鉄火の銘   作:属物

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第五話【シャープン・フェイス・オン・イクサ】#2

【シャープン・フェイス・オン・イクサ】#2

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャが本気で動くとき、モータルの目には色付きの風にしか見えないという。「イヤーッ! イヤーッ!」「イヤーッ! イヤーッ!」ならば、命を奪い合う全身全霊のイクサとなればどう見えるか。「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」それはOD色の暴風と黒錆色の烈風が絡み合う大竜巻。カラテ荒れ狂うニンジャのイクサという大災害だ。モータルなど巻き込まれるどころか、近づくだけでゴア死体は確実だろう。

 

半神的存在がまき散らす災厄を前に、モータルにできることは恐怖で泣き叫びながら災いが去る日を待つことだけ。階下で吹き荒れるカラテ台風に、泣きじゃくり怯え竦む子供達も、NRSのフラッシュバックに痙攣するコーゾもそれしかできない。だが、子供達を慰めつつ、コーゾを落ち着かせるキヨミは違った。

 

「ダイジョブよ。シンちゃんが私たちを、トモダチ園を守ってくれるわ。だからダイジョブ」キヨミの内に恐怖はない。階上のトモダチ園と皆を守るため、家族が命を懸けて戦っているのだ。今、自分がすべきことは怯え竦むことではない。死力を尽くしているシンヤの為にも、家族を恐怖から守るのだ。

 

シンヤ、すなわちブラックスミスの勝利を信じるキヨミの下で、唐突に二色の旋風は人の形を取り戻して対峙する。油断なくデント・カラテを構える黒錆色のブラックスミス。腰だめに三首フレイルを揺らめかせるOD色のフラグメント。破壊されきった周囲を除けば、その姿は挨拶の直後と何も変わらない。

 

お互いに一切のダメージはない。完全に互角である。奇しくも立ち位置まで最初と同じ二人は、警戒を解くことなく言葉を交わす。「ヒヒヒ、オハナシは楽しかったか?」「待っていたのは意外だったな」フラグメントの笑い声に、ブラックスミスの疑問が返される。

 

ブラックスミスの知るフラグメントなら、確実に会話中に襲いかかっていただろう。慈悲なき凶悪なカラテ戦士が丸出しの隙を狙わないはずもない。無論、それを前提にブラックスミスの全感覚は、常時フラグメントを警戒していたのだが。

 

「ラオモト=サンに教わったのさ。奪う前には与える、踏みにじる前には抱きしめさせるってなぁ!」ソウカイヤ集会ではまずフラグメントの実績と献身を、誰もが理解できる形でプレゼンした。それから行われる反省文朗読とドゲザ謝罪、そしてクロスカタナ・エンブレム取り上げの効果を増幅するためだ。

 

「いい勉強をしたんだな。授業料も指六本のケジメと随分支払ったようだし、エンブレムも奪われて降格処分も受ければ、アンタ程度でも学べるか」「あ?」フラグメントの笑い顔が、憤怒の一色に塗り潰される。指六本のケジメとエンブレムは見たとおりだが、降格処分はブラックスミスのカマカケだ。

 

スカウト対象へ再接触があるかブラックスミスは知らない。だが、暗黒零細金融企業の借金回収班と一緒に、反ソウカイヤ行為の懲罰に訪れるとは考えづらい。だから、それを盛り込んでフラグメントにコトダマのスリケンを投げつけた。それは正確に精神ケジメ跡を刺し貫いていた。

 

怒りの余り角膜の血管を破裂させ、フラグメントは残り一つの目を赤く染め上げる。「スッッッゾコラァァァ!」コワイ! NRSとヤクザスラング、そして殺意を込めたニンジャ圧力。モータルなら失禁失神を通り越し、心臓を止めてアノヨへ逃げ出すだろう。

 

「前も殺す殺すって言ってたが、ソウカイヤじゃ『スカウト対象を逃がす』って事をそう言うのか? なら俺はもうとっくに『殺されている』訳だが」だが、覚悟を決めているブラックスミスには野良犬の遠吠えと変わらない。むしろ、自分の投げつけた嘲笑の効果が判ってありがたいくらいだ。

 

フラグメントの全ての表情は、殺意が焼け付くノウ・オーメンの下に消えた。「……じゃあ死ねよ」「それも前に聞いた」ブラックスミスは挑発を止めず、繰り返し炎にガソリンを注いでいく。それが勝機を見いだした唯一の方法だからだ。ブラックスミスの視線の先、眼球の赤がニンジャ回復力で消えていく。

 

代わりに現れたものは、無い。隻眼に写るのは虚無だけだ。ケジメ跡を覆っていた、狂気と憤怒というカサブタがはがれ落ちた。屈辱と汚辱で抉り抜かれたこの虚無を埋める、そのためだけに今のフラグメントは存在している。一つ目に浮かび上がった空漠を殺意で覆うと、三首フレイルを構え飛びかかった。

 

【鉄火の銘】

 

【鉄火の銘】

 

「イヤーッ!」空虚な隻眼を殺意で上書きし、フラグメントはブラックスミスへと飛びかかった。三首フレイルが死の三重円弧を描く。「イヤーッ!」ブラックスミスは瞬間生成したクナイ・ショートボー先端回転で絡めながら、ボー・ジツ基本の突きを放つ。

 

「イヤーッ!」即座にフラグメントは逆手の二首ロングフレイルで絡め取り、左右からの張力で捕らえにかかる。前のイクサではこれを受けてシンヤは一気に不利へと追い込まれた。だが、ブラックスミスは違う! 

 

「イヤーッ!」既にクナイ・ショートボーを手放し、二本目のクナイ・ショートボーを振るっている! 「イヤーッ!」フラグメントはクナイ・ショートボーの横薙をブリッジ回避。「イヤーッ!」フラグメントはバックフリップで距離をとりつつ、牽制のトライアングルボーラを投げ打った。

 

「イヤーッ!」ブラックスミスは薙払いからインメンマルターンめいた鋭角軌道で迎撃する。そしてフレイルが絡みついたクナイ・ショートボーを投げ捨て、新品を両手に持つ。タタミ五枚分の距離をとり、二人は互いに呼吸を整える。ここまでの応酬で双方は無傷のまま、実力は完全に互角である。

 

優れたカラテ戦士であるフラグメントといえど、指六本と片目の喪失は対ニンジャ戦闘では大きすぎる痛手だった。せめてサイバネした上でイクサに向かうべきだったが、こぼれたミルクはお盆には戻らない。さらに挑発で抉り出されたケジメ跡が、冷静な判断力を奪い取っている。

 

一方のブラックスミスは完全に近い。ディセンションの完遂で傷は癒え、ソウルの名前を取り戻して十全以上のジツが使用可能。家族を守るという目的もあり、キアイは十分でかつ精神は安定している。さらにローカルコトダマ空間内でのシミュレート戦闘で、フラグメントへのメタ対策を徹底している。

 

だが、それだけの有利条件を得ても尚、このイクサは互角のままだ。一朝一夕でカラテと経験の差を埋めるなど、コミックヒーローでも無ければ不可能な話だった。だから、ブラックスミスは作戦とフーリンカザンを以てこれを埋めるのだ。「イヤーッ!」ブラックスミスはコマめいて急回転しながら跳躍! 

 

高速回転により人影は黒錆色の旋風となる。「イヤーッ!」何が狙いか? だが、跳躍を見逃すフラグメントではない。「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」即座にトライアングルボーラを三連射。死の三角形が三機編成でブラックスミスに迫る。それはニンジャ装束で出来た黒錆色の球体に包まれた。

 

フラグメントはそれに見覚えがあった。シナガワ繁華街とニューシナガワで見せた、ニンジャ装束を過剰生産するジツだ。シナガワではそれを衝撃吸収に用いてみせた。つまり、対フレイル防御能力極めて大! 事実、球体にトライアングルボーラは柔らかくめり込み、そのまま自由落下した。

 

「イヤーッ!」続けてのカラテシャウトともに、黒錆色の繊維片が元玄関を煙めいて覆い尽くす。ニューシナガワで見せた煙幕代わりの使用法だ。逃げる気か!? 「イヤーッ!」フラグメントはヌンチャクワークめいたフレイル振り回しで、黒錆色の煙幕を吹き飛ばしにかかる。

 

「イヤーッ!」それを邪魔するように煙幕を切り裂き、影がフラグメントめがけ放たれる。ニンジャ視力を持ってしても、視界〇の中から投げ込まれた影を見ることは出来ない。「イヤーッ!」だが、フラグメントは遅滞なくフレイルで迎撃する。煙幕のわずかな揺らぎを見切ったのだ。タツジン! 

 

「イヤーッ!」迎撃を気にしていないのか、若しくは迎撃に気付いていないのか、影は次から次へと投げつけられた。当然、フラグメントはフレイルで迎撃にかかる。「!?」唐突な違和感がフレイルを握る手に襲いかかった。だが、違和感の正体を確かめている時間はない。

 

「イヤーッ!」フラグメントは無理矢理フレイルを振るい、影の迎撃を試みる。しかし違和感はフレイルの軌道をねじ曲げた。「グワーッ!」迎撃し損ねた影が突き刺さる。そこでようやくフラグメントは影の正体を見つけた。クナイ・ジャベリンにしては異様に細長く柔そうな投擲専用のヤリだ。

 

フラグメントはこの武器を知らない。だが、欧州歴史学に詳しい者ならその形状を知っていよう。それは古代ローマカラテ武装の一つ『ピルム』である。かつてアルプス山脈を跨ぎ越えたハンニバルの巨大象兵を、古代ローマカラテ戦士がピルムの集中砲火でしとめたという伝承が記されている。

 

ニンジャ真実を知る者以外は荒唐無稽なおとぎ話と笑うこの歴史的事実が、投擲に特化したピルムの威力を物語っている。さらに投擲に特化したピルムの特徴はもう一つある。それは違和感の正体である、フレイルに絡みながら複雑に折れ曲がったクナイ・ピルムが物語っていた。

 

ピルムは敵による再利用を防ぐため、突き立つと同時に折れるよう穂先が柔らかく作られている。同時に敵の盾を使用不能とする柔らかさは、フラグメントのフレイルにも同様の効果を及ぼした。フレイルに迎撃されたクナイ・ピルムは柔らかく折れ曲がり、フレイルと絡み合って一塊の鉄屑になり果てたのだ。

 

これではニンジャの投擲物を迎え撃つなど不可能である。フレイルを捨てての対応も考えたが、慣れぬ素手では煙幕向こうからの攻撃に対応しきれない。フラグメントは、クナイ・ピルムと絡み合ったフレイルを投げ捨て、次のフレイルを構えようとする。

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」だが、フレイル交換の時間など与えぬと、煙幕の向こうから雨霰の勢いでクナイ・ピルムが降り注ぐ。「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」フラグメントも次々にフレイルを使い捨てながら迎撃するが、煙幕で視界を奪われていては、フレイル交換のタイミングが掴めない。

 

「イヤーッ! イヤーッ! グワーッ!」次のフレイルを取り出す一瞬の隙に、フラグメントの肩にクナイ・ピルムが突き刺さった。さらにピルムは体内で変形して内側から引き裂く。突き刺されば変形して深手を与え、弾き飛ばそうとすれば変形して獲物をゴミに変える。これがブラックスミスのメタ対策だ。

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」フラグメントがダメージに悶える間にも、次から次ぎへとクナイ・ピルムが放たれていく。だが、シャウトの割にフラグメントが迎え撃つクナイ・ピルムの数は少ない。その理由は、ピルム迎撃に伴うソニックブームで吹き飛んだ煙幕の向こうが物語っていた。

 

「!?」煙幕が消えたとき、フラグメントは魚眼レンズで歪んだ墨絵の竹林の中にいた。何らかのジツで幻覚を見せられているのか? だが、乱立する漆黒のバンブーの隙間から、見覚えのある元玄関の壁や床が透けて見える。そして漆黒のバンブーにもフラグメントは見覚えがあった。クナイ・ピルムだ! 

 

そう、壁という壁、床という床に突き立ったクナイ・ピルムの墨絵竹林。これこそがブラックスミスの狙い、必殺のフーリンカザンである。その効果は、フラグメントが邪魔なクナイ・ピルムを除去すべく、フレイルを振り回そうとした瞬間に現れた。乱立するそれにフレイルが絡みつく! 

 

「チィーッ!」フラグメントの基本カラテであるフレイル・ジツは使用不可能だ。ならばと即座に素手のカラテによる排除を試みる。「イヤーッ!」だが、この光景の制作者がそれを許さない。竹林に滴る雨の如く、頭上からクナイ・ピルムが降り注ぐ。ここに潜むのは竹林のタイガーより危険なニンジャだ。

 

フラグメントは反射的にフレイルを振り回そうとするが、無秩序に立ち並ぶクナイ・ピルムと絡み合いゴミに変わる。更にタイドー・バックフリップによる回避にもクナイ・ピルムが干渉する。もはや回避不可能だ! 「グワーッ!」腿に着弾したクナイ・ピルム穂先が体内でねじ狂う。ダメージ重点! 

 

「イヤーッ!」更なるダメージを狙い、追加のクナイ・ピルムがダース単位で竹林の中から放たれた。弾道を描いてクナイの投げ槍が降る。「イヤーッ!」ニューロンを苦痛で染めながら、フラグメントは素手のカラテでクナイ・ピルムをなぎ倒し回避スペースを作る。これで回避可能となった。

 

「イヤーッ!」タイドー・バックフリップで着弾地点から脱出、被弾なし。だが、着弾地点を見るがいい。作ったはずの回避スペースが土砂降りのクナイ・ピルムで埋まっている! 火災後のバイオバンブー林めいて、墨絵竹林は即座に回復した。このフーリンカザンは不死隊めいた永続性を備えているのだ。

 

クナイ・ピルムを防げば武器を奪われ、回避にも周囲の掃除が必須。さらにブラックスミスの攻撃はフーリンカザンを回復させる。血から生成できるスリケンと異なり、フレイルは用意した分しかない。アウトオブアモーは近い。待てばジリープア(徐々に不利)だが、攻撃の糸口すらない。

 

フラグメントの額に焦りの汗が流れ落ちる。その様子を墨絵竹林の合間を移動しながら覗き見るブラックスミス。蜘蛛糸の縦糸めいて、墨絵竹林は獲物を拘束しながら自身は自在に動き回れるように作られているのだ。(((押し切れるか?)))ピルム大量生成で消耗したニューロンに勝利の二文字がちらつく。

 

以前はそれがウカツになった。改めてキアイを入れ直し、フラグメントを観察する。「イヤーッ!」警戒は正解だった。フラグメントが突如跳躍した! これではピルムのいい的となるだろう。何故のジャンプか? それは『ブラックスミスへの』視線が物語っていた。

 

「見つけたぁ!」航空写真で獣を捕らえるが如く、墨絵竹林に潜むブラックスミスを発見したのだ! 加えて上空から見れば、移動経路も一目瞭然だ。危険を覚悟しての跳躍により、フーリンカザンの有効性は大きく失われた。ならば少しでもダメージを与え、決戦に備えるべきだ。

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」ブラックスミスは手近なクナイ・ピルムを分解・再生成して、次々に速射する。フレイルを振り回せる空中にいるとしても、クナイ・ピルムによる武器無効化は失われていない。ましてや回避動作のできない空中だ。防御はフレイルに頼るほかはない。

 

「ヌゥーッ!」だが、フラグメントはフレイルを振り回さなかった。放たれたクナイ・ピルムは次々に突き刺さる。ダメージ覚悟で迎撃の代わりに行ったのは、トライアングルボーラ連射だった。フーリンカザンの中でジリープア(徐々に不利)の今、幾多のイクサの記憶が消極的選択は自殺行為と結論づけたのだ。

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」ブラックスミスめがけ放たれたトライアングルボーラは、着弾する前に複数本の乱立クナイ・ピルムに絡まった。当然絡まる先は周囲の乱立クナイ・ピルム。それは「外して保持」の現場保全テープめいて、ブラックスミスの移動経路を塞いだ。

 

「イヤーッ!」ブラックスミスは即座にそれをケリ・キックで破壊。フラグメントが接近するにはその時間で十分だった。「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」「イヤーッ! イヤーッ!」フラグメントの回転ケリ・キック連打をブラックスミスはバック転で回避し、反撃のクナイ・ピルムを放つ。

 

だが、回転ケリ・キックで乱立クナイ・ピルムはなぎ倒され、カラテに十分なスペースが出来ている! 「イヤーッ!」「イヤーッ!」クナイ・ピルムを容易く回避したフラグメントは、二首ロングフレイルを振り下ろす。ブラックスミスはクナイ・ショートボーを二本生成し、二首ロングフレイルを絡め取る。

 

だが、投げ捨てるより早くフラグメントは絡め取られた二首ロングフレイルを投げつけた。「イヤーッ!」「イヤーッ!」ブラックスミスは即座にダッキングで回避。「イヤーッ!」「イヤーッ!」その隙に踏み込みながらフラグメントがフレイルを懐から振り抜いた。

 

反射的にクナイ・ショートボーでからめ取りにかかるブラックスミス。(((分銅一つ!?)))その目が違和感で歪む。フラグメントのフレイルは、遠距離には『トライアングルボーラ』、中距離には『二首ロングフレイル』、近距離には『三首フレイル』として使用できるマルチニンジャギア”ミジン分銅”だ。

 

しかし、分銅一つのフレイルとして使用することはなかった。では何故? クナイ・ショートボーでからめ取ったフレイルの逆端がその答えだった。「イヤーッ!」懐から抜き放ったのは弧を描く白刃。銀色の表面に墨絵竹林を映し出すそれは、古より伝わるニンジャ武装クサリ・ガマに他ならない! 

 

これがフラグメントの切り札なのだ。「イヤーッ!」さらにフラグメントはバランス崩しを狙い、勢いよくクナイ・ショートボーに絡んだ鎖を引っ張る。違和感に従いクナイ・ショートボーを投げ捨てたブラックスミスの体勢は揺るがない。しかし、手持ちの武器がない! 

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」フラグメントが振り上げたクサリ・ガマが、白刃と同じ円弧を描く。ショートボー再生成より早いそれを避けきれないと判断し、ブラックスミスはクナイ骨格をスリケン鎖で覆ったガントレットで受け止めにかかる。「グワーッ!」だが、右腕に刃は深々と突き立った。

 

ジツ生成の小手ではソウカイヤ鍛冶が鍛えたカマを防ぎきれなかった。「捕まえたぁ! イヤーッ!」「グワーッ!」カマは肉を引き裂きながらブラックスミスを無理矢理引き寄せる。「イヤーッ!」「ヌゥーッ!」三首フレイル殴打! だが頭部を覆った即席ニンジャヘルムが砕けながら受け止める。

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」反撃の左カラテストレートを、フラグメントは頭蓋骨の最硬部で迎撃。「ヌゥーッ!」「ヌゥーッ!」互いに激痛で悶える。右腕にカマを突き立てられたブラックスミスと、カマを手放せないフラグメント。一歩も引けない密着状態のまま、血みどろのカラテが始まった。

 

【シャープン・フェイス・オン・イクサ】#2終わり。#3に続く


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