のやり取りが終わったあと、洋榎含む私たちは並び、胡桃が渋々とカメラを構える。

 

「撮るよー!笑って笑って!」

 

「いつでもこいや!」

 

洋榎が私たちの肩に手をまわす。記念写真とはいえ、一体どんなポーズをすればいいのか分からなかったので、取り敢えずピースする事にした。

 

 

「はいチーズ!」

 

 

 

パシャ!という音が鳴り、フラッシュがたかれる。そして洋榎は胡桃のところに駆け寄り、今撮った写真を確認する。それに続いて私と智葉と照もその写真を確認するためカメラの元へ向かう。

 

「なかなかええんやないか?」

 

「確かに良く撮れてるな……一発目にしては。・・・相変わらず宮永とシロは真顔だけどな」

 

「仕方ないでしょ……ね?照」

 

「うん。しょうがない」

 

そして洋榎が胡桃からカメラを返してもらうと、私たちに向けてこう言った。

 

「じゃ、ウチが焼き増しして後で渡すから、でき次第メールで言う事にするわ」

 

 

ということは近い内に四人で集まる事になりそうだ。・・・しばらくは予定を入れないようにしよう。まあ、私が予定を入れることなど殆ど無いのだが。

 

「じゃあ……解散するか」

 

「じゃあな!また後日!」

 

「・・・バイバイ」

 

 

そうして、私たちはそれぞれ家に帰る事にした。私と洋榎は新幹線に乗るために途中まで一緒だったが、新幹線の行き先は真逆のため駅で別れる事になった。

 

 

 

 

「またな!シロちゃん」

 

「じゃあね……」

 

 

互いに手を振り、それぞれが乗る新幹線に乗った。そして新幹線に乗り、座席に座ると同時に、隣に塞と胡桃がいる事も気にせずにそのまま目を閉じた。

 

 

 

 

 

 




次回で小学生編は終わり……のはず!

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