空に憧れて   作:moti-

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 来たでぇぇええええ!!みんな大好きロリマンダ来たでぇええええ!!



空を駆けて

 寝転んで、伸びをする。

 

 努力値稼ぎも十分。ハピナスの分の物はいらないが、きっちりとすばやさ、こうげきに限界まで振った。

 

 そろそろ進化してもいいのだろうが、そうなればアニポケの野生のポケモンはレベルが満ちればみんな大量進化を始めるということになる。やはり某ラノベみたいに、心境が一転してがらりと変わるくらいのことがないと進化には漕ぎ着けないのだろう。そして、おそらくはレベル100にも。

 

 そう考えると、トレーナーの元で経験を積んだとはいえ、あのカイリューはやはり頭一つ飛び抜けているのだろう。そしてその相方である、クチートも。とはいえ、クチートはメガシンカすれば絶妙な種族値を手にするが、メガシンカしないクチートの種族値はかなり低め。組んでいる訳が分からない。

 

 考えるのは止めだ。努力値稼ぎで疲れているのだ。早めに寝たほうがいい。

 

 そうして、岩肌に身を預けるようにして目を瞑り、意識を落とした。

 

 ◇

 

「ピー、ピカチュ?」

 

 そう声がして、瞼を上げれば服の中に入り込もうとするピカチュウがいた。寒いのだろうか。何にせよ、此方の首下からぴょこりと顔を出したピカチュウはもふもふな毛皮でかなり暖かかった。とはいえ、この体は下着は下しか着けておらず、ピカチュウの毛皮が肌に当たってくすぐったいのは頂けない。ばたばたとせわしなく足を動かすピカチュウを服の上から抱きしめ、拘束する。困惑顔で此方を上目で見るピカチュウに、視線で「くすぐったいの!」と訴えた。そして流れるように起こる自己嫌悪。ピカチュウの頭に顎を載せ、はあ、と息を吐いた。

 

「ピ!?ピカー!ピチュッ」

 

 あわあわと何かを身振り手振りで伝えようとするピカチュウに微笑みかけて。

 

「別に怒ってるわけじゃないんだよ」

 

 ピカチュウが露骨に違う、そうじゃないといった顔をした。何がいいたいのだろうか。

 

 と、その時だった。

 

 ずしん、と音を立てて此方の目の前で、巨大な岩が静止した。

 

「え?」

 

 時既に遅し。

 

 きぃぃぃい──とそれが発光して、崩れていくように。

 

「あ、死ん」

 

 言い終わらないうちに、核爆弾にも匹敵するのではないかと思うほどの爆発が眼前で起こった。

 

 ◇

 

 ──この発想はなかった……!!

 

 そうして痛みやらなんやらで震える体を手で抱きしめながら、横になって伸びていた。かふっ、と喉の奥から競り上げたものを吐き出し、そして閉じることもままならない口から飲み下せない唾液が垂れる。目からは痛さで涙が出てきた。意地を張る余裕もないくらい、至近距離で起こった爆発のダメージは深いものだった。

 

 ピカチュウが頬に手を当てて「チャァァ……」と悲しげに鳴いた。目元から伝う涙を舐めて、ピカチュウはこちらを心配するようにもう一度鳴いた。

 

「……あ、はは。大丈夫だよ、傷は浅い」

 

 どの口がいうのだろうか。間違いなく体は裂傷を負っていて、大火傷しているというのに。岩の破片が体中に突き刺さって、全身から血を垂れ流している。

 

 血溜まりに沈んでいた。

 

 下手人はゴローニャ。“だいばくはつ”で命を散らしたやつは、細かい岩の破片へとなりこちらを殺しに来た。威力250の、殺す気で放たれたそれはレベル差も相まって、防御の種族値100のコモルーでも耐えられるような物ではなかった。

 

 自爆テロだろうか。瀕死になるだけで済むだいばくはつだが、自身の体が粉々に吹き飛ぶ程の威力である。もしかしたら気付かないだけで腕とか足とか吹っ飛んだのではないだろうか。もしくは半身が吹っ飛んだのであろうか。もしそうなら、もう少しで死ぬんだろうなあ。

 

 そう思っていると、体を光が纏った。一度経験したことのあるこれだが、ああ、やはりそうか。

 

 絶対絶命の状況に陥る事が条件か。

 

 ぎゅいい、と傷ついた体が治る。治っていく。

 

 ──最終進化、ボーマンダ。

 

 コートのようだった服は一瞬で消滅し、光がその肢体を隠しているのを見ると、まるで変身シーンを見ているようだ、と苦笑して。

 

 帽子が無くなって、だんだんと青に染まっていく髪は急速に伸び、どんな超常現象か、髪が勝手に動いて、それを赤い髪止めで吊って、幼い子供のようなツインテールが出来上がった。髪は腰辺りまであり、コモルーの時と同じような頬のラインに沿った、鎖骨ほどまである二本の髪に、タツベイの時のような長髪。その髪色は今までと違い、空色だった。ツンツンと左右三つずつ伸びる髪は目立たないように前髪で隠してある。瞳の色はタツベイの時のような青とは違い、少し明るい水色になっていた。

 

 頭部分の変化が終了すると、体を覆っていた光が晴れて新しいその服を露わにする。

 

 胸の中心部分に青い宝石が埋め込まれた、青が多めの白、赤、それとほんの少しの黒で彩られた、肩部分から露出している半袖位のそれは、ドレスだった。フリルがひらひらと風で舞い、ぺろりとそれが捲れ上がってへそが露出する。そこを風が撫でて、ぴくりと体が跳ねた。余剰エネルギーが風やらなんやらを巻き起こすのだろうが、完全にスカートを捲りにきてるな、だなんて思い、スカートを手で押さえたあとに恒例となった自己嫌悪。

 

 スカートもそれとデザインは同じだった。脛より上、太腿が少しだけ見えるといったくらいの長さだろうか。今度は手で押さえていたので捲れるようなことはない。どちらも薄い素材で作られているのか、風通しがよく体を風が撫でる。

 

「……なんかすーすーする」

 

 声も変わっていたが、それはおいといて。ちらり、と自身の背中に目をやった。

 

 円月状の羽、この姿になってようやく得た、この渇きを癒やすための道具。

 

 ついに、ついに手に入れた飛行の為の道具。

 

 それを実感し、気分が高揚し、ピカチュウを抱き上げ聞いた。

 

「一緒に行く?」

 

 こくり、と頷いたピカチュウを見て、爆発によって空いた穴を見て、その足場のぎりぎりに立つ。

 

 感覚的に、飛び方が理解出来た。顔がにやけるのを隠さず、そして、この地に一時の別れを告げ、何時か必ず戻ってくる。そう誓った。

 

「──いってきます!」

 

 地を蹴り、速度が上がり、風を感じて。

 

 そして、雲を間近に見れる場所まで瞬時に上がり、そうして自らの近くに広がる空の青さを、しっかりと目に焼き付けた。

 

 きっと、ずっと忘れない。




 ああああああああロリマンダ出せたああああああああああ
 実はこの子、じしんかじょうなのです。
 最終進化してその素質を得たのでりゅうせいぐんを天から降らしていくのです。

 これであとはレベルが上がれば技コンプだぜ!

 あ、今回でマンダなったので成長編は終了です。次回からはロリマンダが戦いながらその愛くるしさをみんなに見せつけるようになります。
 明日は多分二本投稿。何だかんだ現実時間二日でマンダまで漕ぎ着けたのよね

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