十字高等学校。
この街で最も発達した駅から商店街をまっすぐ進み、大きな道路に架かる歩道橋を渡った先に、その高校はある。
俺はこの高校に通う学生の一人。
顔は普通、だと思いたい。
16歳、絶賛彼女募集中、いたって普通のチェリーボーイ。
理由はわからないが赤い糸はどれだけ手繰っても運命の人には出会えないし、そのせいか最近は純情も劣情も持て余しすぎて、たまにメールに届く知らない女の子に返信をしてしまったり、義理チョコをくれた女子に対して本気のお返しを試みて友人に全力で羽交締めにされたりすることもしばしば。
空から女の子も降ってこないし、ふとした瞬間の異世界転生、からの魔王討伐でお姫様と結婚、どこかの機関に追われた少女を助けるべく東奔西走、なんて胸熱イベントは起こることもない。
「それじゃあ、明日からみんな、仲良くな。帰り道事故んなよー」
先生の無気力な発言で、ひと笑いして、先生が教室を出ると同時に、教室が賑わい出す。
「敦也〜、帰ろう」
始業式初日の帰りのホームルームが終わり、一年の頃からの付き合いである
「おう、クロ。帰るか」
「どっか寄ってく?」
「あ、じゃあじゃあ、駅前にくるクレープ屋さん!」
敦也の後ろの席からからひょこっと顔を出す整った顔のJKも俺の友だち、
「げ、まじか」
「いいじゃん!あのクレープ、凄く甘くておいしいんだもん!」
「クレープね。じゃ、今日は駅ぶらつくか」
「昼前なのに甘いもの食わされるなんて…」
こんな感じで、帰宅部として学校が終わるとすぐに放課後の活動に勤しむ、これが俺の日常だ。
駅前で歯が溶けるレベルの甘いクレープを食らい、気の済むまでぶらついてから、涼香を改札口で見送り、自転車置き場で敦也と少し話をして別れ、駅からそう遠くない我が家まで歩いて帰る。
「ただいま〜」
「あ、おにいちゃん、おかえり。あ、見て!これかっこよくない!?」
「おー、そうだな」
この通り、最近になって包帯やら眼帯やらをぐるぐる巻きつける妹を適当に受け流しながら飯の支度をする。
飯を食ってリビングで妹とテレビを眺めて、いつものトークアプリでの涼香からのお呼び出しで携帯電話に目を通す。
『今日のクレープ、美味しかったね☆また3人で食べに行こうね!』
『もういかない』
『えー、なんで!?( ;´Д`)美味しかったでしょ?』
『甘い=美味いならば、あのクレープはうまかった。うますぎた。あんなものを再度食おうものならうますぎて歯が溶ける。ってことでもう行かない』
『確かに、あれは本物の甘党じゃないと甘すぎてきついよな笑』
『クロくんまで!?!(◎_◎;)すごい美味しかったのに…』
これが俺の1日。今日は始業式だったが、放課の時間がいつもより早いことを除けば、大体はこんな感じ。
友人にも恵まれ、包帯眼帯付属だが健康体の可愛い妹もいる。
誰が見ても悪いとは言わないだろう。
でも、俺には重大な悩みがある。
それは。
「ああ、彼女欲しい…」
そう、この俺、
どうも、初めましての方は初めまして。
そうでない方はいつもありがとうございます。
zienNです。
高校生活、思い出すだけでも懐かしい、思い出(そんな昔でもないですが)に浸りながら、今回この作品を書こうと思いました。
更新は遅いかもしれないですがお付き合いいただければ幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました^ ^
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