宮守の神域   作:銀一色

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オーラスです。今回は結構文がごちゃごちゃしてます……
最近ハーメルン内で咲-saki-の二次小説が増えて私大歓喜。


第96話 決勝戦 ㊹ 最後の勝負

 

 

 

 

 

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南四局 親:小瀬川白望 ドラ{西}

 

小瀬川 30,300

照 45,200

辻垣内 1,500

洋榎 23,000

 

 

『照魔鏡』、『加算麻雀』による役満、小瀬川の闇、振り返ってみれば半荘二回とは思えないほど長かった決勝戦もこれで遂に最終局。決勝戦後半戦南四局、オーラス。親の小瀬川は満貫ツモ、もしくは宮永照に7,700以上の直撃を当てる事ができれば逆転勝利となり、そのトップの宮永照はどんな形であっても和了ってしまえば逃げ切り優勝となる。三位の愛宕洋榎は宮永照に跳満直撃、それ以外なら三倍満。ラスの辻垣内は宮永照に役満直撃が各々の勝利条件である。これを見る限り、一見宮永照の方が圧倒的有利にも見えなくもないが、前局の南三局を思い出せばその考えは誤りであると言えるだろう。

だが、だからと言って小瀬川が有利ということにもならない。このオーラスが始まる直前に、宮永照に起こったこと。姉妹の絆によって奮起した宮永照は、小瀬川に最後まで闘う決意を抱いた。故に、まだ分からない。このオーラス、いったい誰が勝利を手にするのか、分からない。最後の最後まで分からないのだ。

 

 

キュィィィィィィ!!

 

宮永照の背後に位置する歯車が回転する。しかし、先ほどまでのとは全く異なる回転の仕方だった。一番大きな変化は音。今までは錆びた歯車を噛み合ってもいないのに強引に回すような軋む不快な音であったが、今回は違った。その音はもはや歯車とは思えないほど鋭く、まるで歯科医が歯を削る器具を使う時のような精密な音であった。これこそが、妹の力。姉の持つ最強とも言える能力は、妹との絆の力によって磨き上げられた。

 

 

宮永照:配牌

{四五五八③③⑦1114西西}

 

そして南四局の宮永照の最後の配牌、その牌姿。歯車が直ったものの、役満を聴牌することはできなかった。だが、そんなものは瑣末。瑣末なのだ。宮永照の、『最後まで闘う』という意志を呼び起こした。その事実だけで十分だったのだ。

 

 

(・・・三向聴、か)

 

宮永照は自身の配牌を見ながら考える。確かにこの三向聴は決して遅い配牌ではない。面前でも十分聴牌に辿り着けるだろう。だが、

 

 

(それじゃあ足りない……)

 

そう、足りない。小瀬川と対等の状況であるこの状況、この三向聴では追いつくことはできない。悠長に手を進めていたら、あっという間に和了られてしまうであろう。

であれば、どうするか。それは当然、鳴くしかない。

 

 

愛宕洋榎

打{③}

 

 

親の小瀬川の最初の打牌から少し場は固まる。宮永照のツモは{発}と、完全に無駄ヅモであったが、ようやく一巡といったところで愛宕洋榎から{③}が捨てられる。一巡目から鳴いていいのか、手牌が圧迫されるのではないかと一瞬躊躇したが、もう捨てられた以上思考する時間はない。

 

「ポン」

 

宮永照:手牌

{四五五八⑦1114西西} {③横③③}

 

打{4}

 

宮永照、一巡目からしかけて出る。開始早々愛宕洋榎の捨てた{③}を鳴き、手を一歩進めた。これで聴牌まであと二歩、二向聴となった。鳴いてしまった以上、あとは時間との勝負だ。ここまで来て逃げるわけにもいかない。そして宮永照が鳴いたことにより、次のツモ番は小瀬川とはならず、辻垣内になる。そして辻垣内から愛宕洋榎へとツモ番が移り、ようやく小瀬川のツモ番へと回る。小瀬川はツモったあと暫し考えているような素振りをして、ツモった牌を手牌に取り込んで{西}を切り出す。そう、{西}。宮永照が対子にしている{西}を。当然、宮永照は牌を二枚晒して、宣言する。

 

「ポン」

 

宮永照:手牌

{四五五八⑦111} {横西西西} {③横③③}

 

打{⑦}

 

 

この鳴きでとうとう宮永照は一向聴となり、聴牌まであと一歩のところまで来た。ここからが正念場、粘りどころだ。ここでいち早く聴牌できるかが勝負。

だが、その心配もあっさりと解決する。

 

 

辻垣内

打{赤五}

 

 

{赤五}打ち。宮永照が鳴いたその直後に辻垣内が{赤五}を打った。勿論、宮永照はこれを鳴かないわけがない。宮永照は{五}を二枚晒す。

 

 

「ポン!」

 

 

 

宮永照:手牌

{四八111} {五五横赤五} {横西西西} {③横③③}

 

打{四}

 

 

 

聴牌……!宮永照、流れるように聴牌。韋駄天のごとく三副露して聴牌に至る。あとは単騎待ちである{八}が出ればそれで終わり。{八}が河に置かれるか、自分が掴んだ時点で宮永照の一位、優勝が決まる。その状況に宮永照は胸を高鳴らせる。{八}が出れば、終わり。

だが、それをただで通さない雀士が宮永照の近くにいる。そう、小瀬川白望だ。この雀士が、黙って見過ごすわけもない。

宮永照の聴牌からツモ番が数巡して小瀬川のツモ番、小瀬川はツモった牌を盲牌すると、1,000点棒を取り出して、独り言のようにこう言った。

 

「・・・最後の勝負をしよう」

 

 

「リーチ」

 

 

小瀬川:捨て牌

{北5中8①横1}

 

 

リーチ。しかも、宣言牌は宮永照が暗刻の{1}。宮永照は小瀬川の言っていたことをようやく理解した。ここで宮永照がこの{1}を大明槓すれば、小瀬川に一切の隙を与えることなく嶺上開花で和了ることだってできる。宮永照は全神経を集中させて王牌を見つめる。妹の力を借りて、王牌の嶺上牌をよく見ると、四枚目、四枚目の嶺上牌が{八}であることが分かった。無論、ここから四枚目の嶺上牌を引くには槓を四回しなくてはならない。つまり、この{1}の大明槓後から{五、西、③}を立て続けで引かなければならない。この皮のように薄い確率を当てることは容易ではない。当然だ。何故ならここで{八}で嶺上開花自摸をするということは、四槓子を和了るということと同義である。天和を除く役満の中でも最も難しい役満の四槓子。他家に槓をされた時点で潰されるこの四槓子、まず四回槓をするということが既に難しい。そんな雲をつかむような役満であるが、宮永照は引き下がらない。

 

(ここで……決める!!)

 

 

宮永照が暗刻である{1}に手をかけ、三枚全て晒す。宮永照と小瀬川白望、最後の勝負が今始まった。

 




字数が少ない……ま、まあ正月終わったから仕方ないね(震え声)
え?正月休載してた?
・・・次回は頑張りたいです。

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