落第騎士と剣術指南役の英雄譚 ~更新凍結~ 作:リュオネイル
あまり一つの話が長いと、私的にも読者の皆様的にもダルいと思いますので………。
では、張り切ってどうぞ!
【猛】
「……………」
「ねぇ、貴方誰n「イヤァァァァ!ケダモノォォォォォ!!」あらら~!?」
【猛】
「うぉっ!?危ねぇっ!」
俺が予想だにもしなかった相手に呆然とし、少女が再度聞こうとしたそのとき、
「ベオークぅ!ちょっと聞いてよぉ!私汚されたぁぁあ!!!庶民の男に汚されたよぉ!」
と、タイミングが良いのか悪いのか俺の部屋の扉をバンッ!と大きな音をたてて入ってきたのは紅蓮の炎のように紅いツインテール、破軍学園特有のシックな色合いの趣味のいいブレザーを着た少女が入ってきた。
やれやれ、今この学園に人が多くいたらこの寮は野次馬の嵐になったかもしれんな。
「ねぇベオークぅ!…………って」
最初は泣きながら入ってきたから見えなかったのかもしれんが、ベオークという奴が返事をしないのを変に思ったのか、涙に濡れた目を開けると呆然とした。
………まぁ、一つの部屋に年頃の男女がこうやって抱き合ってるようなところを見れば、誰だって呆けるわな。
「……………してんのよ」
しばらく呆けた後、紅蓮の少女は顔を俯かせ、体を震わせながら呟いた。しかし、相手の声が小さいから全く聞こえてこない。
【猛】
「ん?なんだって?声が小せぇからうまく聞き取れ無ぇんだが………」
「ッ!アタシの
この時、寮の用務員の担当のおばちゃんがこう証言した。
『あんな学園中に響き渡りそうな絶叫を聞いたのは、この学園の用務員を勤めて以来、初めてだったね』と。
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場所は変わり、破軍学園理事長室。
そこの部屋に今回の騒動の原因………一輝と、何故か俺が理事長室の机の前で立たされていた。
「………成る程。今回の騒動、黒鉄の方は下着を見てしまった事故を、自分も脱ぐことで相殺しようし、三日月の方は部屋に空き巣が入っていると思って気配を殺し、相手を見たら下着姿の少女で思いもよらなかった相手だったから呆然としていた、と」
革のソファーに座る、
【黒乃】
「アホだろお前ら」
【一輝】
「フィフティフィフティで紳士的なアイデアだと思ったんですけどね」
【黒乃】
「確かにある意味紳士的ではあるな」
【一輝】
「いや変態紳士という意味ではなく…………」
【猛】
「というか俺のは別にアホと呼ぶほどのことか?」
【黒乃】
「呼ぶほどのことだ馬鹿たれ。相手がどれ程の大物か分かっていて言っているのか?」
新宮寺理事長が呆れた表情のまま俺を睨んできながら言った。
勿論相手とはあの白色の下g……ゴホン、あの赤と黄の混じった長髪ストレートの少女のことだ。
名前は『ベオーク・アルタリス』。
ヨーロッパの小国『アルタリス王国』の第一王女で、隣の小国『ヴァーミリオン皇国』とは縁の深い間柄だとか。
【猛】
「あのお姫さんが来日していたのは知ってはいたが、まさか
【一輝】
「うん、僕もステラさんと鉢合わせしたときは気が動転して忘れていたけど、ステラさんもこの学園に入学するっていう話、聞いたことがあるよ」
一輝の言ったステラさんというのは『ステラ・ヴァーミリオン』のことだ。
さっき言ったヴァーミリオン皇国の第二皇女で、ベオークとは大の仲良しだ。
確か、この二人が来日するという話題はそこそこ大きくなっていた。
『十年に一人の天才騎士!ヴァーミリオン皇国第二皇女ステラ・ヴァーミリオン様(15)とベオーク・アルタリス様(15)、破軍学園に歴代最高成績で首席入学!』という見出しの新聞記事があったことは覚えていた。
……………その新聞を窓拭きに使用するまでは。
【一輝】
「本物のお姫様で、首席入学なんて、すごいですよねぇ」
【猛】
「それも二人ともかなりのステータスだ。すべての能力が平均値を大幅に上回っている」
【黒乃】
「それに、伐刀者にとって一番大切な能力である《
【一輝】
「………ほっといてください」
【猛】
「俺は好きでなったんだ。異論はねぇよ」
むすっとした表情で新宮寺理事長の嫌味に抗議する一輝と憮然とした態度をとる俺。しかし、俺達は否定はしない。できるはずもない。
何しろ一輝の《総魔力量》は平均の十分の一しかないのだから。
俺か?俺は《総魔力量》は平均より少し上だ。じゃあ何で俺がFランクなのかって?それはだな……。
【黒乃】
「しかし、困ったことになった。留学には色々な手続きがあるから、入学式よりも早く来日してもらったのだが、初日からこんなハプニングが起こるとはな。まあともかく、この一件、下手をすれば国際問題にもなりかねん。だからお前達に非はないが………責任をとってもらう。理不尽に感じるだろうが、男の度量を見せろ」
【一輝】
「…………男って、何でこう都合のいいときだけ利用されるんでしょうね」
【猛】
「全くだ」
俺と一輝が己の境遇にため息をついた。そのときだ。
「…………失礼します」
「失礼しま~す」
理事長室のドアが開き、
ベオークは先程までとは違い、ちゃんと服を着ている。
ステラと同じシックな色合いの趣味のいいブレザーを着ている。主張しない色合いが、二人の髪の色を際立たせてとてもよく似合っている。
【一輝】
「ごめん」
俺が二人を見ていると、一輝がステラに頭を下げ、謝罪をする。
【一輝】
「あれは不幸な事故で、僕も別にステラさんの着替えを覗こうと思った訳じゃない。ただ、見てしまったものは見てしまったわけだから、男としてケジメはつける。ステラさんの気が済むように煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
【ステラ】
「……………潔いのね。これがサムライの心意気なのかしら」
【一輝】
「そんなんじゃないよ。口下手なだけだって」
聞き心地のよい澄んだステラの声に、一輝は苦笑いを返す。
するとステラの方も、強ばった表情を和らげて薄く微笑んだ。
【ステラ】
「ふふ………正直なところ、ええ、もう来日していきなり痴漢に遭うなんて、なんて最低な国なのかしらと心底この国が嫌いになりかけたし、国際問題にしてやろうかとかも思ったほどだけd「え~、ステラちゃん、それは少し可愛そうだよ~」わ、分かっているわよ!んんッ!ま、まぁ貴方のおかげで少し気が変わったわ。貴方がそれほどの心意気を見せたからには、アタシも皇族として寛大な精神で応じなければならないわね」
部屋に入ってきて剥き出していた敵意はどこにも見当たらない。
その好意的な表情を見て俺はそう思う。恐らく一輝もそう感じているだろう。
俺は皇族というのは昔の貴族のように偉ぶった気難しくて面倒くさそうな奴かと想像してはいたが、話してみれば話のわかるいい奴じゃないか。
これを期に俺は皇族やら貴族やらの認識を改めようと思った。
世の中、偉ぶった奴等ばかりでなく、ステラのような立派な皇族もいるのだと。
【ステラ】
「イッキ、っていったわね?貴方の潔さに免じてこの一件、
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前言撤回。やっぱり世の中こんな奴等ばっかりだ。
はい、毎度毎度聞きますが如何だったでしょうか?
次回、やっと戦闘シーンを書く予定です!
そして、猛の『好きで(Fランク)になったんだ』という台詞、その真相が明らかになる予定です!
次回、『落第騎士と天才騎士と剣術指南役 ~後編~』を、どうかお楽しみに!
では、また次回~!( ゚∀゚)ノシ