鉄火の銘   作:属物

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第九話【オソバ・ラプソディ・イン・ミソカ】#3

【オソバ・ラプソディ・イン・ミソカ】#3

 

タワラを開ける。ドラム缶に移す。粉を振りかける。ボーで混ぜる。粉を振りかける。ボーで混ぜる。粉を振りかける。ボーで混ぜる。混ぜ終われば巨大な漏斗で、『オソバ粉末』『食用』『栄養充分』などとプリントされた袋に流し入れる。袋には『ヨニゲ・コープ』の印字が施されている。

 

明滅するタングステンボンボリの下、幾人ものヤクザ化学防護スーツ姿が同じ作業をひたすらに繰り返す。防護マスクの窓は熱気で真っ白に曇っているが、汗を拭こうとする者は一人も居ない。その姿にブラックスミスのインセクツ・オーメンがお告げを下した。ろくでもないことが起こっている。

 

それが何かはさっぱり不明だが、クローンヤクザが完全防護で扱う物質だ。肉体的にも倫理的にもよろしいものとは思えない。ヨロシサン謹製のウイルスか、オムラ由来の汚染物質か。何にせよクロスカタナ紋のスノッブ貴族ニンジャ装束が指揮してる時点で、スリーアウトバッターチェンジな代物に違いない。

 

ならば早急に皆殺して、焼却処分なり埋め立て処理なりするべきだろう。ブラックスミスは顔を防護用の布で覆うと、戦列歩兵指揮官めいた趣味の悪いニンジャ装束へと担いだ切っ先を向ける。クナイ・ジャベリンを黒錆の投槍器につがえ、全身を弓と引き絞るその姿は、弓聖チンゼイ・ハチロに例えるべきか。

 

「イィィィ……」一枚板めいた広背筋がニンジャ装束越しに浮かび上がる。平安戦艦すら沈める超常的一射が、今放たれ「ハァックション!」「クセモノダー!」「「「スッゾコラーッ」」」突如響きわたったクシャミの音に、化学防護クローンヤクザはヤクザスラングを叫びチャカ・ガンを引き抜いた。

 

一方、ブラックスミスはシャウトをかみ殺し、発射の衝撃力を寸前に押し留める。カラテ反作用が体内で前後して内臓を前後する。(((バカ! バカ! ウカツ! いっそ殺してでも置いてくべきだった!)))込みあがる吐き気と反動を堪えながら、聞くに耐えない罵声と共に原因を108回ほど脳裏で殴り殺した。

 

音の出所は一つしかない。別の部屋で調査活動をやらせていたダイモンだ。お陰で厳戒態勢に入ったクローンヤクザは作業を中断し、分隊を哨戒に回している。油断ならぬ警戒態勢をとるニンジャも考慮すれば、アンブッシュは実際不可能だ。帰宅後にダイモンはソバと一緒にのしてやる。そう決めた。

 

「フン。田舎ソバが恋しいネズミはアイサツも出来ぬ腰抜けか?」姿を見せぬ敵に罵声を投げつける貴族装束のニンジャ。その目前に黒錆の影が降り立つ。「ソバをかき集めて支配者気取りの下っ端がよく言う。ドーモ、ブラックスミスです」「フン。ドーモ、イントラレンスです。やれ」

 

「「「ザッケンナコラーッ!」」」無数の銃口が黒錆色の影を標準する! だが引き金よりも早く四錐星の殺意が飛んだ! 「イヤーッ!」「「「グワーックション!」」」クローンヤクザ股間及び心臓分断! 当然即死! 「クション?」同時に違和感! 断末魔と……自分の鼻だ! 

 

「イヤーッ!」しかしイントラレンスは悠長に思考する時間を与えない! ライフル射撃めいた直線弾道のエペ突きが迫る! 「イヤーッ!」ブリッジ体勢で回避! 「イヤーッ!」「イヤーッ!」蹴り上げでマンゴーシュの振り下ろしをはね飛ばす! さらにタイドーバックフリップで距離を取る、取ろうとした。

 

「ヒックション!?」だが痙攣めいた生理反応が回避動作に挿入された。その隙を見逃すイントラレンスではない! 「イヤーッ!」「グワーッ!」エペとマンゴーシュのクロス斬撃! 広背筋にX字が刻まれる! 「イヤーッ!」傷の拡大を無視してブラックスミスはブレイキンめいた回転蹴りで牽制をかける! 

 

「フン」イントラレンスは深追いせずにバックフリップで距離を取った。その間に体勢を整えるブラックスミス。追加の黒錆布で更に顔を覆うものの、鼻腔を燃える羽毛で撫でるが如き掻痒感は収まる様子を見せない。「ヌゥーッ……!」それどころか焦熱めいた感覚は眼球と口内にまで領土を広げつつある。

 

「フン。焼けるように苦しいか? 爪を立てて掻きむしりたいか?」ユーロ・イアイドの双剣が嘲笑めいて舞う。カラテに満ちた流麗な演舞は確かな実力と傲慢をアッピールしている。「洟と涎と涙をまき散らしてブザマに死ぬがいい。フン。ラオモト=サンに楯突く汚らわしいネズミは洟と涎と涙に塗れてブザマに死ぬのだ。あのようにな」

 

「ヴェックション! 「テメッコラーッ!」グワーックション!」エペの切っ先で指し示す先には洟と涎と涙ににまみれたダイモンの姿が! 化学防護服クローンヤクザに尻を蹴り飛ばされて洟と涎と涙をまき散らしている! 「フン。あれが貴様の次の姿だ。苦しみ抜いて死ね。当然、カイシャクはなしだ」

 

あの調子ではダイモンもそう長く持たないだろう。しかし助けるにせよ情報が不足だ。「クシャミ一つで……よくぞふんぞり……返ったもんだな。異物……混入をそれだけ誇れ……るんだ。スシ工場の品質……係へ転職を……勧めるぞ」生理反応を堪えるブラックスミスはコトダマを投げつけて相手の反応に耳を澄ます。

 

「フン。目の腐ったネズミにはラオモト=サンの壮大な計画を想像もできないのは当然だな」「買い占め……と毒物汚染のインサイダー……取引か。ずいぶんと……チッポケな……『壮大な……計画』な……ことで」会話中も黒錆の布を新陳代謝させ、流れ出る体液と共に少しでも付着物を排出する。

 

「ネズミと等しき貴様如きには到底見えぬ光景が、イーグルめいて天を行くラオモト=サンの目には映っている」エペの切っ先が天井を、その先の天上を指し示す。「インサイダーなぞプランの一片にすぎぬ。目的はソバ業界の支配ですらない。ラオモト=サンは神話めいた破壊と創造を成し遂げるのだ」

 

ソバに混ぜ込んでいた黒い粉をイントラレンスは愛おしそうに手にこぼす。「このアレルゲン強化バイオソバと、この私の献身によってな!」人様の台詞だが、だいたいわかった。つまりこうだ。

 

買い占めで極限まで需要を高めた上で、アレルゲン混入ソバを大量放出。全ネオサイタマ規模のソバアレルギー反応を引き起こす。それによりソバ文化は失墜し、ソバ市場が崩壊。そして老舗もベンチャーも壊滅した焼け野原に、救世主顔のラオモトが現れてクロスカタナ印のうどん市場に上書きする訳だ。

 

ナムアミダブツ! なんたるマッチポンプすら超越したネオサイタマ炎上からの国家簒奪めいた冷酷なる暗黒バイオテロ計画経済か! もしこれが実行に移されれば、ネオサイタマ中が洟と涎と涙の飛び交うマッポーの現出となり果てるに違いない! ブッダよ、どうか今一度目を開きたまえ! 

 

しかしブッダは永劫の眠りに浸ったままだ。ならばカラテで外道ニンジャ共も永劫の眠りに叩き込んでやるほかに無し! 浅い呼吸でアレルギー反射を堪えながら、ブラックスミスは静かに拳を握りしめ、獰猛な笑みを浮かべる。「フフフ……」「何がおかしい?」

 

「お前等が……おかしいのさ。冗句……未満の笑えない計画を……託宣めいて……あがめてるんだ……からな」「貴様如きがラオモト=サンの偉大なプランを笑うか」「そりゃ、嗤う……だろ?」ZINK! 床を削ったエペの切っ先が火花の弧を描く。

 

「鼻汁を堪えながら長口上、ご苦労だった。もう喋らなくていいぞ、永遠にな! イヤーッ!」「イヤーッ!」鉄の旋風めいた回転斬撃! 赤銅のガントレットが独楽を滑らすかのように受け流す! 「イヤーッ……クション!」「イヤーッ!」だが、アレルギー反応が反撃を遮る! その合間に更なる旋回斬りだ! 

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」イントラレンスのスピン運動が止まらぬ! 長大なエペの間合いは惨殺暴風域と化した! 「アバーックション!」巻き込まれたクローンヤクザは一瞬でナマスめいて寸断! 「ヌゥーッ!」ブラックスミスはバイオタートルめいてガントレットの甲羅に籠もり耐える! 

 

状況はジリープアー(徐々に不利)だ。このままでは負けを待っての犬死にか!? だがバイオ汚染環境生物学者ならば知っていよう。バイオタートルが殺人マグロに等しい恐るべき捕食者であることを! そして、それに例えられるブラックスミスがいかに恐るべきニンジャであるかを! 今、知ることになる! 

 

「イヤーッ!」ブラックスミスはインファイトボクサーめいた体勢で息を止めて斬撃竜巻の中へと突っ込んだ! 「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」肩が! 脇腹が! 太股が刻まれる! だが浅い! そうタイフーンの中心は常に無風だ! 十二分のトルクなくしてはエペの斬撃も恐れるに足らず! 

 

「イヤーッ!」故に危険を承知で更に踏み込む! 「ヌゥーッ!」イントラレンスのニンジャ第六感が致死の未来に警鐘を鳴らす! だが回転は急に止まれない! 即座にマンゴーシュを構えて斬殺半径を圧縮にかかる! が、時既に遅し! 「イヤーッ!」密着状態! 顔が近い! これはブラックスミスの間合いだ! 

 

今や死中に身を投じた筈のブラックスミスが最も勝利に近い。この光景にはミヤモトマサシのコトワザ『死人だから生きる』を思い出さずにはいられない。しかし武田信玄はこのコトワザにこう続けている。『死人はたいてい死んでる』。そう、承知しているとはいえ、危険は危険なのだ! 

 

「イヤーックション!?」「イヤーッ!」だから瞬きの遅れで勝敗はぐるりと変わる! 生理反応が産んだ隙はマンゴーシュに致命速度域への加速を許した! 「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」「グワーッ! グワーッ! グワーッ! グワーックション!」最早ブラックスミスはロクロ上の木材に等しい! 

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」「グワーッ! グワーッ! グワーッ! グワーックション!」肩が! 脇腹が! 太股が削られる! その上深い! そう、トルネードの回転半径では木片すら鉛玉以上の脅威! 十二分の回転速度があればマンゴーシュ一つでニンジャすらぶつ切りとなる! 

 

ブラックスミスはこのままナマスめいて寸断され、床にぶちまけられるのか!? 否! 1200RPMの刃旋風の最中でもその目が怯むことはない! 「イヤーッ!」「ヌゥーッ! イヤーックション!」覚悟の一射! 無数の斬撃に切り裂かれながらも、その手からトマホークめいた異形のスリケンが飛んだ! 

 

「フン! 無駄な!」ALAS! だがしかし! アレルギー反応はその射線を大きくずらした! スリケン・トマホークはイントラレンスを掠めることすらなく、汚染培養液で濁った徳用バイオキンギョ水槽に空しく突き刺さるのであった! 

 

絶望故かついに膝を突くブラックスミス。水槽から溢れる濃茶めいた粘液がその足下を濡らす。「ヒックショ! ヒック! ヒッ……!」破滅的アレルギー反応は遂に呼吸器官までその魔手を伸ばす。これで終わりか? これで終わりなのか!? 「終わりだな。フン、イモムシめいて這いずりながら死ぬがいい」

 

「さ……て、ど……う……かな……?」それでもブラックスミスは太々しく笑う。ニンジャ第六感がイントラレンスの耳元に囁いた。振り向く先には、一面を亀裂の白で染めた徳用バイオキンギョ水槽。CRASH! 破裂音と共に次々と巨大ネオンキンギョが飛び出す! 

 

金、赤、黒! 金、赤、黒! 金、赤黒……赤黒!? 「イヤーッ!」そう赤黒! ネオンキンギョにサーフして、我らが殺戮者のエントリーだ!! 「イヤーッ!」「「「アバーックション!」」」キンギョライドからのヤブサメめいたスリケンが防護服クローンヤクザを射殺! 暴力的アレルギーで斬殺と同時に窒息死! 

 

「ドーモ、初めまして。”ニンジャスレイヤー”です。なるほど、イヤーッ!」赤黒の影はアイサツ後0コンマでヘルタツマキめいて高速回転! 血色の旋風に汚濁培養液がスクリューポンプめいて巻き上げられる! そう、浮遊塵の防除には湿度が一番! 防護服クローンヤクザとの窒息死から状況判断だ! ハヤイ! 

 

「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。イントラレンスです」アイサツ後コンマ3秒でエペが空を刻んだ! ハヤイ! 「狩人気取りの狂人めが! 貴様は火に飛び込むモスキートよ! イヤーッ!」更にエペの切っ先はバイオソバ混入穀物袋を刻む! 有毒スモッグめいて粉塵が立ち上る! 

 

床にまき散らされた汚染培養液は有限だが、空間にまき散らされるバイオソバ粉塵は増え続ける一方! 圧倒的に散布水分量が足らぬ! すべてソバ粉末に吸水されてジリープアー(徐々に不利)だ! 「イヤーッ!」「ヌゥーッ!?」故にそれを止める必要がある! 赤銅の拳がイントラレンスを弾き飛ばす! 

 

「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ブラックスミスです」それは汚染廃水も滴る黒錆ニンジャ。僅かな隙をつき、たっぷりと汚濁バイオ溶液を染み込ませた黒錆布で顔を拭って覆ったのだ! 顔面周辺の湿度は100%超! 鼻の奥をカラテパンチされる芳しいかほりでアレルギー反応も一時停止だ! 

 

臭い。ヌルつく。臭い。粘つく。臭い。息苦しい。臭い。痒い。臭い。全部こいつのせいだ、殺す。ブラックスミスの憎悪のカラテは八つ当たりで加速する! 「汚染バイオ廃液で顔を洗っていい気分だよ。お礼にそいつで溺死させてやる! イヤーッ!」「ならば貴様の死に水もそれとするがいい! イヤーッ!」

 

「イヤーッ!」更にニンジャスレイヤーから遠心加速スリケンの援護射撃だ! これにはイントラレンスもバイオサボテンめいた針山死体となるか!? 「イヤーッ!」ならぬ! 擲弾兵めいた羽根飾りが渦を巻き、スリケンの編隊を尽く弾き飛ばす! シックスゲイツに数えられるその実力は伊達ではない! 

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」飛び来たるスリケンを弾き、赤銅色の猛攻を捌き、バイオソバ混入穀物袋を刻む! 何たる歯車演算機関めいた高速回転によるイクサのマルチタスクか! タツジン! 

 

しかし流石のイントラレンスも二忍の怒濤めいた波状攻撃を前にしては全身全霊でしのぐが限界だ。だが時間は彼に味方する。汚染培養液がソバ粉に吸われ、乾ききる時を待てばよし。アレルゲン汚染空間という必殺のフーリンカザンを以てすればあのニンジャスレイヤーもたわいなし! 

 

「フン! これから貧乏人の薄汚い田舎ソバが滅び、ラオモト=サン創設の純白なうどん文明が始まるのだ! 洟と涎と涙に溺れて死ね! ニンジャスレイヤー=サン! ブラックスミス=サン!」『沢山準備したら勝つ』武田信玄は兵法書にそう書き残した。ならば、これはイントラレンスの準備故の勝利と言えよう。

 

そして、ミヤモト・マサシはこうコトワザを詠んだ。『勝ってメンポを確かめよ』ならば、これはイントラレンスのウカツ故の敗北と言えよう。BLAM! 「フン?」肌に感じる凍える冬の冷気、舌を刺す汚染廃液のすえた酸味。「フックション!?」それと……鼻の奥をくすぐるアレルギーの生理反応! 

 

何が起きた!? 「ヴァックション! ……ソバ……ヴィックション! ……食いねぇ……ヴェックション!」答えはクシャミ痙攣するダイモンの手からこぼれるチャカ・ガンの硝煙が告げていた。そう、ブラックスミスのように汚染廃液で顔を洗ったダイモンが、落ちていた拳銃でイントレンスを狙い撃ったのだ! 

 

(((ソバ? 死!? 塞!)))燃えさかる羽毛の感触、重度火傷めいた掻痒感。死の予感が亀裂から忍び込む! 洟と涙と涎にまみれたブザマに過ぎる死に様が脳裏に浮かぶ! それはブッダデーモンの気まぐれか。まともに狙いも定まらぬ素人の鉛弾は、ガスマスクメンポとヘイキンテキに致命的亀裂を走らせたのだ! 

 

そして、脳裏の光景は現実の質量を帯びた! 「イヤーッ!」「グワーッ!」すなわち赤銅色のガントレット! 「イヤーッ!」「グワーッ!」エペを振るうより早く左拳が突き刺さる! 「イヤーッ!」「グワーッ!」マンゴーシュで防ぐより早く右拳が突き刺さる! 

 

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」慈悲なき恐怖がイントラレンスのカラテを縛り上げている! 容赦なきカラテがイントラレンスの内臓と横隔膜を前後して上下する! これは死ぬ!? 実際死ぬ! 

 

「イヤーッ!」「イ、イヤーッ!」生存本能が引き出したカジバ・フォースがモツ・ミンチ寸前でイントラレンスを生かした。いや、生かしたのではない。それはブッダデーモンの気まぐれか。折れた双剣を震えて構えるイントラレンスの背後に、事前予約済みジゴク直行便めいて赤黒い死が渦巻いていた。

 

「息苦しいか? ならば胸一杯に吸うがいい。オヌシがまき散らした汚染ソバ粉たっぷりの空気をな! イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーの左手がガスマスクメンポを砕く! 「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーの右手が横隔膜を打ち据える! 

 

「スゥー……ハァックション!」イントラレンスは反射呼吸! そして生理反応クシャミ! 「ヒィックション! フゥックション! ヘェックション! ホォックション!」アレルギー反応が止まらぬ! 「グワーックション! オボーックション! アバーックション!」洟と涙と涎にまみれてブザマにのたうち回る! 

 

ピンボールめいて転げ回るイントラレンスは必然的に衝突する。そう、自らが刻んだバイオソバ汚染済みのソバ粉袋に! こぼれたソバ粉はイントラレンスの顔面を埋めた! 「アバックション! アバッ! アバ……ッ!」洟と涙と涎にまみれた顔にべったりとソバ粉が張り付く! 

 

彼の抗原反応は慈悲なくその仕事を果たした。「……ッッ!! ……ッ! ……!」首をもがれたイモムシめいて手足が上下し、シャクトリムシめいて腰が前後する。過剰ゼンマイ人形めいた痙攣動作は程なくして止まった。断末魔も爆発四散もなく、イントラレンスのブザマに過ぎる死体だけがそこに残っていた。

 

【オソバ・ラプソディ・イン・ミソカ】#3おわり。#4に続く。


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