空に憧れて   作:moti-

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ごめん本当に低クオでごめん巻きで本当にごめん


ロケット団編みたいな感じの話
物語再開


 ハナダジム開いてなかった。

 

 そのためそらをとぶの利用でニビシティまで戻り、そこからオツキミ山前へ向かうと言う形を取ってそこへきた──理由を言えば、単純に能力を鍛えるためである。

 

「オリジナル技に頼らない」

 

 レッドはマチス戦後、リンクも無し、その状態でトレーナーとしての能力を磨くと言っていた。その為わりかし難易度低めなダンジョンであるオツキミ山へとやってきたのだった。

 

 

 ◇

 

 

「人を朝から躊躇なく殴れる生き物ってなんか怖いものがあるよな」

 

「朝からやらかすラノベ主人公野郎が悪いのよ!」

 

 逆さまになってベッドからずり落ちたレッドがそんなことを言うので、極力声は抑えつつ、けれど確かに声を発して感情を発散する。

 

「まったく朝は大人っぽくなってたのに……」

 

「見て。いや、聞いて? 俺の語彙力上がってるでしょ?」

 

「知らないわよ」

 

「そういえばソラ、パンツじゃないから恥ずかしくないもんみたいに思ってるかもだけどスパッツって結構思春期的には来る物があるんだが」

 

「……そ。まぁ、私はこれで別に問題無いし、と言うかそういった方面でもなんかランク上がってるのね」

 

 何があったのかと言えば、至極単純なラッキースケベ。ベッドにもつれこんでおててにおむねが触れちゃった──そんな感じの、本当に単純なラッキースケベ。

 

 当然すぐ殴った。

 

 と言うか、こういった形の直接な接触はこれが初めてだろうか? 今までは間接的な物ばかりだったし。

 

 まぁ、それについてはどうでもいいか。そこの赤帽子が何にどう欲情したってどうでもいい。それが今の体でもいい。ただ単純に空を飛べたらいい。翔べたらいい。空を。本当になんにもどうでもいい。だって結局のところ。

 

 この体は俺の体じゃないんだし。

 

「…………」

 

 レッドがこちらを見ている。見透かすような、見通すような、それでいて奥底の虚飾の下を射殺すような、そんな視線。それに真っ向から目を合わせる。

 

 それが幾分、或いは数秒だけ続いて、

 

「本当に──どうでもいいか」

 

 そうやって俺は目を逸らし、

 

「ああ──全く本当。酷い朝だ」

 

 そう言ってレッドは体を起こした。

 

「……出るわ」

 

「ああ。そうすっかね……」

 

 会話は無い。言葉は無い。音すら無い。

 

 部屋を出る──そうすれば頭は冷えるだろうから。

 

 

 ◇

 

 

 自己を定義する物とは一体なんだろうか。

 

 それが魂とか。精神とか。そう言って答える奴らがいるけど本当にそうだろうか。俺はそうは思えない。

 

 そもそもそういった言葉の幾つもを固まった科学の世界で生きた常識を脱せずにいる人間が唱えているのだ。魂も精神も、みんなが思ってるほどに丈夫じゃあない。

 

 違和感。

 

 微細なそれでも、明確な差異が多数も出来れば自己の認識は難しい。

 

 何もかもが違う世界で自分が呑まれるようで体が分離しているようで自分が自分じゃないようで元々あったそれとの融合が進んでいるようでどうにもこうにも気持ちが悪い。

 

 だから。

 

 俺はこうして自分と体を切り離して考えている──俺が俺であるのは俺の体である場所のみ、そのためこれは俺ではない。

 

 そんな考えで。

 

 それを責められていたようで。

 

 どうにも気分が悪い。

 

 ポケモンセンターから外へ出れば、舗装されていない道だ。直ぐ側には洞窟。どうにもすごい場所に建っているよなこのポケセン。そんなことを考えながら息を大きく吸い込む。

 

 吐き出し、少し熱の昇ったように感じられる頭を落ち着ける。こんなシリアスくさいのはキャラじゃない。もっと暢気で。もっと愉快で。もっと陽気で。もっと明るく。もっとツンデレで。そういうのが今までの俺だろう。

 

 いやツンデレは違う。

 

 そんな馬鹿みたいなことを考えていたら、最低な気分も少しは落ち着いてきた。俺はそろそろ何時もの調子に戻れるかなぁ、と考えたところで、

 

 ──直ぐ後ろに何かが立っていることに気付いた。

 

「……あぁら? バレちゃった」

 

 声と同時に背中に触れる物がある。細く、尖った、何か。感覚としては──指?

 

「……誰よ」

 

「ええ。ええ。えーと……名乗る名も無いんだけれど。取り合えず主様の命令なのでぇ。ちょっと来てもらえるかしらね?」

「断る」

 

 スイッチを切り替える。後ろの指から逃れるため一瞬足に力を籠め跳躍し、そのまま空中を泳ぐような感覚と共に重力に逆らい宙へと浮く。

 

 反転し、敵の姿を目に納める。長い髪。ボロボロの擦りきれた服から覗く白い肌──それは傷で赤に染まっている部分が多い。体には拘束具。首輪のついた、およそマトモとは言いがたいその女──

 

「……ああ。ポケモンね」

 

「あなたも、そうでしょ?」

 

 宙に浮いたままのこちらを見て女はそう言う。

 

 人型。ヒトガタ。擬人種。擬人化。

 

 そいつはそういう敵で、けれど容姿で種族は看破出来ない。何だ? 誰だ? どいつだ?

 

「……ああ、名前は無いけど、これはあったわね」

 

 手を此方へと向けながら、そいつは言う。

 

「──ロケット団団員の手持ちいち」

 

 放たれた弾丸を地面に突撃するようにして高度を下げ回避する。そうすれば敵は何をどうしたのか、次の瞬間には眼前に迫っていた。

 

「フーディン……でしたっけ?」

 

 腕は間に合わない。回避も難しい。これをどうしようか、と一瞬考え、瞬間で加速して腹部へと頭をぶつける形で対応する。

 

 一瞬相手はよろけたが次の瞬間には標準を合わされ、

 

「ああ、あぁ、こうしたらいいのですね……『止まれ』」

 

 次の瞬間、体が完全に停止した。

 

「あ…………ぇ?」

 

「ああ、痛かった。痛かったです。これはこれはたっぷりと苛めてさしあげませんとぉ」

 

 体を固定していた圧力のような物が強くなる。締め付けるようにされ体に激痛が走った。

 

 辺りに人はいない。ああ、これは駄目かな、と察し、なるようになれといっそ開き直る。この状態では動くことも叶わないだろう。

 

 詰んでいる。

 

 ああ、ロケット団か。ならこれから俺はどうなるんだろう。利用されて殺されるのか。それも別にいいだろう。自分は敗者だ。勝者には逆らわない。

 

 いや、そもそも逆らう気がないのか。いっそ自棄になっているのだろうか? もしくは平和になって、落ち着いて、そうしてこれが夢であると思い始めたのだろうか。これが夢じゃないことなんて分かってるだろうに。

 

 ──ああ。

 

 こんなのもどうせ、すべて、無為な酷い狂言の類いだろう──

 

 

「おはよう少女ぉぉぉおおおおお!!」

 

 

 瞬間。

 

 目の前にいた女が消えた。

 

 

 ◇

 

 

 女の姿が消滅して、拘束が解除される。そうして軽く辺りを見回せばざっと数十メートルは吹き飛ばされた女と、何処かで見た覚えのある少年の姿。

 

「……えーと、グレイ、だったかしら?」

 

「おー。そうだぜ少女。いやー。ちょっと僕も思うところがあって全力出してみたらよー。なんかこれがばっちりとハマったみたいでな? ──ってことで今の僕あらため俺は超サイヤ人みてーな感じだぜ……!」

 

「やだこの子キャラ壊れてる……!?」

 

 暫く振りの登場でテンションが上がってるのか知らないけど何かやけにキャラ崩壊キメたグレイが起き上がった女に中指を立て、

 

「んじゃー少女が何か現実逃避してるっぽいんでレッスン1だ」

 

 そこから雑に拳を構えて正面を見据える。

 

「先ずなー。自分が自分であると認めることが第一だぞ。何があったのか知らんが何がどうなのかは知る気も無いが自分のことは自分と認めるべきだ。それが出来たら──」

 

 サイコキネシスがグレイの体を覆う。けれどそのままグレイは言葉を続け、

 

 

「──こんなことだって余裕で出来る」

 

 

 雑に手を振るいサイコキネシスを吹き飛ばした。

 

「世界観が全力で困惑してる……」

 

「僕が来たからにはシリアスな展開が出来ると思うなよ。うじうじ悩んでうだうだ悩む展開は不要だ。つーことで少女は自分を認めろ。それが出来たか? ならレッスン2だ。お前実はちょっとレッドニキんこと気になり始めてるだろ」

 

「…………」

 

「肯定だな? おし。で、擬人化する前と今の性別が違って困ってんだろ。そういうのだろ? 認めろ。『はい』って言え……!」

 

「待ってこいつめっちゃ押してくるの何なの!?」

 

 女空気になってるし。

 

 と言うかまず最初にお前はポケモンを使え。てかニキってなんだ。そして本当にお前はなぜキャラがそんなにぶっ飛んでるんだ。空の彼方どころか宇宙まで行ってるだろこれ。

 

「…………うん」

 

「勝った! 第三部完!! つーことだ。ならそれ認めてレッドニキんところ行ってこい。応援してやるよ」

 

 そう言って襲いかかってきたフーディンのサイコキネシスを掴み、捻り、潰しそのまま体を反転させてフーディンを蹴り飛ばした。それだけで空の彼方までギャグのようにフーディンが吹き飛んでいく。お前が飛んでいくのかよ。

 

 それだけ見て、俺は手を振りさっさとポケセンの中へ戻る。気分は晴れ、怒濤の急展開で正直困惑してるけど、それでも何かが救われた気分だった。

 

「……あ、ソラ?」

 

「ん、レッド。ただいま」

 

「──……おかえり」

 

 言われたからと納得は出来ない。けど、それでも前より体が馴染んでいる気がした。

 

 

 

 ◆

 

 

 はぁ、と息を吐き出し頭を手で掻いた。

 

 本当に、自分の決心を折りに来るような、自分の使命を捨てさせられそうな女だ、と思う。女の体に、男らしい精神。とっつきやすく絡み易い。それ故警戒心がない。

 

「ああ──俺は遣るべきことがあるのに」

 

 ふぅ、と息を吐き、彼女を思う。突然現れた少女を。思えば自分の前に彼女が現れた時から、その時から目を奪われていただけでなく心すらも奪われていたのではないか? と。そんなロマンチックな発想、自分に似合わないそれを考えてしまう。ああ、だから、彼女は本当に、今日はとてもとても朝っぱらから、

 

 

「本当最低な気分で──本当に、地獄のような女だよ」




誰だお前

つーことで本編再開の切っ掛けにします一話です。

そんで本編再開がこんなクソ雑魚な話なのマジで救えねーよなぁ……次回から話進めます。

あとこの話は本編の転換点だと勝手に思ってたり。主に作中最強キャラを無理矢理だけど出したところが。

問題としてこいつ本当に勝てそうに無いんだよな……(発掘した初期設定見つつ

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