空に憧れて   作:moti-

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今回レッド&グリーン超強化のお知らせをする回


旅立ちの日に

 朝を迎えた。

 

 夜に寝るのが遅かった彼女は未だ眠たげではあるが、皆きちんと寝坊することもなく、目を覚ました。どうやら彼女以外は緊張するタチではなかったみたいである。

 

「いくぞお前ら──始まりの日だ」

 

 レッドがそういって、扉を開く。春の朝は未だ寒冷で、ふっ、とレッドの漏らした鋭い吐息は冷却され、白く染まっていた。

 

 春一番、──ついに、旅に出る。

 

 ◇

 

 研究所の外で軽くジャージを着込んだツンツン頭が立っている。その視線は虚空をさ迷っており、しかしその奥には好戦的な光が見え隠れしていた。その横に、寄り添うように青い髪の色気のポニーテールの少女が立っている。彼女は此方に気付くと、ぱっと笑顔を見せて此方に手を振った。

 

 それにより連鎖的に少年も此方に気付くと、ニヒルな笑みを浮かべ言った。

 

「案外遅かったじゃねーか」

 

「許せ、こっちには寝坊助さんがいたんだよ」

 

 どちらともなく近づいて、拳をぶつけ、そしてグリーンはレッドを手招きして言った。

 

「入るぞ。じーちゃん──いや、他の子供も既に来てる」

 

「そう言えば、図鑑は俺ら限定だけどポケモンはまた別だっけか」

 

 その言葉にああ、と呟きながらグリーンが答え、扉を開く。研究所の中には無数の少年少女とその親が集まっていた。やはり世界最高峰の博士からポケモンを貰う、というのはそれだけで貴重な経験になる、と思っているのだろう。ともあれ、研究所の硬質な床の感覚を感じながら、奥へ奥へと歩を進めた。

 

「ね、ね、ソラ、グリーンはどれにすると思う?」

 

「私に聞かれても分からないわよ、けど、レッドはフシギダネにするとは言ってたわよ」

 

「おお、グリーンはヒトカゲだって。わざわざ自分から苦行を歩まなくてもいいのにね」

 

「グリーンの場合はキィがいるじゃない。あの子の強制必殺は止めて欲しいんだけど」

 

「あはは、流石にキィもバッチ五個目まで出禁喰らったよ。流石にじわれ必中は反則だって博士が」

 

「じゃあこころのめぜったいれいどは許していいの? 私、絶対やられたら潰す自信しかないわよ」

 

 なんてことを話しながら、少し前を歩む二人に目を向ける。ラティスの言った通り、ヒトカゲにするのなら、間違いなくグリーンは一日でリザードンに成長させるのだろうな、と思いながら、オーキド博士の言葉を聞き流す。事実、レッドとグリーンは既に幾度も同じ言葉を聞かされているのだ。二人して平然と無視していた。

 

 演説も終わり、オーキド博士は子供を奥のポケモン放牧地に連れていった。幾人かの子供が楽しそうにわいわいと自分が欲しいポケモンを口にして、その姿を同年代にしては精神が異常発達しているレッドとグリーンが微笑まし気に見ている。お前らは子を見守る親か、とツッコみたい気持ちはあるが、流石にそれは止めておき、オーキド博士が二人を呼び止め図鑑を渡すのをじっと眺めるホウエンのポケモンが混じっているため二人共全国仕様の図鑑である。レッドとグリーンがお互いに図鑑を手持ちのポケモン──つまりは自分とラティスに向け、そして同時に吹き出した。そして顔を見合わせ、お互いにその図鑑を相手に見せつけ、また噴き出す。

 

「あー……エース枠とはいえ、とんでもないことになってんな……」

 

「そうだね……二人でこれならピカチュウは一体どうなってることやら」

 

「これより強いって本気であのピカチュウは何者なんだよ……!!」

 

 まあ、それはおいといて。と二人が言い、図鑑を此方に突きつける。

 

「「限界突破──おめでとう」」

 

 そうして見た画面には、レベルの欄が測定不能になっていた。

 

 ◇

 

 さて、子供達はいなくなり、残ったのはレッドとグリーン、そしてオーキド博士だった。博士はグリーンにヒトカゲが入ったモンスターボールを渡し、受け取ったグリーンがそのボールを開く。

 

 ふ、と舐め腐った表情を浮かべるヒトカゲにグリーンがキレた。

 

「……俺のポケモンとなるからには相手をナメるようなやつじゃいけないなあ……!!」

 

 そしてキレたグリーンが研究所でルールを展開、被害が出ないようにフィールドを精製し、そしてボールからタロウ──ケンタロスを繰り出すのを横目にレッドが博士からボールを貰う。もうグリーンの調教方法には慣れたようで、始めは口を出していた博士も今では遠い目をして無視するようになってしまった。ともあれ、レッドも同じようにボールを開いて、

 

 襲いかかるつるのムチを手で掴み、はっぱカッターを踏み潰した。

 

 レッドのパーティーはここ一カ月でかなり濃い面子が揃い、それによりこういったポケモンの対処法も大分手慣れてきた。

 

 こいつマジで人間かよ、といった顔をしたフシギダネのツタから手を離し、ポケットの中に入れてある“かたいいし”を取り出し、

 

 ──握り潰した。

 

「あんた段々人間じゃなくなってきたわね」

 

「何を馬鹿な、流石にきあいパンチは打てないさ」

 

「バレパン打てるやつが何か言ってるわよ」

 

 フシギダネが完全に怯えたのをレッドが確認し、

 

「よし、これで逆らわんだろ」

 

「レナの時も思ったけどあんた人のことキチガイって言えないわよ……何で人がポケモンと殴り合いするのか」

 

「今ならレベル50以下は余裕」

 

 なんて馬鹿なことをいうキチガイから目を逸らし、窓から見える空を眺めた。

 

 ──ああ、今日も空は青い。




ポケモンの世界は人もポケモンもバグってることで有名なのです

午前中を寝て過ごし、午後に買いだめたラノベを読みあさり、三時間して萌えもんやってたので一時間クオリティ。何故一時間で五千文字書けるやつがいるのか小一時間問いただしたい。

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