空に憧れて   作:moti-

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 室温が三十二度を超えたから投稿。

 ……いま、秋だよね?


空を飛ぶ妖精を見て

 目が覚めると夜だった。

 

 水ポケモンがぱしゃん、とはねて、飛沫が頬を濡らす。珍しいことに、洞窟から出てきたポケモンに狙われることはなかったようだった。既に目覚めていたピカチュウが濡れた頬をぺろりと舐めて、くすぐったく思いながらもそれを受け入れる。

 

 膝の上に乗ってひし、と此方に抱きつくピカチュウの背中に手を回し、そうしてまだこの摩訶不思議な現象が起きて1日しか経っていないことを思い出す。コモルーに進化出来たのだ。つまりは、始めの貧弱な、前世……なのかは分からない、前の体のほうが強いという状況からは抜け出せたと思う。しゃぐしゃぐとコートに体を擦り付けるピカチュウを撫でながら、呆然とそう考えた。

 

 もう、焦って強くなろうとする必要はないのではないか?

 

 そんな疑念が胸を駆ける。強くなろうとしたのは、生き抜くため。心を占める空への渇望を満たすため。タツベイ、コモルーという種族は翼がない。それ故に空に憧れ、空を求め、そうして空へと旅立った。

 

 けど、今は始めよりわりかし強く成長した。なら、もっとゆっくり生きてもいいんじゃないか?

 

 そういえば、何故だかそういった発想は湧かなかったが、休憩しながらやっていってもいいだろう。何故そんなに急いでいたんだろうか。

 

「ピカー?ピーカー!」

 

「う、うわっ、何かねピカチュウ君」

 

 飛びかかってきたピカチュウに負け、後ろ向きに倒れる。腕をピカチュウを顔の前まで持っていき、なんだ、と視線で問えばピカチュウは饒舌に話しだした。

 

「ピカ?ピカピカピー、ピ、チャア、ピー!ピカチュー!ピ、ピカ!」

 

 とはいえ、ピカチュウの言葉は分からない。何をいっているか分からないため、ピカチュウが何かに熱くなっていることは分かるが、それ以上は分からなかった。

 

 と、そこで声を掛けられた。

 

「“カイリューを倒すっていうのはどうなるんだ”、だってさ」

 

 ぱしゃん。

 

 水音を立てて隣で寝転びながらそういったのは何時かの彼女だった。その赤い瞳をこちらに向け、青い髪の彼女は優しく微笑みながらいった。ピカチュウを胸の上に置き、憤慨しているピカチュウの頭を撫で、「そんなこともいったなあ」と呟く。

 

「そうだね、忘れてたよ。あいつにやり返さないと」

 

「ピー!ピッカー!」

 

「仲良しなんだね」

 

 その言葉にそうですねー、と返しながら、ようやく思い出す。カイリューをしばくって公言していたのだ。そのために、強くならないといけない。

 

「でも気をつけなよ?カイリューってあの黄色いやつだろ?あいつ、トレーナーが逃がしたか何かで無駄に強いんだ」

 

「無駄って……まあ確かに戦い慣れてるような雰囲気でしたけど。殺す気で振られたパンチ避けて繋ぎで打った尻尾にやられるなんてねぇ……」

 

「へえ、あんたあれ耐えたのかい。弱いやつはみんなあれだけで死ぬのに」

 

「んー、まあ本気じゃなさそうでしたしねー。本気なら今頃俺はここにいませんよ?」

 

「それはそうだねえ、あいつ、ここのクチートと組んでるらしいしねぇ?」

 

「殺る気まんまんですねー。頭おかしいや」

 

 そうだねー、とのんびりした口調で彼女が返す。お互いに、名前も知らない。ただあって話したってだけの関係。

 

 けど、こういうのもたまにはいい。

 

 ◇

 

 さて。昨日から丸1日動いていたため、当然ではあるが。

 

「腹減った……」

 

「ピカー?」

 

 ピカチュウが此方を見て心配そうにしている。

 

 四方を川に囲まれたこの洞窟。周りに木が存在しない。故に、食べるものといえば生のポケモン肉が生のコイキング肉程度である。それは現代人として忌避感を覚えるのだが、それしか生きる術がないというのならば致し方ない。いやでも喉奥に落とし込んでやる。水は適度に取っているから問題ない。

 

 と、いう訳でこの洞窟に昔からいるピカチュウ大先輩に話を聞こうと思う。目線を同じ位置に合わせ、ピカチュウに話しかける。

 

「どこか、食べ物置いてあるところ知らない?」

 

 そう聞けば、ピカチュウはちら、と此方を見て、少し思案して、洞窟に向かう。ゆっくりと向かっているのはついてこい、という意志表示なのだろう。ともあれ、ピカチュウを追いかけていく。

 

 洞窟は夜だからか、ポケモンが少ない。早足でピカチュウについて行き、おそらくは洞窟の奥まで駆けていく。右に、左に、入り組んだ道を通っていけば、一本の巨大な木があった。その足下には、いろいろな種類の木の実が置かれてある。ピカチュウがそれを一個手に取り、此方に渡してくれた。ピカチュウはもう一つ木の実を取り、口に運ぶ。それに倣って同じく手に取ったそれをかじると、しゃく、という心地よい音と共に瑞々しい果実の甘みが口いっぱいに広がった。そのまま咀嚼し、喉の奥に落とす。梨のような食感と、桃のような甘みはかなりあっていて、ピカチュウと同じように二口目を口に含む。丸々一個をすぐに食べ終えて、その一個だけだというのに腹が満たされた。ピカチュウは昨日の夜、消えたが、きっとここに来ていたのだろう。

 

 木を眺める。青々しく茂る葉を見て、そうして巨大な幹を眺めて、

 

 ──そして、緑の妖精のようなものを見た、ような……気がした。




 こんな暑い日はPS3が熱暴走だぁ!!

 エアコン掛けた。暑過ぎだよぉ……死ぬよお……。

 そういえばさりげに本日三話目ですね。実感湧かない。とりあえず、今日中にあと二、三話投稿出来るかな……といったところ。

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