戦国†恋姫~水野の荒武者~   作:玄猫

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メリークリスマスイブ!
クリスマスもお仕事ですが何か?

短編のオマケ程度に読んで下さい♪


番外編 戦国時代のクリスマス

「ほぅ、クリスマスという行事があるのか」

「うん。俺の時代……いや、天の国……でいいのかな?そこではこの季節に行うんだ」

「ふむ、面白そうだな。それで、一体クリスマスとは何を祝うんだ?」

「えっと……イエスっていう海外の神様の聖誕祭だったかな?」

「大々的な誕生会といったところか。……葵の誕生日も大々的に祝うべきか?」

 

 藤十郎が真剣な顔で悩むのを見て剣丞は苦笑いを浮かべる。……藤十郎であれば本気でやってしまいそうだな、とぼんやりと考える。これを切欠にこの世界では新しい祝日のようなものが出来ていくのだが……それはまた別の話である。

 

「自分の好きな相手に贈り物を渡したり、子供たちにこっそりと送ったりするのか」

「うん。俺も小さいときには楽しみにしてたなぁ」

「それでその、惨太とかいうのは」

「いや、藤十郎なんか変な漢字で考えてない?」

「色々と聞いてみたが面白そうだな。よし、剣丞!俺と二人でサンタクロースをやるぞ!!」

「……え?」

 

 

「おう、綾那!メリークリスマス!」

「わわ!?不審者ですっ!?……って、藤十郎と剣丞さまです?」

 

 一瞬槍を構えて向けられた剣丞は硬直したが、藤十郎は全く動じていない。二人の服装は現代でのサンタクロースの服装にとても類似している。……ファーの部分が獣の毛をそのままに使われていて剣丞が驚いたということはあったが。

 

「綾那、今年はいい子にしていたようだな」

「む!藤十郎、綾那は子供じゃないですよ!」

「ほう、ならばプレゼントはいらんか」

「ぷれぜんと?」

「綾那への贈り物だよ。藤十郎が色々と考えて準備したみたいなんだけど」

 

 剣丞の言葉に目をきらきらと輝かせる綾那。

 

「ふぅ、綾那のために準備したんだが……いらんか。ならば誰か別の奴にあげるとするか」

「ま、待つです、藤十郎!綾那、いい子にしてたですから!!」

「だが、子ども扱いしてはいかんのだろう?」

「う~!!綾那は藤十郎のお嫁さんだから大人なのです……でもでもぷれぜんとは欲しいのです……」

「ほら、藤十郎もいじめないで」

「ははは、すまんな。ほれ綾那メリークリスマスだ」

「あけていいです!?」

「おう」

 

 袋に包まれた箱の中に入っていたのは紅葉を模した髪飾り。綾那が普段つけているものに似ているものだった。

 

「綾那の髪飾り、別のものも考えたんだが……今のものが一番似合っていると思ったからな。一応京の有名な職人に作らせたものだから出来はいいと……うぉ!」

 

 藤十郎の言葉を全て聞くよりも前に綾那が藤十郎の胸に飛び込む。

 

「どうした綾那」

「……」

 

 顔をうずめたままで何も言わない綾那に少し困った様子の藤十郎。その手は優しく頭を撫でているのを見て剣丞は再び苦笑いだ。

 

「嬉しいんだよ、綾那は」

「そうなのか?……ならばいいが」

 

 

 少しの間、藤十郎と綾那がいちゃついた後、藤十郎はどこか楽しそうに剣丞はため息をつきながら次の場所へと向かった。

 

「あら、藤十郎さんと剣丞さま?」

「歌夜、メリークリスマスだ」

「え、めり……?」

 

 首を傾げる歌夜に藤十郎はプレゼントの箱を差し出す。

 

「あー……藤十郎、皆にクリスマスの説明してないから伝わらないって。歌夜に贈り物ってことだよ」

「贈り物……あけていいですか?」

「勿論だ」

 

 歌夜へのプレゼントは髪を纏める手絡(てがら)だ。剣丞はリボンと呼んでいたが藤十郎が手絡と呼んでいるのを聞いて覚えておこうと呟いていたものである。

 

「うわぁ、これは……」

「歌夜に似合いそうだと思ってな。普段は赤だが、このような柄物も似合うかと思ってつい買ってしまった」

「藤十郎さん……!」

 

 手絡を胸に抱きしめ、潤んだ目で藤十郎を見つめる歌夜。藤十郎はそんな歌夜に微笑みかけている。

 

「……胸焼けしそうだ」

 

 自分たちの世界に入っている二人には剣丞の呟きは聞こえていない。剣丞も自分が同じように見られているとは知らないのだが。

 

 

「お、いたいた。桐琴」

「ん、藤十郎か。何か用でもあるのか?」

 

 相変わらず昼から酒を呑んでいる桐琴に藤十郎がどこからとも無く取り出したのは明らかに長物……槍だった。

 

「ちょ、藤十郎それどこから出した!?」

「ん、普通にだが」

 

 驚く剣丞を流して取り出した槍を桐琴に渡す。

 

「メリークリスマスだ、桐琴」

「応よ。……で、何だそのくりすますとか言うのは」

「なんだ、誰かの誕生日らしい」

「……よく分からんぞ。……しかしこれは……」

 

 藤十郎から受け取った槍を見て目を見開く。樋に優美な倶梨伽羅龍の浮彫があり、見るものの目を奪う。かなりの長さがあるが、それを軽く振るった桐琴は驚く。まるで手足のように違和感なく振るえるのだ。

 

「ほぉ、これは……何か名の在る槍か?」

「うむ。名を……『日本号』という」

「いっ!?」

 

 驚いた声を上げたのは剣丞だ。剣丞は出自の特殊さもあり、名刀や名槍などを頭に入れているが、藤十郎の口から出てきた言葉は間違いなく有名極まりないものだった。

 

「ちなみにだが、三位の位を持ってるらしいぞ。面白いよな槍なのに」

「本物だ……」

 

 なにやら剣丞の驚きが増したようにも見えるが藤十郎は華麗に流す。

 

「……気に入ったぞ。ワシの槍に相応しい!」

「ははは、気に入ってもらえたようでなにより、だ!」

 

 突然突きを放った桐琴の槍を避ける藤十郎。それによって剣丞の顔の横を槍が通り過ぎて硬直したのだが二人の気は高まっていく。

 

「良い槍を貰ったのだ、突き合え藤十郎!!」

「久々だな。いいだろう!」

「ちょっと!?桐琴さんも藤十郎もおかしく……あ、この二人ならおかしくないか」

 

 現実逃避をする剣丞を他所に二人は試し突き(?)をはじめるのだった。




明日も更新予定です!

とはいえ後日談とも別のオマケですのであしからず!
明日はなんと……飛騨、きよも登場します!

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