【完結】シオとサマエル、あとリンドウ   作:飯妃旅立

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ツクヨミっぽい何かの名前はオリジナルです。


カーラ・ポーラ

 月の緑化現象。

 ゲームではGOD EATER BURSTの最後やGOD EATER 2になってから騒がれていた現象で、簡単に言えば地上から見える月が緑化しているというものだ。

 人間の研究者が研究を進めている、だのなんだの書かれてはいたのだが、実際そこまで研究する事でもないと思う。

 ラケル・クラウディウスも言っていたではないか。 人類史に置いて、終末捕食は何度も起こっていると。

 そう、そもそも現在の地球の表面はノヴァなのだ。

 嘆きの平原を見ればそれがよくわかるだろう。 あの巻き上げられた物質こそが古くなったノヴァであり、巻き上げたというか締め付けたのが巨大なアラガミだ。

 

 あの平原のビルについた痕跡などを見れば、それがどのような存在だったのかは用意に想像できる。 線路の土台の抉れ方とかな。

 恐らく蛇系統のアラガミ……大きさからして海にでもいるのか、未だ発見されていないアラガミだろう。

 

 話を戻そう。

 

 現在の地球の地表がノヴァである事を考えれば、月の緑化だって簡単にわかるだろう。

 月にはノヴァが着弾し、月の表面をノヴァが覆った。

 故に、月の表面が地球のソレと同じになった。 それだけだ。

 

 オラクル細胞自体の質量はとんでもないモノなので、引力も比例して増大した。

 

 見た目の大きさこそ違えど、環境自体は地球と同じなんじゃないだろうか。 現在の月は。

 

 それならば地球にも最初からアラガミがいたはず?

 否、地球と月では決定的な違いがある。

 

 地球の地表は、地球産のノヴァだ。

 対して、月の地表は月産ではなく地球産。 地球生まれのノヴァには地球の意思がスムーズに通じるかもしれないが、月の意思は通じ辛いのではないかと考える。

 つまり、アラガミがいなくなるのが通常で、月のアラガミは月の意思が届いていないだけなんじゃないだろうか。

 

 だが、俺達にははっきりと通じている。

 俺、シオ、雨宮リンドウの共通点と言えば、理性が有る事だ。

 恐らくこの理性を媒介にしなければ、月は意思を伝える事が出来ないんじゃないかと推測している。

 

 では、現在俺達が敵だと断定しているツクヨミっぽいな何かはなんなのか。

 とりあえずいつまでもツクヨミっぽい何かだと長ったらしいので、セルピナとでも名付けようか。 ローマ神話の欠けた月の神プロセルピナが由来だ。 ツクヨミ擬きだから丁度いいだろう。

 

 セルピナはアラガミではない。 これは俺の感覚だけじゃなく、オラクル細胞として拡散しない事から確定と見ていいだろう。

 しかし、俺達が倒した奴以外の死体を見つける事はない。

 アレにアラガミが負けているのか、偶然俺達が全部倒しているのか。

 個体数が少ないので後者ではないと言い切れないのがなんとも。

 

 前にも言った通りずっと同じ場所にいる奴もいれば移動し続ける奴もいるせいか、遭遇場所は様々だ。

 この身体ではマッピングのような事が出来ないので記憶に頼るしかないのだが、法則性は今の所見受けられない。

 

 もう少し観察が必要という所だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ォォォオオオオオオオオオ』

 

 お。

 

「キィ……」

「サマエルー、何かいたかー?」

「馬刺しか……?」

 

 何故わかるんですかね。

 俺は自身の「キィ……」という音に感情は見受けられないんだが……。

 

 まぁ雨宮リンドウが正解だ。 クアドリガの鳴き声を感知した。

 ついでに、セルピナも。 交戦中のようだな。

 

「馬かー!」

「早く……連れていけ……」

 

 はいはいよっと。

 雨宮リンドウに抱き着いたシオを確認して、雨宮リンドウを噛んで持ち上げる。

 

 アレ、なんか俺移動用の乗り物と化してないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クアドリガ。

 全身に近代兵器のような兵装を持つ、馬のアラガミ。

 強靭な脚はキャタピラで覆われ、しかし柔軟さは失っていないようでジャンプや突進を得意とする。

 髑髏のような頭部の目に当たる部分が鼻。 

 ミサイルを撃って来たり上位種になるとトマホークを出現させたり。 まぁ手数の豊富なアラガミだ。

 

 

 

 そのクアドリガを視界に収めるや否や、交戦中のセルピアを無視して飛び掛かる2人。

 

 初撃は雨宮リンドウ。 俺が襟元を話した直後に右手に炎剣を生み出し、まるでブラッドレイジかと思うような螺旋の炎を推進力に、クアドリガへとそれを突き刺した。

 わー、一撃でミサイルポッドが……。 セルピナとの戦いで削れていたのかもしれんな。

 

 2撃目は勿論シオ。 人体ならば確実に折れているであろう着地の仕方から、身体をぐるりと一回転させながら触腕を振るう。 腕先から展ばされた触腕はサイズが如くクアドリガのオラクル細胞を捕食しながら切裂いた。

 クアドリガもただやられているわけではなく、俺がいるくらいの位置までの大ジャンプを行う。 む、目が合った……じゃなく、これは鼻だったか。

 

 地球に居た頃ならシオを咥えるなりして助けているところなのだが、今はもうそこまで過保護じゃない。 シオは装甲を展開したり回避をしたりを自分で行えるので、俺が心配するまでも無いのだ。

 

 さて、クアドリガは見ていなくてもいいだろう。

 問題は先程まで交戦していたセルピナだ。

 

 セルピナは……む、雨宮リンドウを狙っている?

 

「キィ……」

 

 一瞬、なんだか嫌な予感がしたのでセルピナに向かって突進する。 砕ける月輪。 脆いなホント。 俺の攻撃力も大概なのだが。

 

「アァ……? 何かしようとシタか……?」

「キィ……」

 

 なんでもないから、さっさと馬を倒しなさい。

 

「ワカッテいる……」

 

 これもしかして会話できるんじゃね?

 

 

 

 

 

 その後、何度か起き上がろうとしたセルピナを砕いた。 比喩無しに。

 セルピナの活動が停止する頃にはクアドリガも倒れていて、シオと雨宮リンドウが美味そうにそのオラクル細胞を食していた。 オラクル細胞ごとに味の違いとかあるのか?


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