【完結】シオとサマエル、あとリンドウ 作:飯妃旅立
月の面積は約3796万平方km。 地球の面積は約5億1千10万平方km。
よって、月の面積は地球の約13分の1ということになる。
事になるのだが、それが狭いかと聞かれればそんなことも無い。 大体アフリカとオーストラリアを足したくらいの大きさなので、流石に全部を一度に確認する、みたいな事はできない。
「キィ……」
月の裏側。 NASAの軍事基地があるとか宇宙人の秘密基地があるとか実は月はハリボテだとか、色々騒がれていたがそんな
普通に岩肌とノヴァの母体が広がっているココは、現在太陽が当たっていないので真っ暗で且つ極寒の地だ。
強いて言えばシオと雨宮リンドウは宇宙人……か? 宇宙アラガミ?
「空にキラキラー」
「あぁ……良い夜だ……」
腹が減ってさえいなければ雨宮リンドウはとても理性的だ。
そこまで苦しそうにしていないのは、月のアーティフィシャルCNCのおかげだろうか。
「キィ……」
「ん……? デカブツか……」
「おやつだー!」
ウロヴォロスか。 真っ暗闇の中で光る複眼。 まぁ不気味さはあるものの、恐怖はない。
この2人がいて死ぬことは早々ないだろうし、本当に危なくなったら俺が離脱させてやればいいだけの事。
雨宮リンドウが月の特異点となったせいか、俺もシオと雨宮リンドウ、どちらもを守りたいと思うようになった。 いざとなれば身体が動くだろう。
「リンドウ、あげるー!」
「オオオオオオ!」
決戦の時の神機使い達を真似ているのか、シオは受け渡し弾まで使うようになった。 シオ的には食べ物を分け与えているような感覚なのかもしれないが。
それによって雨宮リンドウもバースト出来ている辺り、シオの学習能力の高さが伺えよう。
「キィ……」
さて、俺も戦闘に参加しようか。
といっても突進して穿つだけなのだが。
「サマエル……あいつは……何だ……」
「キィ……」
知らんがな。
あいつとは勿論ツクヨミっぽい何かの事で、現在視界の先で光弾を振り回している。
「敵なのは……わかるんだ……だが……」
「キィ……」
目的がわからない、か。
月の意思がアレの排除を求めているのはわかる。 だが、具体的にアレが何をしているのか、どういう風に害なのかはわからないのだ。
「キィ……」
「んー、アレは不味いー! 変な味だぞー」
シオの味覚がヒントになりそうなのだが、中々要領を得ないというか、具体的な事がわからないというか。
とりあえず駆逐しなきゃな。
「地球が……赤いナ……」
「真赤だナー! あんまり美味しく無さそうだゾー」
「キィ……」
最近、地球を赤い部分が覆うのを見かけるようになった。
赤乱雲。 GOD EATER 2の前兆時期という所か。 そういえば俺の意識が芽生えた時の赤乱雲はなんだったんだろう。 時期としてはかなり早いよなぁ。
「……」
「キィ……」
思う所があるのか、それとも別の何かを感じているのか。
どこか郷愁の思いを伺わせる目付きで、雨宮リンドウは地球を見ていた。
「キィ……」
「サマエルー、馬が食べたいゾー」
「馬刺しか……ビールが恋しいなぁ……」
えー。
クアドリガなんているかなぁ……。
自然が猛威を振るっているせいか自然にできるだけ近いアラガミの方が繁殖している感じがある。
一番多いのはなんとグボログボロ。 オウガテイルやコクーンメイデンはそれなりに数がいるものの、ツクヨミっぽい何かに突兵が如く攻撃してはやり返されて霧散、ばかりだ。
あぁ……もしかしたら地球でオウガテイルが一番多かったのは、一番倒されているからなのかもしれないな。 各地で霧散を繰り返して増えたと。
それなら今はグボログボロが一番多いのだとしても、いずれオウガテイルの時代が戻ってくるかもしれない。
さて、クアドリガだ。
とりあえず感知範囲を広げてみるも……いない。 アレは騒音出すからわかりそうなものなのだが……。
「キィ……」
「エー、いなイー?」
「……チィ……」
見つけたら連れて行ってやるから我慢しなさい。
ストーリー骨子はありますが、基本的には彼らの狩り日常みたいなものなんで超展開には期待しないでください。