【完結】シオとサマエル、あとリンドウ   作:飯妃旅立

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もう完結まであと僅かだったり。
その代りこのssは小話をいくつか入れるつもりですが。


生きている星

 

 アラガミに睡眠は必要ない。 オラクル細胞とは活動し続けるモノであり、それを素とするアラガミも、オラクル細胞を失うこと以外では活動停止しない。

 そういう意味ではツクヨミやセルピナの休眠状態は特異なモノだ。 視覚範囲に入れば即座に反応すれど、その場で佇んでいる理由は不明。

 ツクヨミはそもそもアルダノーヴァのプロトタイプの成れの果て、つまり神機がアラガミ化したものなので、休眠状態はそのまま待機状態なのかもしれないな。 敵――つまり神機使いを見つけた時に、まるで神機が展開するようにこのアラガミも動き出すのだろう。

 

 ツクヨミが神機の性質を受け継いでいると仮定するならば、セルピナにも引き継がれていると考えてもいいのだろうか。

 

 それならばアラガミを襲っている理由も納得が行く……か? 堂々巡りをしている気がしないでもないが。

 

「ん……?」

 

 いや、そもそもセルピナはツクヨミの派生だと決まったわけじゃないな。

 ツクヨミの発生はBURSTではDLC、普通に出てくるようになったのはGOD EATER 2からだ。

 ゲーム中で言うのならばDLCはエイジス計画事件の後のミッションのはず。

 だから、俺はポセイドンやらヘラやらと言ったアラガミを見たことが無い。 希少種の個体故に神薙ユウが倒して丁度鉢合わせなかった、という可能性も無きにしも非ずだが……。

 

 それよりも、セルピナはアルダノーヴァの派生だと考えた方が、すんなり行く気がする。

 

「なンだ……?」

 

 あの日。 シオと俺と、雨宮リンドウはノヴァに巻き込まれるように――その(かいな)(いだ)かれるようにして、月へ来た。

 それなりに長い旅路ではあったが……ノヴァを隅々まで見渡すなんて事はしなかったし、ましてやノヴァの中に何がいるかなんて確認しようが無かった。

 

 もし、ノヴァの中にアルダノーヴァが……アルダノーヴァの欠片でも紛れ込んでいたとしたら……。

 

「どうしたリンドウー?」

「呼んでル……?」

 

 アルダノーヴァ。

 ヨハネス・フォン・シックザールが造り出した、GOD EATER 2に出てくる神機兵とは全く違うアプローチで造られた対アラガミ用兵器。

 その性質は神機使いの使う神機に近いが、搭乗者たるヨハネス・フォン・シックザールはアルダノーヴァに喰われる事でこれをコントロールしていた。 つまり、一度搭乗したら二度と降りる事は出来ないのだ。 ハイリスクだな。

 逆に言えば、アラガミに喰われて尚意識を保ち続ける……捕食され、脳の一辺すらなくなって、完全にアラガミとなっても理性を持ち続ける技術は恐らく最も神々(おれたち)に近づいたと言えるだろう。 神となれるのだ、リターンは大きいか?

 

 さて、そんなアルダノーヴァであるが、何度も言っている通り神機である。

 つまり、本来はアラガミを狙う設計のはずなのだ。

 だからアラガミと交戦していると考えるのは、先のセルピナよりすっきり通るだろう。

 

「サマエルー! 降りてこーい!」

「誰ダ……?」

「キィ……」

 

 少し思考に没しすぎていたか。

 

「キィ……」

「なんだろなー? リンドウが、呼ばれてるみたいだぞー!」

 

 呼ばれている?

 見れば、雨宮リンドウのアーティフィシャルCNCが薄ら碧く光っているように見える。

 

「誰が……呼びかけていル……?」

 

 この様相。

 まるで、ノヴァの母体に呼ばれていたシオのようじゃないか。

 

 だが、ノヴァの母体はこの地表そのものはず。 それに月の意思は終末捕食を起こしたいとは言っていない。

 

「キィ……」

 

 雨宮リンドウが向いている方向。 それは、丁度影面の真ん中辺りだ。

 そこに何かがいるのか?

 

「どうすルかー?」

「別に……応えてやる義理は()ぇが……」

「キィ……」

 

 雨宮リンドウが特異点として認められた。 果たして認めたのは月だったのか?

 他の何かが雨宮リンドウに特異点としてのチカラ――アーティフィシャルCNCを与えたのではないか?

 

「キィ……」

「行くか……気に入らなかったラ……喰らえばイイ」

「おー! 喰らうぞー!」

 

 思い立ったが吉日だ。

 いつも通りシオを雨宮リンドウが腕に抱き、雨宮リンドウの襟首を俺が銜える。

 

 浮遊し、月の裏側の中心に向かって発進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー、うじゃうじゃー」

 

 うむ。 そう表現するのが最適だろう。

 

 雨宮リンドウが呼ばれていると感じた場所に向かってみたのだが、そこにはただ真っ暗な地面が広がるばかりだった。

 だが、しばらくその周辺をうろうろしていたその時。

 地面から生える様にセルピナが出てきたではないか。

 そのセルピナを軽く粉砕し、その出てきた箇所に雨宮リンドウを置いてみた所。

 

「呼んでいル……この……下ダ……」

 

 ここ掘れワンワンとでもいうのか。

 余りノヴァの地表を崩したくはないのだが、止むも無し。

シオと雨宮リンドウを少し離れた所に置き、俺は月の大気圏ギリギリまで上昇。

 

「キィ……」

 

 そのまま、今俺が出せる最大の速度――いつもならシオと雨宮リンドウが(ひしゃ)げる事を考えてセーブしている速度を完全に解き放ち、初速から最速で以て地表に突撃した。

 

「オー……すげーなお前さン……」

「速いー! ツヨイー!」

 

 ただ地表に罅が入るだけかと思われたこの行為だが、結果は違った。

 確かに罅が入ったのは事実だ。 しかし、それだけで終わらずに罅割れた地表が落下を始めた。 まるで――否、真実地下に空洞があったために。

 

 その崩落した穴の中を覗いて、シオが言った一言。

 

「おー。うじゃうじゃー」

 

 これに繋がるのである。

 

「ンだ……こりゃあ……」

 

 眼下に広がる光景。

 まず目に入るのは、エイジス島にもあったノヴァの頭――アイーシャ・ゴーシュに似ていると言われていた逆さ頭だ。 最も所々侵食……というか喰い千切られたような痕があり、それだけでも見るに堪えない。

 次に視線を集めるのは、まるでアルダノーヴァのスーパーノヴァのような光で輝く塔だ。

 俺のアラガミとしての部分が、アレはノヴァ擬きだと告げている。

 

 そして、それ以外の部分。

 シオがうじゃうじゃと表したその光景。

 

 光り輝く塔を囲う様に、まるで儀式でも執り行っているかのように存在する、無数の――セルピナ。

 うじゃうじゃと、ざわざわと。

 

 数えるのも億劫になるほどのセルピナが、その穴の底に溜まっていた。

 いや、穴の底だけではない。

 元ノヴァ……アイーシャ・ゴーシュの逆さ顔に、穴の壁面に、穴の横穴に……至る所に、セルピナが存在している。

 

 見れば光り輝く塔からぬるりと、セルピナが出てきているではないか。

 あれが生み出しているのか?

 

「あのヒカリ……呼んでいるのハ……あいツだ……」

「キィ……」

 

 ノヴァ、か。

 もしや、古いノヴァを喰らって新しいノヴァを造り出しているのか?

 どうやって? なんのために?

 

「足りナい……?」

 

 あの時のシオと似たような事を雨宮リンドウが言う。

 それに連動したのかは不明だが、壁の横穴から何かが運ばれてきた。

 

 それは、セルピナの死骸。 だが、色が違う……?

 

 その死骸は光り輝く塔に吸い込まれるようにして消える。

 

「なんかアレ、馬の匂いがしたゾー!」

 

 馬の匂い。 クアドリガの事か?

 もしや……さっき運ばれてきたセルピナは、クアドリガと交戦していた奴か? いや、アレは俺が倒したから別個体……違う、俺はあの時のセルピナの死体を放置した。

 

 交戦する事で、アラガミからオラクル細胞を……調達しているとするのなら。

 神機のように、捕食しているというのなら。

 それならば、どうやっての部分は解決される。

 

 だがなんのためだ。

 外敵のいない月で、ノヴァを造り出す意味。

 

「どうすル……蹴散らすカ……?」

「アレ、いらなイって言ってるゾー?」

 

 いらない……月はノヴァを欲していない。 

 しかしセルピナ達はノヴァを造り出している。

 

 両者のすれ違いは……終末捕食。

 

 いや、すれ違いなんてものじゃない。

 単純にセルピナ達は終末捕食を起こしたいんだ。

 何故なら、アルダノーヴァの性質を引き継いでいるから。

 

「キィ……」

「行くか……」

「やっつけルぞー!」

 

 ならば、俺達のするべき事は一つ。

 

 アレを破壊する。 それだけだ。

 


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