ママの所にもどって来た。でも、ママは忙しそうにしていた。というのも、お客さんがいっぱい来ていたから。
「すいません、馬が欲しいです!」
「こっちは走竜が……」
「お金があれば構いません。それとランダムでモンスターが生まれてくる卵ガチャもやっています。どうぞ、お試しください」
「付き合ってください!」
「夫がいるので無理です」
忙しそうに働いている。かのんは邪魔になるから、出て行こう。だって、人多すぎて怖い。まともに喋れないし。だから、ドラゴンさんの所までもどる。
「ドラゴンさん、ドラゴンさん」
『なんだい、お姫様』
「しゃべれ、る?」
『姫様が言葉を理解しただけですよ』
「ん、そっか。じゃあ、人が少ない所に連れて……行って……」
『お安い御用です。ささ、乗ってください』
「ん!」
ドラゴンさんに乗って、飛び立ったら改めて回りをみる。この街の中心には大きな大きな木があって、島も大きい。山や森、谷なんかもある。
「ねぇねぇ、おっきな木の上に行きたい」
『上までは無理ですが、途中までなら』
「それでいいよ」
『では、しっかりと捕まってください』
「ん」
直に高く高く、飛んで行く。雲を超えて飛んだ先の木の上には大きな黄色い果実みたいなのがいっぱいなっていた。
「あれ、食べて……みたい……」
『あれですか。流石は姫様。お目が高い。ですが、取りにいくと敵がくるのでしっかりと捕まっててくださいよ』
「おーお願い」
【竜王姫のお願いが発動しました。対象の竜族を極大強化します。眷属強化が発動しました。対象の竜族を強化します。かりすまAが発動しました。対象を特大強化します。一定値の能力値を超えました。竜煇石を確認。条件を満たした為、限定進化を発動します】
『力がみなぎってくるぜぇええええええぇぇぇっ‼‼』
ドラゴンさんが吠えて、突撃していく。すると大きな木の方からも大きな鳥さんが出て来た。それに対して、ドラゴンさんはおっきなお口からビームのようなブレスを吐いて、鳥さんは嵐を起こして防ごうとする。でも、ブレスが嵐を蹴散らして鳥さんに命中した。鳥さんは体勢を崩しながらも、次々と風や雷を放ってくる。でも、ドラゴンさんはそれらを翼で作った風で吹き飛ばし、ブレスを吐いて次々にダメージを与えていく。
入れ替わるような激しい攻防の中、いつの間にか立ち位置が変わって、ドラゴンさんが大きな木の方になっていた。そして、ドラゴンさんが暴風にさらされて木に激突する。
『姫様。奴は俺が引きつけておきますから、今の間に回収してくだせえ』
「ん! がんば」
『おう!』
【竜王姫の応援が発動しました。対象の竜族を全回復及び強化します】
『死に曝せぇえええええええぇぇぇぇぇぇっ!!』
大きな木の枝に降りると、ドラゴンさんは直に飛び立っていった。たぶん、わざと吹き飛ばされた。っと、急いで果実を回収しよう。手を伸ばしたり、ジャンプしたりするけど、届かない。
「んー届かない。ノート」
「イエス、マイマスター」
召喚して、お手伝いをお願いする。自立起動モードで出て来たノートが、大砲みたいなのを構えて、黄色……黄金の実を打ち落としてくれる。それをかのんが落下位置で受け取っていく。かのんの身体よりも大きな実で、食べごたえありそう。
「マスター、アイテムストレージに収納してください」
「ん? どうするの?」
「えっと、収納でいいはずです」
「ん、収納」
すると黄金の実が光となって消えた。すると、視界の片隅に黄金の林檎を入手しましたと、出た。
「よくわかんないけど、いっぱい集めよう」
「イエス、マイマスター」
林檎狩りをしていると、ドラゴンさんが鳥さんに虐められてとても苦しそうにしていた。だから、かのんはあるアニメを思い出しておっきな林檎を使う事にした。
「ドラゴンさん、新しい顔……違う。メカの素だよ!」
林檎を思いっきり投げると外れて下へと落ちていく。でも、ドラゴンさんが必死に飛んでそれを咥えた。でも、投げた事でかのんの事がばれたみたいで鳥さんが、こっちにやってくる。
「あうあう」
「迎撃します。バスターカノン、スタンバイ。標準完了。ファイア」
ビームが放たれ、鳥さんは回避しながらこっちにどんどん来る。もう駄目かと思った瞬間、鳥さんの身体は影に吹き飛ばされて、更に上に行っちゃった。
「マスター、今のうちです」
「ん!」
いっぱいの林檎を回収して、回りがなくなったので、奥へと進むと大きな洞があったので中に入ってみる。
洞の中は太陽の光が降り注ぎ、大きな碧のはっぱに反射して、水滴が落ちて来る。その水がかのんを頭から濡らした。
「ちゅめたい」
ペロリと唇を舐めてみるととても美味しかった。これも回収しておこう。回収しながら更に奥へと進むと大きな100の頭を持つ茶色いドラゴンさんが居た。
「こんにち、は」
『竜王姫がこのような所にくるとは。外のフレースヴェルグを倒したのか?』
「ドラゴンさんが頑張ってくれているよ」
『そうか。して、このような所に何用だ。ここは……』
「遊びに来たの!」
『む、遊びにか。もしや、我と?』
「うん!」
『よかろう。どうせ退屈していた所だ。遊んでやろう』
「わ~い!」
お話したり、触らせて貰ったりしたりしていると、ラードーンさんが大きな黄金の林檎を取り出して、切って食べさせてくれた。とっても美味しかった。気付けばもうお昼を過ぎて夕方になっていた。
「あ、そろそろ帰らないと」
『む、そうか。では、お土産を渡そう』
「いいの?」
『うむ、問題ない』
「ありが、とう」
『気にするな。我と汝は友だからな。何かあれば助けてやる』
【守護竜ラードーンと契約しました。以降、召喚が可能です。ユグドラシルの葉×100枚をラードーンより入手しました。特殊報酬:炎獄の竜眼を入手しました】
かのんの額にある目が開いて、ラードーンさんから何かが入って来た。
『では、送ろう』
「ん!」
外に出ると、ラードーンさんが火を噴いて鳥さんを追い払ってくれた。その間に黄金色に光るドラゴンさんが戻ってきて、かのんは乗って帰る事にした。
「またね」
『うむ。我はここから動けんから強くなったら呼び出してくれ』
「ん、頑張る!」
『ではな』
『では、いきます』
「またね!」
地上に向かって飛んで行く。すると、ドラゴンさんの姿がどんどん元に戻っていく。到着する頃には普通の姿になってた。
『姫様、これをお持ちください』
「おっきな翼?」
『えぐりとってやりました。まあ、直ぐに再生しやがったんですが』
「おー、いいの?」
『どうぞどうぞ。俺も前よりもランクアップできましたからね。報酬は十分でさ。それに姫様を乗せたとありゃ、皆に自慢できますからね』
「ん、わかった。貰っとく。ありがと」
『いえいえ。それではまたよろしくお願いしやす』
「ん!」
ドラゴンさんと別れて、お姉ちゃんを探しに向かう事にする。でも、よく考えたら、ここで待ってた方がいいので原っぱでお昼寝する事にした。
※※※
「おい、なんでユグドラシルが初日の、それも半日で攻略されてんだ?」
「……ワタシはワルクナイデス」
「オレモシラネー」
「原因は簡単でしょう。竜王姫の竜族に対する絶対命令権とまではいかないでも、それに準ずる権能ね」
「まあ、本来はフレースヴェルグが竜族に対する防波堤になり、巨人族の連中にとってはラードーンが防波堤になる設定でしたが……」
「竜王姫の強化能力と竜煇石による限定進化。さらに黄金の林檎の限定進化。うん、倒せないでも奮戦できるか」
「ましてや、後ろにお姫様を乗せているんですから、頑張りますよねぇ。修正しないとまずいですね」
「取り敢えず、ヴェズルフェルニルの実装と、上層部への侵入禁止にしないといけないっすね」
「進入禁止はいらんな。そもそも、普通はダンジョンをまともにクリアしないとこれない訳で。飛ぶ対策としてフレースヴェルグの配置だったのだが、それでも足りないからヴェズルフェルニルを配置するという事だったしな。これで大丈夫だろう」
「カノンちゃんへの修正はどうします? 煉獄の竜眼とか、結構やばい奴なんですけど」
「彼女のデータは……おい、明らかに初日のデータじゃねえぞ」
「修正、します?」
「しないわよ。そんなのやったら、許されないわ。だいたい、まともにラードーンとか呼び出すなんて不可能だし、この際対策はヴェズルフェルニルの実装とドラゴンのレンタルを修行の為に禁止という事にしましょう。自力で確保するならばともかくね」
「確かにそうですね。修行という事で、出来る限り竜族には協力しないように通達しておきましょう。もちろん、戦争とか例外は別で」
「そうですね。では、一番の問題は……黄金の林檎198個、ユグドラシルの葉100枚、ユグドラシルの露が8リットル。これをどうするかね」
「ユグドラシルの露が蘇生アイテムでしたよね」
「ええ、そうよ。黄金の林檎は全回復と進化アイテムね。葉はエリクサーとかのポーションとかに使う素材よ」
「……別に放置でいいと思いますよ。子供ですし、多分おやつくらいにしか思わないでしょう」
「……それもそうね」
「他の連中に割ったら危ないぞ?」
「いい考えがあります。子供という事を利用します」
「おい、まさかとりあげるとかいうなよ?」
「違います。私達が受け取って、林檎のお菓子やジュースを作って渡したり、他の食べ物とかと交換するのです。これで、回収出来ますよね」
「確かにそっちの方がいいか」
「子供なら喜んで渡してくれるでしょう」
「なにより、俺達の罪悪感がないのもいいな。よし、それでいくか。だが、能力を落としすぎるのもあれだからステータスアップアイテムとかにしておけよ。ドロップ強化や経験値増加でもいいけどな」
「待ってください! それってつまり、空腹度を実装って事ですよね!」
「用意しているだろ?」
「用意していますけど、コミュニティの実装もあるんですよ!」
「それがどうしました? 泣きごと言ってないで実装しますよ。なに、たった三日くらいの徹夜ですみます」
「三日で済む訳ないでしょ」
「大丈夫です……応援を要請しました」
「それ、何時きます?」
「二日目?」
「無理だーーー!」
「まあ、皆で残って手伝いますから」
「「え?」」
「ほら、やれる事はいっぱいあります。監視……モニタリングもしないといけませんし」
「そうだな。俺達開発チームだけ残るなんて許されねえ。全員だよな?」
「どうしてもの人を除いてですけどね。お子さんとか、居る人は仕方ないですし。もちろん、母親や夫など別の人が居る人は別ですが」
「デスマーチの始まりじゃぁあああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」