宮守の神域   作:銀一色

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オーラスです。
次回で決勝戦が終わるかも……?


第97話 決勝戦 ㊺ 四槓子

 

 

 

 

 

 

 

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南四局 親:小瀬川白望 ドラ{西}

 

小瀬川 30,300

照 45,200

辻垣内 1,500

洋榎 23,000

 

 

 

「カンッ……!」

 

 

宮永照:手牌

{八} {111横1} {五五横赤五} {横西西西} {③横③③}

 

 

 

 

大明槓。宮永照、小瀬川のリーチ宣言牌の{1}を大明槓して四槓子嶺上開花という栄光へ向かって動く。小瀬川白望との最終決戦がとうとう始まった。

宮永照は四枚の{1}を右端に晒して、嶺上牌を王牌からツモろうと手を伸ばす。まず一牌目、ここで{③、西、五}のどれかをツモれば二回目の槓、加槓をすることができる。

宮永照には現時点では四回目の嶺上牌の{八}以外は何か分からない。そもそも、{③、西、五}のこれら三つが残っているのかすら分からない。他の三人が既に潰しているかもしれないし、ドラ表示牌に出てしまえばそこまでだ。一応捨て牌にはこれら三つの牌は無いのだが、参考程度にしかならないだろう。

そんな宝くじで一等を当てるような薄い確率だが、それでも宮永照は前へ進む。無事四回目の槓をすることができれば、勝ち。それ以外なら恐らく小瀬川が一回目のツモで満貫以上をツモって、負け。これ以上に無い単純なことだ。

無論、通常の宮永照……いや、宮永照がどんなに絶好調でもここから四回連続の槓はできないであろう。そう、()()()()()()()()

だが、今は違う。宮永照は一人ではない。咲、宮永照の妹の咲が宮永照へ力を与える。姉妹の力。宮永照自身も、一人では目標の四回連続の槓に……小瀬川白望には到達しないということは分かっている。しかし、二人なら……!二人なら小瀬川白望に並べる。二人なら小瀬川白望を越せる……!!

そして今、最後にして最大のチャンスを宮永照は、()()()()()()()は掴もうとしている……!!

 

 

王牌にある最初の嶺上牌を宮永照は右手で掴む。その牌は通常の何倍も重く、少し油断したら落としてしまいそうな重量であった。

だが、宮永照はその重圧を跳ね除け、一気にツモってくる。

 

 

 

(・・・花が咲いた……)

 

 

嶺上牌をツモる宮永照を真横から見た小瀬川白望は、宮永照が牌を引き入れた時に宮永照の手の軌跡に沿って花が咲いたような錯覚を見た。だが、それは錯覚ではないと小瀬川は直ぐに察知した。己が闇と同じような部類もの、異能の力であることも見抜いた。だが、その花は小瀬川の持つ闇のような禍々しさ、何かを壊すような重圧は感じられなかった。華やか、とでも言い表そうか。その花には確かな鮮やかであり、華やかが感じられた。

その華やかさに思わず小瀬川は感心してしまうが、それと同時に他者には分からないようのニイッと口角を吊り上げる。リーチ前には既に伏せていた手牌を見つめながら、嗤う。

 

(照……明らかに四槓子は過剰……既に付いている役の対々和で満足すべき……あの時の照の目線の先を見ると四牌目に和了牌があったんだろうけど……私がただ単に照にチャンスを与えると思う……?)

 

宮永照は今、前へ前へと前のめりな姿勢である。だが、その姿勢こそ小瀬川にとっては操りやすい良い姿勢だ。だからこそ、小瀬川は{1}をリーチ宣言牌として切ったのだ。

宮永照は、ツモるか、ツモらないかが勝負だと思っているが、実はそれは誤りである。本当の勝負所は宮永照が小瀬川の意図に気付くかどうかだ。

 

 

 

 

 

(・・・きた)

 

 

宮永照:嶺上牌

{西}

 

 

それを知らない宮永照。だが、ツモってきた牌は{西}。とにもかくにも、宮永照は次の嶺上牌へと繋げる{西}をツモってきた……!

 

(後、二回……!!)

 

 

宮永照は{西}を既に右端に晒してある明刻となっている{西}に向かって横に叩きつける。

それが指し示すものは、{西}の加槓。

 

 

「カン!」

 

宮永照:手牌

{八} {111横1} {五五横赤五} {西横西西西} {③横③③}

 

 

 

新ドラ表示牌

{東}

 

 

 

宮永照は一回目の明槓によって生じる新ドラを捲ってから二回目の嶺上ツモを行うため、手を伸ばして嶺上牌を掴む。相変わらずの重量感だが、それをものともせず嶺上牌を自分の元へ引き入れる。

そして敢えて盲牌をせず、嶺上牌を目でしっかり確認する。

 

宮永照:嶺上牌

{五}

 

 

{五}。{五}……!!!宮永照、栄光の四槓子嶺上開花まで後一歩のとこまで到達する。無論、宮永照はこれも右端にある三枚の{五}へ重ねる。

 

 

「カンッ!!!」

 

宮永照:手牌

{八} {111横1} {五五五横赤五} {西横西西西} {③横③③}

 

 

 

新ドラ表示牌

{8}

 

 

宮永照が二回目の新ドラ表示牌を捲るとそこには{8}。だが、今の宮永照には槓ドラなどどうでもいい。嶺上牌。嶺上牌……!宮永照は自身に妹の力が加わっている事を胸に手を当てて確認し、息を深く吐いてから嶺上牌を掴むべく右手を差し出す。その右手には竜巻と、花が舞っていた。竜巻によって吹き飛ばされていく花。だが、その花は竜巻の暴風に耐えて、確かに宮永照の右手に存在していた。

そして宮永照は、嶺上牌を一気にツモる。不思議と、その嶺上牌にはさっきまでの牌とは打って変わって牌本来の重さであった。

 

 

 

 

 

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観客席

 

 

 

「ツモるんやない……!ツモられたらアカン……!」

 

宮永照が三度目の嶺上牌をツモろうと手を伸ばしたまさにその時、観客席では園城寺怜が両手を合わせて宮永照が和了牌、もしくは{③}をツモることのないように必死に祈っていた。隣にいる上埜、愛宕絹恵、清水谷竜華も、スクリーンを真剣に見つめていた。

というのも、小瀬川の手牌がリーチをする前に手牌を伏せていたため、一体小瀬川が何の待ちなのか分からないのだ。大部分はリーチ前からあった牌なので分かっているのだが、肝心の待ちとなっている部分が分からなかったのだ。だが、ある程度は推測できる。清水谷竜華は、頭の中で思考を巡らせる。もし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()(){()()}()()()()()()()()()()()()()。だが、もしその牌をツモってきたとしても、普通ならそうはしない。

 

(シロさん……ホンマに……?)

 

 

 

 

 

「・・・どう思う?白水」

 

そこから少し離れた席では、小走やえと白水哩はスクリーンを見ながら話し合っていた。

 

「どう思うって……そりゃあ小瀬川が勝つ事ば願うしかなか……」

 

それを聞いた小走はフフッと笑う。

 

「・・・そうだな。野暮だったな……」

 

この時、小走はいかにも平静を装っているが、実は内心心配で心配で仕方なかった。そもそも、平静であったらわざわざ野暮な事を白水に聞かないだろう。それを白水は察したのか、小走の質問に答えた後、小走に気づかれないように微笑んだ。やはり小走もなんだかんだ言って小瀬川の事が心配なのか、と。

無論、白水自身も小瀬川の事が心配だ。本人は気付いてないが、白水の手には力が入っていた。

 

 

 

 

 

 

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(ツモる……ツモって勝つ……!!)

 

 

 

多くの雀士が注目する宮永照の嶺上ツモ三回目、宮永照はツモった牌にかかる右手の親指をゆっくりとよける。

 

 

(三筒……!三筒……!!!)

 

 

そして親指を完全によける。そこに記されているのは黒丸二つと赤丸一つ。そう、それは{③}。{③}……!

宮永照、四槓子に必要な最後の牌、そして四牌目の嶺上牌である{八}をツモる権利が与えられる必要牌、{③}!!!

 

 

 

(来た……)

 

 

 

 

宮永照:嶺上牌

{③}

 

 

 

そして、宮永照はウイニングランを開始するため、{③}を晒してある明刻に重ねる。そして新ドラ表示牌を捲り、嶺上牌の{八}をツモるために手を王牌へ伸ばす。

 

 

 

「ーー」

 

 

 

 

その瞬間、誰もが宮永照の勝ちを確信した。誰もが小瀬川の負けを確信した。

だが、それを遮る声。

 

 

 

 

「・・・聞こえなかったか?宮永照……」

 

 

 

そう、その声を発したのは小瀬川白望。小瀬川が、宮永照のウイニングランを阻止した。

 




次回は決勝戦最終回(予定)!
最後にシロが言ったこととは……?
まあ、この状況で何かを言うといったらもうアレしか無いですよね。
ということで、あまり伏線とかは無いです。(今までにまともな伏線が無いといったら駄目です)

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